4年次履修科目(必修)
進学課程と専門課程に基礎医学講座と、臨床医学講座も一通り終え、卒業に必要な授業の単位を順調に取り終え、ここから先は苦手科目の復習を行い、医師国家資格取得の為に、必要なメソッドを頭に叩き込む個人の学習スタイルを作っていく。そんな時期に突入していたのであった。
「何科に行こうかな?」
「山川?早い早い。まだそんな時期じゃない。」
「そうよ。つよし、嫌いな科目もオールマイティにこなせなくちゃ、医師国家資格取得は無理よ?」
「山川君位のレベルになると、もう先の事見据えているんだね?」
「セツ菜?そんなんじゃないわよ。つよし研修医にでもなったつもり?」
「そう言う訳じゃないよ。皆どう思っているのか知りたくてさ。」
「俺はまだそんな余裕はないかな。苦手科目も沢山あるし。」
「でも今年の4年生は出来が良いって、教官が話してるの聞いた事あるよ。」
「そんなの鵜呑みにしちゃ駄目だよ?」
「そうだな。」
「授業の出来は良くても、全部頭に入っているかって言われたら、1週間後には忘れている事もあるしな。」
「医官になるの楽勝かと思っていたけど、いざ入隊して見ると、かなり苦労しているってのが、実際の感覚だね。」
「まぁ、本番まではまだ先の話。皆一段落したら飯行かない?」
「部活も引退した事だし、夕方はもう少し余裕持てそうだしな。飯行くか。」
「私も一兵君と同じ。お腹減ると集中出来ない。」
「私はいつでもウェルカム。」
「しかし、気持ち良い食べっぷりやな?こんなに腹一杯食べる防衛医科大学校学生なんて見た事ないよ。」
「話変わるんですけど、川下一曹って防衛医科大学校の前は護衛艦ひゅうがにいたって聞いたんですけど、それ本当ですか?」
「教育隊終わって三曹に上がるまでの5年間はあのドデカイ艦船の調理場にいた。正直今よりきつくてしんどかったよ。飯の時間は決まってないし、船員が全員食べ終わるまでは、給務員は飯を食えなかったんだ。まぁ、今もそうだけど。」
「川下一曹は幹部目指さないんですか?」
「それ、周りからもよう言われるけど、勉強が苦手でな。三曹に上がるまでに5年を擁した男だぞ?特段の上昇思考は無いし、若いエリートに抜かれるのも慣れっこだぞ。」
「皆、色々大変なんですね?」
「ああ、その通りだ。皆何かを抱えて生きている。俺みたいな中堅下士官でもな。」
「それよりお前らそろそろ第2大隊に引っ越しじゃないか?」
「4年生の12月って言われたら、そうですね!」
「流石川下一曹。良く分かってますね?」
「山川つよし学生、第1大隊長お疲れさまでした。」
「誰よりも先に言われました(笑)。」
「まぁ、第2大隊付けになっても食堂は一つだからな。寂しくはならんだろう。」
「川下一曹が転勤にならないかを心配しますよ。」
「大丈夫。猫の手でも借りたい部署だから。まぁ、そんな心配より、勉強頑張れよ‼」
「ありがとうございます。」
「セツ菜?」
「どうしたの一兵?」
「やっぱガマンする。」
「え、何?」
「お休み。セツ菜。」
「一兵どうしちゃったのかな?」




