蝉の鳴かない夜に
刃物みたいな、光
内臓を叩く、光
空が割れるのを見た
細長い赤の光は、
さながら飛び散った夜の血液
「綺麗だね」とカップルが言い合う
夜空の傷口を隠すように、
灰色の雲が漂っていた
まだ小さな子供たちに、雨が降る
月と星々は目隠しされて
「ステージに放火された!」と、
夜の向こうに逃げ出した
魚たちは揺らめく画面を通して、
その様子を笑いながら見ていた
海の近くでは、時間が一つになっていた
そんな、蝉の鳴かない夜に
イヤホンの向こう側の喧騒
爆弾が空を飛んだ
八月の夜、戦争
世界中の爆弾が花火になってくれることを祈ってます。