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03話 悪役令嬢は不幸の手紙を受け取る

 雲1つ無い青空。

 見事な晴天。

 最悪な戦闘日よりです。

 雲1人でもあれば、雲よりも上空に飛行して、一気に降下。敵将の頸を斬り落とすという、斬首作戦がとれるんですけどね。


 まぁ、作戦を考えるのは、上官や軍師参謀の仕事。

 私はできる限り作戦を遂行することだけ。


 今は特に王国軍も帝国軍もお互いに攻めない小康状態。

 昨日みたいなちょっとした小競り合いはありますけどね。


 トリニティア王国は西南北を険しい山々に囲われ、東の一部のみ平地という、守りやすい立地。

 その東側の一部の平地が、帝国軍と戦う最前線となっている。


 ハッキリ言って、王国軍と帝国軍では国力差は歴然。

 銃器の性能。魔物と兵の質と量。

 さっさと降伏した方が良くない? レベルの差がある。

 本気で帝国が攻めてくればあっという間に滅ぼされるだろうけど、帝国にとって王国は「鶏肋」なのかもしれない。


 逆に王国軍も帝国へ本気になって攻め入るかと言えば、そうではない。

 ぶっちゃけ、王国に他国に攻める余裕はないよ。

 国境でどんぱちするのが精々。

 攻めるにしても、攻めているほどの兵士も無ければ、何年も遠征できるほど兵糧もあるかとどうかも怪しい。

 後方からの前線に対する兵糧支援も最近は怪しくなりつつあるのに……。


 なら、魔法使いであるご先祖様を出せば良いかって?

 いやいや、無理だから。

 魔法使いが出てくれば、向こう側も魔法使いを出してくる。

 つまり前世ではついに見ることが無かった、核の打ち合いに近い戦争の幕開けとなる。

 そうなったら地獄だよ。本当に――。

 カルトとの戦いの時に、魔法使いの力の一端を見たけど、アレが出来るなら私達は必要ないってぐらいだった。


 ご先祖様の実力を思い出している内に、アサルトライフルのメンテナンスが終わる。

 昨日、「オーバーロード」を使用したことで、どこかに異常が出てるかもしれないと思ったけど、特に異常は発見出来なかった。

 後は試し撃ちして、本当に問題無いかの確認をしない。


「アデル様はいますか!」


「アデルは私だけど……」


「ああ、良かった。国王陛下よりの手紙をお届けに参りました」


「――国王陛下から?」


「はい!」


 配達人の女性は元気よく返事をして、手紙を一通渡してきた。

 白い封筒は、本人認証する魔力蝋で封印されていたので、指先を魔力蝋に流し込む事で封印を解いて、中身の手紙を見た。

 手紙は5枚。

 内容は簡略化すると


【息子の第二王子が久しぶりに会いたいと言っている。一ヶ月後に王城で行われるパーティーに出席するように】


 とのこと。


 ……凄くイヤな予感しかしないんですけど!?

 この4――いや、5年も手紙1つ無かったのに、いきなり招待状とか、ろくな事じゃない以外に何があるの?

 行きたくない。絶対に行きたくない。

 でも、これは国王陛下の手紙。つまりは王命。

 イヤな予感がしましたから行きたくありません。

 そんな事で断れる訳がない。


 どうしようかなぁ。

 国王陛下が出席できなくても仕方ないと判断できるほどの理由。


 ――私の手の中には、アサルトライフルが一丁。


 ……。

 …………。


「配達員さん」


「はひぃ」


 ? 何を引きつっているんだろう。

 私は笑顔で話しかけているのに……。


「銃を撃ったこと、ありますか?」


「ぃえ。私は後方支援担当なので、その、ありません」


「なら、一度、撃ってみましょう。何事も人生経験です」


 手に持っているアサルトライフルを配達員に渡した。

 今は、先頭部分にある短剣のアタッチメントは外している状態なので、銃口をゼロ距離で私の腹部に押し付ける。


「それじゃあ、引き金を引きましょうか」


「え。え?」


「大丈夫です。引き金を引いたら、私が瀕死の重体になる程度の事ですから」


「大事じゃないですか!」


「些事です。ちょっとした自分自身に対する耐久テストです。言っておきますが、私は自殺願望はないですからね?」


「いやいや、これどう考えても自殺幇助してる気がしますけど!」


「気のせいです。さあ、早く、引き金を引いて下さい!」


 鬼気迫る勢いで言った。

 因みに私は自殺願望はない。どちらかというと、平和にそして平穏に過ごして天寿を全うしたいと思っている小市民です。


 国王陛下も、流石に軍事中の「事故」で瀕死の重傷を負った私に対して、パーティーに出席出来なかった事に対しては厳しい罰は与えられない…………ハズ。

 お腹に穴が空いた状態で、血を吐きながら出席しろというのなら、しないでもないけど、戦争経験の無い同年代の貴族令嬢令息には刺激が強すぎると思うの。

 確実に出席は拒否られる。

 よし。これは是が非でも撃って貰わないと!


「誰か。誰でも、良いです! 誰か助けて下さい!!」


 泣きながら配達人は叫ぶ。

 え。泣かすつもりは無かったんですけど。

 軍務についている以上、人を撃つ機会はあるだろうから、慣れさせてあげようという親切心からだったのに……。70%ぐらいは。残りはパーティーに出席したくないからです。


 配達人の叫び声を聞きつけて、屈強の身体をした兵士達が数名部屋に入ってきた。

 その中で一番階級の高い人物が言った。


「取り押さえろ!」


「「「「は!」」」」


「ちょっとまって下さい。配達人の人は、悪く、って、え。ぇぇ」


 私は地面にあっという間にひれ伏された。

 関節を極められ、動くことができないっ。

 そこでふと気がついた。

 ――ちょっとおかしくない?

 私はアサルトライフルを零距離で向けられていた側なのに、なんでこんなに厳重に取り押さえられるの?

 そして口に布を巻かれ、手足を拘束された状態で、私は少将閣下がある部屋まで連行される事になった。






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