表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/32

02話 悪役令嬢は思考するⅠ

 

「……疲れたぁ」


 私は、ベッドに倒れるように沈む。


 敵の指揮官の頸を刎ねた後は、全力で逃げた。

 相手は30人弱の一個小隊。そして相手は私1人。

 私は転生者だけど、転生物にありがちなチート能力はもってないので、大多数の敵兵を相手にする事はできない。したら、返り討ちに遭うこと間違いなし。


 味方陣地まで撤退した私は、まだカードゲームをしながら駄弁っている同僚の机に、笑顔で敵司令官の頸を置き、「おやすみない」と笑顔で言って自室へと向かった。

 ただ、その時に不思議なことに同僚達がなんだか謝ってきた。

 謝る必要は無いのに……。

 なぜか私が怒ってると勘違いしたみたい。きちんと笑顔で、普通におやすみなさいと言ったのに。

 私は「怒ってないですよ?」と相手を萎縮させないために笑顔で言ったのに、同僚達が戦場では貴重品であるお菓子とお酒をくれるというので、断るのも悪いと思い、それに頸の値段と思えば悪くないなぁと考え、素直に受け取った。


 自室に帰ると貰った趣向品の数々を机に上に置き、今に至る。


 地球でいう三畳程度の広さの一室。

 ベッドとローテーブルを置いてるだけで、空きスペースはもうほとんどない。


 仮にも公爵令嬢ですからね? 一般兵とはいえ、部屋ぐらいは融通してくれている。


 まぁ、前線に所属した当初は、他の人たちと一緒の部屋だったんですけどね。

 私は「美少女」だから――そう、「美・少・女」だから仕方ない事だけど、戦場で女に飢えた男達に、寝込みを襲われそうになる事が起きた。

 襲ってきた全員を隠しナイフを使用して全員の頸を刎ねて、頸を廊下にある机に並べ、壁に「寝ている女子を襲った卑劣漢」と、血文字で書いた事があった。

 血文字で書いたのは仕方が無かったから。だって手持ちに紙もペンもなく、あるのは死体と大量の血液。なら、血文字で書くしかないよね。

 それが三度ほど起きて、二桁ほどの頸を刎ねた直後に、1人部屋を用意された。

 私は一般兵という事で遠慮したんだけど、上官からの命令だったので拒否できなかった。


 それにしても眠い。凄く眠い。

 「オーバーロード」の後遺症。本来以上の魔力を出力(100%の所を120%以上の魔力放出)するため、肉体的にも負荷が大きい。

 私は念のため、アサルトライフルを直ぐに撃てる場所に置いて、睡魔に身を任せた。








 私の名前は、アデル・シュペイン。

 

 トリニティア王国シュペイン公爵家長女。

 そして転生者でもあります。

 しかも乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった、よくあるヤツです。


 この世界は、生前にプレイした乙女ゲームの舞台にそっくりだった。

 勿論? 私はゲーム脳じゃないので、ここが0と1でプログラミングされて、シナリオ通りに人々が動く世界じゃなく、普通に人々は思考して考える、現実世界。

 普通ならそう考える。普通ならね?


 私の2歳年下の妹、アリサ・シュペイン。

 乙女ゲームにおいては「聖女」にしてヒロイン。

 そして、私と同じ転生者にして、現実を見ないゲーム脳。


 妹は魔性の可愛さを持ち、両親を陥落させ、同じ転生者である私を戦争の最前線に送るように、両親に頼み込み、それは承諾された。

 10歳そこそこの少女を、妹に頼まれたからと言って前線に送り出す両親ってどうかしてると思う。


 ただ、戦闘技術もない子供が戦場に行っても肉壁になるのが精々。

 そこで戦闘訓練をするため、私は初代シュペイン公爵家当主、現トリニティア王国元帥であるキリディア・シュペインの元に送られた。

 トリニティア王国最強にして、王国唯一の魔法使いの元にッ。


 この世界で魔法使いとは、戦略級広域魔法を使用できる者を基本的に言う。

 前世でいうと、戦略級核を個人で打てる存在と思ってくれて良いです。

 ご先祖様は、色々な意味で凄く、性格はイカれている、自身の魔法の効果で1000年近く生きている怪物。

 アレと比べると、私なんて赤ん坊以下でしかない。


 ご先祖様は、私を慣れるより慣れろの精神の元、実践が出来る王国内にいるカルト集団殲滅戦に案内してくれた。してくれなくても良かったんですけどね?

 

 自家製のクスリを服用して、脳を吹き飛ばすか、頸を切断するかしないと死なない、半分ゾンビのような狂信者たち相手をしないといけない恐怖。

 その時の圧倒的な恐怖は、私を今もトラウマです。

 お陰様で、

 カルト集団を見たらサーチ&デストロイヤー。

 敵は脳を撃ち抜くか、頸を斬り落とすか。

 が、癖になってしまいました。


 一年近くカルト集団と戦い続け、戦闘慣れした所で、本来の戦場――つまり今いる最前線に送られることになりました。


 色々な事があったけど、最前線に赴任してから4年が経ち、私は15歳となった。


 私自身も忘れていた事だけど、本来の、乙女ゲームの悪役令嬢としての破滅フラグが、なぜか動き始めていたのでした。

 勿論、私を戦場に送り出して殺そうとしたヒロインである愚妹の策略で。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ