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夜
この病院に一度来た人間は二度と病院で見る事は無い。
私は谷中徳治。
今、私は病院を駆けていた。
不摂生が祟って入院していたある日、こっそりコンビニに行って帰って来た帰り道、タバコ、吸いたいな。
そんな事を思っていた時、それに出会った。
「ヒカエロォオォオォ」
白衣の男だった。
暗くて顔が良く見えなかったが、白衣だけが僅かな光に反射して見えた。
まぁ、それだけなら別に消灯後に出歩いたのを見られたというだけで何ともなかったんだが………
足が無かった。
白衣の男には足が無かった。
膝から下が無いにもかかわらず、男は歩いて来た。というか、浮いていた。
膝から下が無いのに身長が俺くらいあり、しかも、自然に歩いて来た。
白衣だからと、ここの医師だと思っていたが、
明らかに、病院の医師じゃない!
「ヒカエロォオォオォ」
近付いて来た男の顔が見えた。
生きている人間の顔では無かった!
「ヒッ」
声にもなっていなかった。
息を飲んだ音が喉を鳴らしたというのが正しい様な音をさせ、コンビニで買った唐揚げとビールを落とし、脱兎の如く逃げ出した。