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01話 悪役令嬢、『頸斬姫』と呼ばれる


 爆音が鳴り響き、悲鳴が轟く、悪夢のような戦場。

 モンスターテイマーによって調教された高ランクの魔物が味方を屠る。

 魔銃から放出される魔力の閃光が、味方の身体を裂いたり、撃ち抜いたり、爆破したり。

 誰がどう見ても敗戦濃厚。

 どんな神算鬼謀の軍師がいたとして、ここから逆転できる可能性は低い。


 とはいえ、今は最前線から少し外れた場所にいるのだけど。


 私の名前はアデル・シュペイン。

 公爵家令嬢で、乙女ゲームの悪役令嬢に転生した、ただの少女。

 それが私です。


 魔銃から放たれた閃光が、私に向けて幾つも向かってくる。

 風の魔法で、空中に浮きながら回避した。

 ――因みに私なんて部下もいない、ただの兵士。

 それなのに重点的に狙ってくるなんて、帝国軍は見る目がないんじゃない? もっと立場の偉い人を狙えば良いのに――っ。

 舌打ちをしつつ、私は手に持つ短機関魔銃を構えて、敵兵に向けて撃つ。


 魔銃。簡単に言えば、弾丸の代わりに魔力を充填して撃つ銃の事を言う。

 20年ぐらい前に開発されて以来、戦場の主役になった武器。

 魔術師が魔法を放つには集中してイメージをしなければいけない。その為、どんなに短くしたとしても十数秒から数十秒はかかる。

 けど、魔銃は予め魔力を充填しておけば、後は引き金を引くだけで良い。

 対策しては周りの魔力濃度を濃くして魔弾を逸らすか、マジックシールドを張るか、ぐらいかな。


 ただ。ただね?

 小銃で狙撃銃で狙ってくる団体さんとやり合うのは無理ゲーだと思うの。

 射程距離が違うから!

 昔は良かったなぁ。魔力濃度を濃くして、敵陣に突撃。近距離からの小銃を撃って、確実に止めを刺すために敵の将兵の頸を斬り落とす。

 私も狙撃銃が欲しいと思うこの頃。

 でも、私は遠距離射撃の命中率はお世辞にも高くないし、王国軍の狙撃銃も性能はそれほど高くない。まあ、王国軍の銃の性能は狙撃銃に限らず、銃全般で低いのだけど。

 戦争において技術力の差は圧倒的だと思う次第です。


 ……それにしても、なんで帝国軍は狙撃銃の使用率が上がったんだろう。

 上がったと言うより、私と戦う兵士の採用率が高いような?

 たぶん気のせいだろうけど。

 一般兵卒の私相手に対策とるなんてありえないのに。

 思わず自虐的な笑みを浮かべてしまった。

 ――まぁ、長い間、戦場に居ると一般兵卒も、少しは顔が知られる事があるかもしれない。


 私はいつも通り、「オーバーロード」……魔力を放出させて高速移動する形態(反動で死にそうになるけど)に入り、30名弱で構成されている小隊へ突撃を開始した。








「『頸斬姫』を絶対に近づかせるな!」


 小隊隊長――ダニエルは叫びながら隊員に指示を出す。

 戦場の端にある、過去には野盗達が占拠していた小さな砦の偵察をするために移動していた所に、運悪く『頸斬姫』――アデル・シュペインと遭遇してしまった。

 因みにアデルは、同僚達とのカードゲームで負けてしまい哨戒任務を行っていただけである。

 お互いにとって不幸な出会いであったとしか言い様がない。


 地上から空を飛ぶアダルに向かって、幾つもの光が放たれるも、それを紙一重で回避している。

 飛行魔術は現在においては風属性と火属性の魔術師が使用できる。

 風属性の魔術師はアデルのように、風を自由自在に操り自身を空中で移動させるタイプ。

 火属性の魔術師は、足や手から火を噴射して移動するタイプ。

 ただし、どちらも共通して魔力燃費はあまり宜しくない。並の魔力量では10分から15分ほどの飛行で、魔力が尽きてしまう。

 そのため長時間の飛行には、かなりの魔力保有量が必要である。

 故にどの国も、兵士の単独による飛行部隊の設立は一度は検討するものの頓挫していた。

 航空部隊と言えば、ワイバーンや鳥系の魔獣を調教して、それに人が乗り、操舵してする部隊の事を指す。

 因みにダニエル達の小隊は、歩兵と騎馬兵の混合部隊である。


「最前線と違い魔素は薄い!」


 魔素とは魔力の粒子のことだ。

 それを人工的に発生させることで、魔力弾の軌道を逸らす事が出来る。

 前線では魔素が濃いため、目標通りに当てるのは中々難しくなっていた。

 対策としては、魔素を吸収する魔石を敵陣に投擲。魔素を薄くするという戦術が取られる事がある。


「た、隊長! アレが、朱い魔力を」


「――来るぞ! 目標は俺だっ」


 『頸斬姫』は単独行動が多い。

 そのため、指揮官や隊長格の人物を斃す戦いをする。

 またそれをする時は、常に朱い魔力を纏い、突撃する戦法を用いてきた。


 ダニエルは部下達を回りから退かせる。

 目標がハッキリしている以上、隠れている訳にはいかなかった。

 スナイパーライフルを構え、スコープを覗き込み、向かってくるアデルを見据え、引き金を引いた。

 魔力弾がアデルに向かって一直線に奔る。


 それをあと少しで当たりそうな所で、僅かな動作で回避した。

 下がらせた部下達も、援護射撃をするが、悉く回避されてしまう。

 舌打ちをしてダニエルは、腰に下げている剣を抜いた。

 魔力が尽きたときの手段として装備していた剣である。

 向かってくるアデルに向けて剣を構える。あの状態の時は、銃撃は出来ないという報告がある。

 理由は魔力放出が高すぎて、銃自体がオーバーヒートしてしまうからだ。


 それは一瞬の出来事であった。

 アデルがカスタマイズしているアサルトライフルの先端にある刃が魔力を帯び、長刀の魔力刀となり、まるで鞭のようにうねり、ダニエルの剣を振り下ろす直前の腕を斬り、そのまま頸まで一斉に斬り落とした、

 






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