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夜桜、舞う
皇さんと歩くうちに、何度かぞっとした。
くらい道、なぜか不気味な家……。
狂人にはまだ一人も出会っていないが、もうお腹いっぱいなくらいに恐怖を味わった。
だけど、帯刀した夜桜と皇さんのイケメンさに何とかテンションを上げて歩いた。
「そろそろ、休憩するか」
「はい!」
と、その時……。
私は刹那、まとわりつくような視線とただならぬ殺気を感じた。
「現れた、か」
「えっ……?」
皇さんは後ろのほうを睨みつけた。
「時雨、夜桜を鞘から抜け」
「わかりました」
時雨はゆっくりと夜桜を鞘から抜いた。
太刀ではないので、構えやすいが、意外と重い。
「ゔ、ぅ、……ぐぁっ」
「ひっ!」
目を赤く染め、刀を構えてこちらへ歩いてくる狂人が目に入った。
のどがヒュウっと鳴って、血が逆流するような感覚。
「今だ」
皇さんの合図とともに、私の体は勝手に動き出した。
次の瞬間、私は宙を舞い、狂人の方へ飛び込んだ。
刀の重さとか、何も感じなかった。
ただ、夜桜に導かれるみたいに。
斬った。