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おまじない
呼吸が乱れたまま、私はぼーっとする意識の中で首を傾げた。
どうして、練習もしていないのに刀を振ることができたのか。
私はゆわゆる刀剣女子で、前世では刀については詳しいほうだったが、一度も触ったことがなかったし、振ったことも、人を斬ったこともなかった。
そんな私が、なぜ夜桜を使えたのだろうか。
そして、どうして皇さんは私を選んだのだろうか。
「よくやったな」
イケメンキラースマイルで皇さんはご褒美だとでもいうように私の頭をポンポンと撫でた。
その感触が心地よくて、私は目を細めた。
しばらく、こうしていたい。
「時雨、大丈夫か?顔色悪いな。やはり、妖刀だからな。妖力を扱うのにまだ慣れていないからだろう」
皇さんは私のおでこに何か文字を指で書きだした。
くすぐったくて目を細めていると、終わったらしく皇さんはわたしのおでこに掌をかざした。
途端に体が楽になり、だるさが消えた。
皇さん、すげえ…。
「まじないだ。気分はどうだ?」
「だいぶ楽になりました。ありがとうございます」