表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/153

SUMMER VACATION 2019 プロローグ

この章は夏休み特別企画としてお送りする番外編です。

本編のストーリーには何の関係も無いイベントのようなものになります。

 その日、俺はいつものように仲間のティルシアと共にダンジョンに入っていた。


「どうだ、ハルト! 見てくれ!」


 中学生くらいの少女が瀟洒なナイフを掲げて俺の前で胸を張る。

 頭にぴょこんと生えたウサ耳が誇らしげに揺れる。


「すごいじゃないか、中層で見つかる事なんて滅多にない大物だぞ。」


 実際に大したものだ。

 ダンジョンの中ではまれにこういった完成品の武器や道具が落ちていることがある。これらはアーティファクトといい、ダンジョンの奥になるほど良い品が落ちている。

 ティルシアが持っているのはミスリル製のナイフだ。

 材質の純度にもよるが、そもそもミスリル自体が下層でしか手に入らない。

 中層で手に入ることなどよっぽどの事だ。

 彼女は結構なリアルラックの持ち主で、まだダンジョン夫になって間もないにもかかわらず、今までに何度かこういったアーティファクトを発見している。


「これは帰ったらお祝いをしないとな。な? だろ?」


 チラチラとこちらを伺い露骨なアピールをするティルシア。

 彼女は俺の作る料理が大の好物で、何かと理由を付けては俺に料理をせがんでくる。

 まあ、確かにこの世界の飯は不味いからな。




 この世界の飯(・・・・・・)、という言葉からも分かるように、俺はこの世界の人間ではない。

 俺の本名は青木晴斗。俺は10年前、日本からこのゲームのような異世界フォスに迷い込んだ転移者なのだ。


 当時中学生だった俺は気が付いたらこの世界に飛ばされていた。

 それからこの世界の様々なクソッタレな洗礼を受けたわけだが、思い出すのも不愉快なので説明は勘弁して欲しい。

 色々あった俺は現在はこの町のダンジョン協会に所属している。この世界に身寄りの無い俺には他につける職業も無かったからだ。


 この世界は俺たちが想像するゲームのような世界だ。

 魔法もあればモンスターもいる。モンスターを倒せばレベルアップもする。

 そんな俺に生えたスキルだが、スキル「ローグダンジョンRPG」といって・・・



 グラリ・・・


 突然ダンジョンに振動が走った。


「ハ・・・ハルト!」

「落ち着け、ただの地震だ。立っていると危険だ。しゃがんで揺れが治まるまで待とう。」


 日頃は勇ましいティルシアだが、ダンジョンという密閉空間での地震に不安の色が隠せないようだ。

 頭のウサ耳もへにゃっている。

 顔色を悪くするティルシアだが、おそらく俺の顔色も似たようなものだろう。

 いや、もっと悪いかもしれない。俺はこの地震の原因に心当たりがあったからだ。


(この振動はまさかダンジョンの階層が拡張されている?! 原初の神に何があったんだ?!)


 このダンジョンの最下層には原初の神と呼ばれる存在が封印されている。

 ダンジョンは原初の神によって生み出されたものなのだ。

 原初の神は今は力のほとんどを失っている。

 俺はその力を取り戻す手伝いをしていた。神が力を取り戻した暁には俺はその力で日本に戻してもらえることになっている。



 ティルシアにしゃがんでいるように言ったのは、俺自身がほおっておくとダンジョン最下層まで走り出しかねないからでもある。

 それくらい今の俺は焦っていた。

 それも当然だろう。クソったれなこの異世界から日本に戻れるかもしれないたった一つのチャンスなんだ、何があろうと失うわけにはいかない。


「クソっ! なんて激しい揺れだ。気を付けろティルシア。崩落の危険もある。」


 激しく突き上げる揺れに俺は辺りを警戒する。

 そんな俺を目を丸くして見つめるティルシア。


「それほどなのか? ああ、気を付けよう。」


 この時俺は奇妙な違和感を感じた。

 俺とティルシアの温度差ーーというか、危機感の違いだ。

 突然の揺れに最初は不安がっていたティルシアだが、今はそれほど不安に感じている様子が無い。


 むしろ揺れ自体はどんどん激しくなっているにも関わらず、だ。


 やはりこれはただの地震ではない。

 最初、俺は最下層まで走り出したい気持ちを懸命に抑えていたが、今では激しい揺れに立ち上がることすら出来ずにいた。


「お、おいハルト、モンスターだ!」


 中層でも厄介なモンスター、斑鼠だ。豹のような斑模様を持つコイツは小さくすばしっこい上に毒を持っている。

 中層を仕事場にするダンジョン夫に蛇蝎のごとく嫌われている厄介者だ。

 モンスターは揺れを気にしないのか平気で俺達に襲い掛かってくる。


「任せておけ!」


 ティルシアは事もなげに立ち上がると、手に入れたばかりのミスリルのナイフを手にモンスターと対峙する。

 俺は激しい揺れに立ち上がることが出来ない。

 くそっ、どうなっているんだ!



 俺の脳裏に一瞬、ニヤリと笑う少女ーー原初の神の姿が浮かんだ。


 光


 暗転


 そして・・・


◇◇◇◇◇◇◇◇


 この日、ダンジョンの中層でハルトとティルシア、二人のダンジョン夫がこの世界から姿を消した。

 しかし、この事に気付く者はこの世界には誰もいなかった。

 ただ一柱、原初の神を除いて。

この章はプロローグだけで、本編はありません。

いつまでも続きを待っていても更新はされませんのでお間違えの無いようにお願いします。

この後の話はイベント作品『四式戦闘機はスキル・ローグダンジョンRPGで村では小柄で5億7600万年』(https://ncode.syosetu.com/n6700fp/)の中で語られる事になります。

そちらでハルト達の活躍をお楽しみ下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

もしもこの小説が気に入って貰えたなら、私の書いた他の小説もいかがでしょうか?

 

 『戦闘機に生まれ変わった僕はお嬢様を乗せ異世界の空を飛ぶ』

 『私はメス豚に転生しました』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ