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戦場に咲く一輪の華。それは悪役令嬢です【連載版】  作者: 華洛
EXTRA STAGE[1] アデル・デュラハン討伐作戦
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03 悪役令嬢は緊急出撃をする


 空は雲1つ無い快晴。

 天変地異レベルの災害が起きて、第二皇子が来るのが中止にならないかと夢想していた訳だけど、やはり思った通りにはならない。

 ……こういう時に、ご先祖様が持つ魔法印があれば、局地的に大災害を起こすことが出来るんだけど、そのためだけに継承するのは御免被る。

 あー、なんで最前線にいるのに、皇族と関わることになるんだろ。

 悪役令嬢的に考えれば、皇族とかその周辺に関わらないのが一番なんだけどなぁ。


「アデル少将。少しはイヤそうな表情を引っ込めろ。少将である以上、顔芸の1つでもすればどうだ?」


「……こうですか?」


 猫をかぶりに、とびっきりの笑顔をアルベルト軍師に向けた。

 すると、胸元の心臓の辺りを抑えて、顔を逸らす。


「い……や、やはり、いい。イヤそうなままの表情で、いい」


「そうですか」


 正直、笑顔を続けると疲れるのでありがたい。

 私は後ろを振り向き、イリナア、ノティア、ギデオンを見る。

 3人とも酷く緊張している。まぁ、帝国の第二皇子が来るのだから当たり前か。

 こういう時は、リラックスするようにいうべきだろうけど、私はそういうのに慣れていない。下手に何か言って、余計に緊張させるのも悪いので、ここは何も言わないでおこう。


 遠くの空から2匹のドラゴンが、船体を引いて来るのが見えた。

 皇族専用の移動船、アラストラスカ。

 王国にいる時も、噂程度には耳にした事がある。

 この大陸で最速の移動用の乗り物。帝国の魔女の従魔であるドラゴンを二体引き連れていて、その船の攻撃・防御共に最高峰だとか。

 ご先祖様もドラゴンを従えて似たような事をできそうだけど、「なぜ儂が魔女の二番煎じのような真似をする必要がある。したければ、己でやれ」とのこと。

 ドラゴンを従魔にするとか、魔法使い以外にも無理ですよ。ご先祖様。

 ……もしかして遠回しで、魔法印を継承しろってことだったのかもしれない。


 アラストラスカが地面に降りる。

 船体から梯子が出ると、騎士と共に軍服を着た男性が降りてきた。

 あれが……第二皇子、ジークベルト・ドラウス・ストラオス。

 なぜだろう。見るだけで、なんだか。


「ようこそジークベルト様。最前線基地へ。こちらが、滞在の間、所属する部隊「ワイルドハント」の隊長を務める、アデル少将です」


「アデル・デュラハンです」


「……お前が、頸斬姫か。異名は帝都まで届いている」


「帝国に亡命してから『デュラハン』に性を変え、二つ名も『鮮血姫』に変更致しました。お間違えないようにお願いします」


 シュペインからデュラハンへ。

 デュラハンは首無し騎士のこと。

 この世界におけるのデュラハンの逸話こうだ。

 かつてデュラハンという一騎当千の圧倒的に強い騎士がいた。その騎士は何千何万という頸を刎ね、首級をあげた。だけど、あまりに多く頸を刎ねすぎたことで詛われてしまい、胴体から首が離れてしまったらしい。

 首が胴体から離れるのはイヤだけど、「頸斬姫」にはお似合いの性じゃないかな。

 二つ名に関しては、「帝国の兵士」として戦うに当たり、「頸斬姫」だと色々と問題があるらしく、クロエや白月・黒月が提案した「鮮血姫」と名乗ることにしただけで特に意味は無い。


 突如として警報が鳴り響いた。


 帝国へ亡命してきてから、対王国戦線で警報を聞いたのは初めて。

 亜人連合の方は数日に一回は聞くことはあったけどね。

 それにしても、第二皇子が来たタイミングで警報が鳴るとか、この皇子……臆病神かなにかじゃない?


 将兵達が慌ただしく動く中で、1人の兵士がやってきて敬礼をした。


「アデル少将。王国軍がデウス門から出撃。部隊を率いて強襲するようにとのことです」


「分かった。ノティア。ギデオン。2人は部隊に直ぐに出撃するように指示出し。装備はアサルトライフル15。スナイパーライフル15の割合で」


「はい」「了解」


「ジークベルト様は、どうなさいますか? 最前線基地に来られたばかりなので、基地で待機されていても良いですか」


 と、いうか。邪魔になるので、是非にも待機してほしい。

 訓練も部隊連携もなにも教えていない状態で来られても迷惑なんだけど。


「いや、俺も行こう。――書類上は、もう「ワイルドハント」部隊所属だったな、アルベルト軍師」


「え、ええ」


「分かりました。イリナア。ジークベルト様を、部隊舎まで案内してあげて」


「了解しました。で、では、ジークベルト様。こ、こちらへどうぞ」


 イリナアは緊張した面持ちで、第二皇子を連れていった。

 私はアルベルトに敬礼して場を去ろうとすると、声をかけられる。


「アベル少将。ジークベルト様を、よろしく頼む」


「ええ。微力をつくします」


 ……そう言えば、第二皇子と対面したときに、自己紹介をしなかった。

 もしかして知り合いなのかもしれない。

 アルベルトさんは軍師を数多く輩出している名門貴族だと噂で聞いたので、皇族と繋がりがあっても不思議じゃないけど。

 まぁ、頼まれなくても最大限丁重に扱うつもりだ。

 下手に扱って死亡フラグが立つのは勘弁して欲しいからね。

 ため息を吐きながら、私は自分の装備品を取りに宿舎へと向かった。





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