表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/32

相反

 ――どうして。こんなことに。


 ノイド様が姉に殺された後、キリディア様の部下が私達を拘束。そのまま何処かへと連れて行かれた。

 連れて来られたのは木製の部屋。

 きっとキリディア様の魔力で作られている以上、私がどうこうできる代物じゃない。

 アーノルド様。ファクト様。ギルガス様。

 それぞれ3人は、私とは別の部屋に連れて行かれたようだ

 1人はイヤだけど、今だけは1人がいい。


 回想する。


 私が姉に初めて会ったのは、6年近く前。

 初めて会った時に、私は姉を畏れた。雰囲気が、他者を飲み込む威圧が、私を支配した。

 それからしばらくして、姉が私と同じ転生者である事が分かった。

 もう、精神の限界だった。

 あのまま姉の威圧に晒され続ければ、私は壊れていたと思う。実際、同じ転生者であると向こうも気づいていたようで、威圧感が更に増した。


 だから私は、お父様とお母様に言って姉を遠くへ送り出すように言った。

 この世界の両親も、姉の威圧には少し参っていたようで、私が言い出した事を契機に、姉をキリディア様に預けることにしたようだ。


 言い訳にはならないけど、私は姉を戦場に向かわせる気なんてなかった。

 ただ、遠くに行って欲しかっただけ。


 姉を家から追い出してから二年近く経った頃。

 カルト教団を潰して、最前線で活躍しているという話を聞かされた。


 ……その時から、私は快眠することができなくなった。

 いつ姉がカルト狩りや戦場に向かうことになった原因である私を殺しに来るか。その恐怖で眠ることができなくなってしまった。

 『頸斬姫』

 夢で見るのは、躊躇いもなく頸を刎ねてくる姉の姿。

 食事も喉を通らなくなっっていた頃に出会った。


 ノイド様に。そして他の攻略対象者であるアーノルド様。ファクト様。ギルガス様。


 私は一縷の望みにかけることにした。

 この世界は乙女ゲーム。悪役令嬢に1人で立ち向かうのは無理。

 特にあの姉をどうこうするなんて不可能だと思う。

 だから、ゲームと同じように攻略対象者を一遍に攻略することにした。

 三本の矢ではないけど、ヒロインである私と攻略対象者4人が揃っていれば、あの姉に対抗できる、かも、しれない。


 4人を攻略していく過程で、私は心に余裕が出来たのか、安眠ができる回数が増えた。


 姉の婚約者であるノイド様と一線を越えるのは、流石に躊躇った。

 でも、断って、離れられるのは、恐かった。姉に対抗する手段が減る。

 私は姉の婚約者と寝た。

 そして他の攻略対象者とも、同じく、寝た。


 私は姉の婚約者を寝取り、他の人たちとも平気で寝る、ふしだらで淫乱な女。


 一部の令嬢からは、嫌悪や見下すような視線を感じるようになった。

 特に第一王女であるクロエ様は特に酷く、嫌悪感を隠そうともしない。

 ゲームでは協力者だったけど、もう無理だと感じた。


 そんな日々が続く中で、姉のことを叫びながら目が逝っている集団や、不幸な事故が頻繁に起こるようになった。

 ノイド様は全て姉の仕業だと言っていたけど。

 前者はきっと姉が叩き潰したカルトの残党。

 後者は――――きっと。クロエ様の仕業。

 ヒロインのスペックは低くはなく、全てをなんとか回避できた。


 そして運命の日。

 起きることがないと思っていた断罪イベントが起きそうになった。

 クロエ様がノイド様に言って、姉を最前線から呼び戻すという。

 私は迷った。

 姉を最前線から戻し遭う恐怖。断罪イベントを逃し姉を恐怖する日々。

 迷い、迷った末に、私は断罪イベントを慣行することにした。

 元々私への出来事が姉の仕業だと思っていたので、ベッドの中で囁き、国外追放にして貰うように頼んだ。


 そして……。


 ノイド様の頸が刎ねられた。


「お、お姉様。い、いったい、ど、どうして。こんな。こんな結末、私はしらないっ」


「――イラっときたからだけど? それと、そこの第二王子が死んだのは、あんたの所為でもあるからね?」


「わ、わたしは、何も、何も悪くないわっ!!」


「悪いよ。言うならば諸悪の根源。こうなったのは、アリサ。お前が私を最前線の戦場に送ったからだからね」


 5年前以上に、怖ろしく、そして綺麗に成長した姉。

 威圧感はかなり増していた。

 その姉が、私を断罪するように言う。


 私が、私が悪いの……?

 ただただ私は、姉と離れたかっただけ。威圧感に晒される生活から抜け出したかっただけなのに。


「俗物。王子が死んだ事がそんなに悲しいか」


「キリ、ディア様」


 両手で顔を覆い泣いていると、目の前に木で出来た椅子に座ったキリディア様がいつのまにか居た。


「ええ。悲しいです。わたしの所為で、ノイド様が――」


「ふん。俗物。お前もアレの毒気を畏れることなく受け入れることが出来れば、こうはならなかっただろうが。あの王女は毒気を受け入れていたが、少々効き過ぎではあったがな」


 毒気。姉の威圧のことだろうか。


「俗物。お前はこれから儂の元で鍛錬を積み、最前線に向かって貰う。そして自分の姉を殺せ。それが貴様の罰である」


「私が、姉、おねえさまを、殺す?」


「これは儂からの命令だ。必ず、死んでも、殺せ」


 キリディア様は睨み、私にそう言った。

 私が姉を殺す?

 無理だ。無理だ。無理だ。

 ――でも、もうこれしかないのかもしれない。

 私は逃げた。姉から逃げ、乙女ゲームに逃げ、攻略対象者たちへと逃げた。

 なら、もう逃げずに、姉と向き合い、そして……殺す。

 私の所為で殺されることなった、ノイド様の敵討ち。


「わかり――ました。キリディア様。おねえさまを。アデルは、私が殺します」












「俗物ならば、アレに「生と死の狭間を経験させ、生を渇望させる」事ができるだろう。どうやらアレは俗物に対して思うところがあるようだしなぁ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ