朝日にむかって
夜が明け、私は目を覚ました。
皇さんはもうすでに身支度を整えていた。
「おはようございます。早いですね」
「ああ、時雨。起こしたか?」
「いえ」
「時雨も着替えてこい。そろそろ出発しよう」
「はい」
新しい環境というものには少し違和感と寂しさを覚える。
だけど、私はここで生きるしかないのだから仕方がない。
さらしを巻いて、用意されていた着物に着替える。
転生する前に着物の着方などは女物なら難なく着られるが、男物は着たことが無くて帯の結び方が分からなかった。
「皇さーん!助けて下さい!!」
「どうした!?」
少し焦った様子の皇さんが戸を物凄い勢いで開けて入ってきた。
そして私を見るなりあきれたような怒ったような表情を浮かべた。
「バッ……!」
「あのー帯の結び方が分からなくて…」
はあ、とため息をついて皇さんは後ろ手に戸を閉めた。
「嫁入り前の娘が……」
とか何とか言いながら結んでくれるあたり皇さんは優しく面倒見が良い。
だけど、帯を締める途中ずっと「時雨は男、時雨は男」と呪文のように繰り返すからわかってますよと突っ込みたくなった。
最後に夜桜を帯刀した。
「じゃあ、行こうか」
どこかげっそりした表情の皇さんが言う。
「はい!」