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戦場に咲く一輪の華。それは悪役令嬢です【連載版】  作者: 華洛
EXTRA STAGE[1] アデル・デュラハン討伐作戦
27/32

01 悪役令嬢は厄介事を押し付けられる

1.5部から約1年以上経っている設定です


 第一次デウス門攻略戦


 王国軍が最前線から軍を退き、立て籠もった最終防衛ラインとも言えるデウス門。

 難攻不落のその場所を、アデル・デュラハン少佐率いる強襲部隊「ワイルドハント」が上空から攻め入った。

 人間では初の飛行部隊。30名ほどの部隊であれ、上空から攻められるという事に慣れていない王国軍は大混乱に陥った。

 閉じられている門を中から開けて、味方部隊を引き入れる作戦。

 それは順調に進んでいた。

 だが、しかし、王国軍に援軍として送られてきた女性と数名に者たちにより、状況は悪化する。

 アリサ・シュペイン。

 アデル少佐の実の妹である。

 どうやら相性が悪いようで、アリサはアデル少佐の隙をつき、致命傷には至らないが重体を負わせた。

 戦闘続行できるとアデル少佐は言っていたようだが(報告からかなり冷静さを欠いていた事が推察できるので当てには出来ない)、「ワイルドハント」部隊副官であるクロエ大尉は、アデル少佐を回収し、部隊をまとめ上げて撤退。

 結果。

 デウス門は一時開放されたものの、「ワイルドハント」が撤退すると同時に再び閉ざされ、再び両軍は膠着状態へと戻った


           ――帝国軍軍師 第一次デウス門攻略戦報告書 抜粋――









 

「今回の作戦失敗の責任は全て私にあります。処罰は私のみにお願いします」


 帝国軍最前線基地にある建物の一室。

 私はアルベルト・ノイマン軍師の元に訪れ、頭を下げて謝罪をしていた。


「――躰は、大丈夫なのか? まだ二日程度しか経ってないが」


「こうして動ける程度には回復しました」


「……そうか」


 これほど回復したのは、黒月と白月、2人のお陰だ。

 アルベルトさんに渡されたお金で購入して奴隷の姉妹。3回も返品されてかなり格安(それでも渡された金額上限だったけどね)で購入することができた。

 普通に好い子達。なんで、返品されたんだろう。

 「ワイルドハント」隊員に聞いたところによると、私に似ている、からと言った。うん。意味が分からない。

 海を越えた別大陸の出身者で、この大陸とは違う術式を使えるようで、その中に回復術式もあって、無事にこうして歩くことが可能なまで回復できた。


「報告書には、「ワイルドハント」部隊副官クロエ・デュラハンが、隊長であるお前の指示を無視して撤退したとあるが」


「クロエは命令無視の処罰として、謹慎処分を命じています。撤退する原因を作ったのは、私の実力不足です。アレに不意をつかれダメージを負ったのが最大のミス。ですから、クロエに処罰を科すのではなく、私にお願いします」


 私は、もう一度、アルベルトさんに頭を下げた。

 クロエ・デュラハン。本名、クロエ・シノウ・デッシェル第一王女。

 王国で死を偽装してまで、私を追って帝国まで来た少女。

 王族とは思えないほど戦上手で、その才能に何度も助けられている。流石、ゲームで才気煥発と書かれていたキャラだけはある。

 報告書がアルベルトさんに上がっている以上、私の命令を無視して、独断で撤退して、それがデウス門攻略戦を敗戦という形になったのは明白なこと。

 なんらかの処罰は免れないだろうけど、私が先んじて謹慎処分を下して、責任は私が取るといえば、クロエに対してはこれ以上の処罰は下らないはず。


「――その心配は不要だ。今回の作戦の失敗を、「ワイルドハント」部隊隊員が取ることはない」


「……なぜ? 敗戦する形になったのは、私達の撤退が決め手ですよ」


「何はともあれデウス門を開門させた。我々が作戦を侮り、進軍を遅れさせなければ、デウス門は落ちていた公算が高い」


「……「たられば」ですよ」


「そうだな。だが、今回に限り、「ワイルドハント」部隊に対する処罰はない。軍の行動を遅らせる原因の参謀軍師数名が処罰を受ける程度だ」


「……」


「それにこちら側の損害はあまりに少ないのも大きい。突入したのは「ワイルドハント」部隊だけだった。幸い、こちら側には死者は1人も出ていない。――不満そうだな」


「少しだけ。後々にこれを掘り返されても、なんの処罰も受けてないとなれば、理不尽な要求を出されても受け入れざる得ませんから」


 今は処罰無いのは嬉しい。でも、先では分からない。

 今回のことを蒸し返されて、無理難題で理不尽な命令を出された際に、処罰もなにも受けてなかったら、唯々諾々と受け入れざる得ない状況が出てくるかもしれない。

 例え大小はあれ処罰を受けていれば、言い訳は立つ!

 ここは無理してでも、何かしらの処罰を受けていた方がいいハズ。

 アルベルトさんは少し考えると、デスクの引き出しから書類を取り出して机の上に置いた。

 私はそれを手に持ち、書類を流し読みをする。


「アル、ベルトさん。これは?」


「その文章の通りだ。どこも受け入れようとはしなかった為に宙ぶらりんになっていたが――。そこまで処罰を望むので有れば、それを「ワイルドハント」部隊への処罰とする」


「まっ、待って下さい。私の部隊は今満員でっ」


「クロエ・デュラハンは謹慎処分で、隊員数は1人空きがあるだろう」


「確かにっ、確かにクロエは謹慎処分にしてますが、それでも……っ」


「処罰とは本来イヤな物だ。ならば、大人しく受け入れろ、アデル少将」


「わかり、ました。分かりました! 「ワイルドハント」部隊隊長、アデル・デュラハン。かの人物を受け入れます。――ただしっ」


「なんだ?」


「受け入れる期間は最長でクロエが謹慎処分が終わる一ヶ月後まで。もし問題を起こしたら、即除隊ということを受け入れて下さい」


「――分かった。あちら側もそれで納得するだろう」


「それと! 私の部隊の監督役であるアルベルトさんっ。もし私がコレに何かして責任処罰が来たら、全力で庇って下さい。私は拒否しましたからね。拒否しましたからっ。それでも押し付けたのは、アルベルトさん。貴方ですっ。リスクは負って貰います!」


「――……いいだろう。だが、何かするのならその方には出来るだけ関わらないようにいろ。庇うにも限度がある」


「分かりました。では、失礼します」


 私は頭を下げて、アルベルトさんの執務室を後にした。


 


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