4年次並木祭③
行事を控えていても、普段のルーティーンは変わるはずもなく、日中は授業に集中しなくてはならない。
「なぁ一兵?この御時世アナログなチラシも良いけど、SNSを駆使するとか方法はいくらでもあるだろ?」
「一体どこの物好きが防衛医科大学校の公式アカウントをフォローしてくれるんだ?」
「そこは未知数だけどさ、何も発信しない事には始まらないだろ?」
「そこまで断言するなら山川デジタル大臣に頼むしかねぇわ。」
「じゃ、俺はビラ配りあるんで行ってきまーす。」
「一兵の奴、俺をはめやがったな?」
「仕方ねぇXにアカウント作るか。アカウント名は@NDMC-123にしよう!」
「そんな簡単に乗っ取られそうなアカウントで良いの?」
「吉永?貴様の方が詳しそうじゃねーか?」
「まずは、体育祭や去年の並木祭の写真や動画をアップしてだな?」
「お!上がった上がった。吉永やるじゃねーか?」
「あ、フォロワーが100人増えた!」
「でもって、今年の並木祭のチラシをアップして…と。」
「お!凄い開始10分でフォロワー1000人突破!」
「去年の並木祭の動画なんてよくアップできたな?」
「一応、事務局長ですから。」
「他にネタ無いの?」
「チラシの詳細をアップしようじゃないか?」
「これを機に防衛医科大学校の事を世間の人々に知ってもらいましょう!」
「毎日の日課の事、クラブ活動の事、定期訓練の様子なども投稿しましょう。」
「フォロワー5000人突破!」
「まだまだ。10万人位のフォロワーを先ずは目指しましょう!」
「ただいま!」
「おう。一兵、早かったな?つーかこれ見ろよ?」
「X?」
「こんな時代だからよ、SNSを使わない手はないだろう?」
「俺は別に良いけど学長の許可貰ったのか?」
「いや、それはまだ…。」
「早いとこ許可どりした方が良いよ?ましてや学校の公式ホームページがあると思うし、ダブってたら最悪だよ?」
「一兵、吉永、直ぐに学長の所へ行ってくる。」
「完全に後出しじゃんけんじゃねーか?にしてもフォロワーもう5万人突破したぜ?」
「アカウント作って約1時間…。需要は一定数あるみたいだね?」
「一兵!吉永!許可取れたぜ?そんな事で私の所へ来るなと怒らしてしまったがな。」
「マジで?」
「ああ。第1大隊長のお願いとあらば聞かない訳にはいかんだろ?って。」
その後もフォロワー数は増え続け、山川等が飯を食い、入浴をすませ日夕点呼を済ませた午後9時頃にはフォロワー数は25万人を越えていた。しかし、山川や一兵はもっとバズらせたいと、良子やセツ菜も巻き込み動画を拡散して行った。防衛医科大学校って何?と言う疑問や日常でどんな事をしているかも丁寧に投稿した。
するとその結果並木祭前日までにアカウントNDMC-123@は、150万人のフォロワーを獲得して、並木祭の集客に期待が持てた。そして迎えた並木祭当日。天気は崩れる事無く、全ての前売りチケットや有料チケットは軒並みソルドアウト。当日券も出せないほどの盛り上がりは、防衛医科大学校史に残るものとなりそうだった。
「何だよ?結局俺頼みかよ?」
「しょうがないじゃん!だって西表君体調不良で欠席なんだもん。」
「ま、一肌脱ぎましょう。並木祭実行委員長なんて名ばかりだしな。退屈しのぎに学生DJ山川様降臨だな?」
「つよし?ぶっつけ本番だけど大丈夫?」
「楽勝よ。」




