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09話 悪役令嬢は始末する


「久しぶりだな」


「ええ、お久しぶりです、ご先祖様。どうして此処に?」


「マリーネがダンスの特訓を付けると言うからな、その迎えだ。ついでに軍内部の虫の掃除だな」


 マリーネさんは、ご先祖様の今の奥さんだ。

 見かけによらずご先祖様は、愛妻家なので、奥さんの頼み事はある程度は訊いてくれる。

 ――最強かな。

 それにしても軍内部の虫ってことは。


「……アストロス大尉も、カルトの」


「ああ。まぁこの童、愚かにも儂に銃を向けてきたので、ちょっと相手をしたがな」


 えぇぇ。ご先祖様に銃を向けるとか、アストロス大尉、バカじゃないですか。

 ご先祖様は魔法使いですよ。

 それと戦うなんて人の力が及ばない大天災を相手にするようなもの。

 もしご先祖様と戦うなんて事態になれば、「逃げる」「降伏する」の二択。後は「殺される」ってむ選択肢もありますが、それは論外です。


「おい。四年前。儂がお前に言ったことは覚えているか」


「……確か、常在戦場の心構えでいろ、でしたよね」


「そうだ。儂が来なければ、この童に撃ち殺されている所だったぞ。未熟者め」


「私、狙われてたのですか?」


 私の質問に対してご先祖様は頷いた。

 つまり、水浴びをしている所を、覗かれたっ。

 恥ずかしい!

 私は一応公爵令嬢で一応婚約者(婚約破棄希望)がいる身。

 それなのに無闇に異性に肌を晒して見られたとすれば、それは、もう――殺すしか無い。

 両手両足を切断されて達磨状態のアストロス大尉に近づく。


「アストロス大尉。短い間でしたが、お世話になりました。乙女の裸を覗いた罪は死罪と決まってます」


「はっ?」


 何を言っているんだ、みたいな顔をされたけど、それは私がしたい顔だよ。

 手刀に魔力を纏わり付かせ魔力剣を作り出し、一気にアストロス大尉の頸を刎ねる。

 ――これは情けですよ、アストロス大尉。

 私では無く、ご先祖様なら生きたまま地中奥深くに埋められ、根子で身体の栄養を奪われながらジワジワと死んでいくよりは、頸を刎ねられ一瞬で死んだ方が楽でしょう。

 それにカルト教団のスパイとして死ぬよりは、うら若き美少女の裸を覗いた罪の方がマシでしょう。たぶん


「……」


「――なんです、ご先祖様」


「いや、寸胴体型のお前を覗き見して死刑されるのは、割に合わないだろうな、と思ってな」


「失礼なことを言わないで下さい。私がこんな体型なのは、戦場で栄養価の高い物を食べられなかったことに起因をしているのです。栄養価の高い物を食べてれば、今頃、あらゆる男性を魅了する蠱惑的なナイスバディになってたことでしょう」


「はっ」


 鼻で笑われた!?

 いやいや、私は本当はナイスバディの可能性が高いんですよ。

 ゲームの立ち絵はナイスバディだったんですからね。……ただ、場所と立ち絵によって胸の大きさが変わることもあってパッド令嬢とか、一部の掲示板や攻略サイトで呼ばれていたけど! 公式も特に何も言及しないのが駄目なんだよ……。


 ご先祖様は私の肉体面には興味がなさそうに、私が斬り刎ねたアストロス大尉の頸を左手で掴むと、右手の指先を額に当てる。

 すると指先から蔦のような物が生えて、アストロス大尉の頭の中に浸食して行った。


「ご先祖様。何を――」


「記憶を読み取る。百を超える同胞を動員できるならば、人海戦術で一気に殺し潰せばよい。なのに、それを為なかった」


「……人海戦術だと、私が逃げるからじゃ無いでしょうか」


「逃げるのか?」


「魔法使いで対軍・対国レベルが普通に行使できるご先祖様と一緒にしないでください。私はか弱いただの公爵令嬢なんですよ。数百人に囲まれたら、何をしても逃げるに決まってるじゃ無いですか」


 何が何でもあらゆる手段を使って逃げるに決まってる。

 最前線でも、私はそれで今日まで生き残る事が出来たのだから。

 ご先祖様は千年ほど生きているから、私のような弱者の気持ちは分からないんですよ。


「ふん。軍内にいた童に、どうやら逃げ癖が読まれていたようだな。――来るぞ」


「へ?」


 ご先祖様は蔦を頭部から外すと、適当に放り投げた。

 ……なにかが、来る。

 肌に針をを刺すような圧迫する威圧感。

 これは、知っている。

 四年前はカルト教団に。最近は帝国兵から向けられる。

 絶対に殺すという、詛いに似た殺意。

 それから、ソレは降りてきた。


「……気持ち悪い」


 黒い人の姿をしたナニカ。

 二メートル近い身体の至る所に怒りの顔をした人たちの表情が無数に張り付いている。

 ――コロスコロスロコロスロコスロコスロコス――

 殺すって聞こえるけど、途中から一言抜けたりしている。

 これは会話出来る雰囲気じゃ無いなぁ。

 とりあえず。


 私は地を蹴ると空中を浮遊。

 全速力で、黒いナニカに突撃していき、手に持つアサルトライフルに先にある短剣で、頸を刎ねた。

 宙を舞い、地面に落ちた頸は霧状となり、黒いナニカの元に戻ると、再び頭が生えた。

 あ、これは頸を刎ねてもどうしようもないタイプのモンスターですね。私は頸を刎ねて死なない存在が大嫌いです。この世から消えれば良いのに!

 黒いナニカは地面を蹴ると私の所まで一気に距離を詰めてきて殴ってくる。

 寸前で回避したものの、対象物を失った拳はそのまま地面に叩き付けられた。

 地震と見間違うくらい揺れ。十数メートルほど地面が陥没した。

 これ、詰んでない?

 頸を刎ねても死なないのなら、銃で撃ち抜いても死なないだろうし。パワーは圧倒的。

 逃げても、どこまでも追ってきそうな気配を感じる。

 たぶん世界で一番安全な場所であるご先祖様の近くに急いで移動した。




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