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12話 悪役令嬢と第一王女Ⅰ


 ご先祖様に強制的に王都に連れられて来てから10日。

 最前線を出てからの日数は、20を超えた。

 戦いのない、平和な日々がこんなに続いたのは、きっと五年前以来のこと。


 ……まぁ、この10日は公爵令嬢としてのマナーやダンスの特訓など、かなり詰め込んだ勉強が実施され、かなり疲れたんだけどね。

 いやー、うん、流石ご先祖様の奥さんだけはあるね。凄く厳しかったです。

 まだ戦場で上官から、無理難題を言われた方がマシってレベルでした。

 私じゃなければ、途中で倒れること間違いなしなカリキュラムでしたよ。

 いや、本当に追い詰められたら学習能力と要領がアップする体質で良かった。


 今は一段落している状態で、私は与えられた自室に隠り、銃のメンテナンスをしていた。

 因みに私は一歩たりともご先祖様宅からは出ていない。

 外でやられているプロパガンダによる私の虚像による色々な催しを見なくて済むからだ。見たら自分の感情を制御できる自信が全くないね。

 たぶん暴れる。

 でも、ここに引き籠もることで、見たくない物は見なくて済む。元日本人らしい、事なかれ主義ですよ。


「~~~♪」


 で、私は何をしているかというと、銃のメンテナンスです。

 「ツァプル二型改」が、レギオンの中核を破壊した時の「オーバーロード・フルスロットル」で、内部がもうこれ以上にないぐらい壊れたので、ご先祖様に頼み込んで、新しいのを貰った。

 新しく貰った銃の名前は「アルヴァストSS2」。アサルトライフル型の魔銃。

 帝国軍との戦いで、流石に武器の質が劣っていると自覚した軍が新しく次期制式採用する銃器を国内銃器メーカーにコンペで競わせて、見事に落選した銃だ。

 落選した銃だけど性能は悪い訳じゃない。一丁の制作費用が高すぎるために落とされた作品である。「アルヴァストSS2」1丁制作するのに、新しく制式採用された次期主力アサルトライフル「ルシャハナGVAA」を5丁作ることができるらしい。

 流石にコストが高いだけ有り、この銃だけは帝国軍が使う銃を上回っている。

 搭載された魔石やら回路を見たけど、たぶん私の「オーバーロード・フルスロットル」に耐えきれる性能をしている。

 いやー、これを貰えただけでも王都に来た甲斐があったというもの。

 もう最前線に帰って、銃の試し撃ちとかしたいなぁ。


「失礼します、アデル様」


「――何か、ようですか?」


 ノックをして入ってきたのは、この家に仕えるメイドさんの1人。

 私の声に少し怯むように一歩下がる。

 いや、そんな威圧してないですよ。

 まあ、楽しく「アルヴァストSS2」のメンテナンスをしていたのを邪魔されたのは、ちょっとイラッときましたけど。


「クロエ様が、アデル様に会いに来られました」


「……。私に会いに、クロエ様が?」


「はい」


 クロエ・シノウ・デッシェル第一王女。

 乙女ゲームでは、ヒロイン側に付き、悪役令嬢を断罪した人物。

 更にゲームの設定だと、現在いる王家の中でも最も才気煥発な優秀な人物であり、もしも王位につけば帝国も苦戦を強いられると書かれていた事を思い出した。

 この世界では、一度だけ会ったことがあるかな。

 5年ほど前。ノルド様との婚約の為に王城へ行ったときに、一言二言挨拶したぐらい。


 ――――会いたくないなぁ。

 特にヒロインに味方して断罪イベントするキャラとか地雷でしかない。

 でも、仮病は使えない。使ったらマリーネ様に引っ張られて、結局行くことになる。

 大きくため息を吐くと、メイドさんに身嗜みと軽く化粧をされ、クロエ様が待つ客間へと向かった。

 客間に居たのは、ゲームで何度も見た姿がそこにはあった。


「お待たせしまして申し訳ありませんでした、クロエ様」


「いえ。突然、押しかけたのは私の方です。気にしないで下さい、アデルお姉様。申し訳ないですが、大切な話があります。2人だけで宜しいでしょうか」


「は、はい」


 私は付き添いで来ていたメイドさんを下がらせた。

 客間にはクロエ様と二人っきり。

 これは、もしかして断罪イベントの前振り!?

 やばい。やばい。やばい。

 「アルヴァストSS2」はメンテナンス中で今は部屋。ご先祖様の自宅だった事もあって万一の時に太もものところにベルト装着して忍ばせておく暗器もなし。

 完全に油断してた。

 まさかたった10日ほどのマナーやダンスの特訓で、私はここまで腑抜けてたの!

 戦場なら、こんな事はまずあり得ないのにっ。

 ご先祖様! ごめんなさい。常在戦場の心構えを忘れてました!!

 クロエ様は椅子から立ち上がると、


「申し訳ございません、アデルお姉様!」


「――?」


 頭を下げられた。もし土下座という文化があれば、土下座をする勢い。

 正直。

 私は王族に対しては謝る事はあっても、謝られる事をした記憶は無いのだけど……。

 自分で思っていて、それはどうだろうと? と、少しは思った。




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