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この異世界に勇者は要りません!  作者: 狐ン
氷の巨人
8/8

シクの村へ

遅くなって申し訳ありません。ここから二章です。

中央暦1592年8月1日 アルカスカ連合神國南部 北大東洋

 大東洋艦隊旗艦 戦艦ラスカント


 戦艦ラスカント。アルカスカ最新鋭の魔術蒸気船であるこの艦は、不沈艦と呼ばれ、進水から15年間、全ての戦闘に勝利していた。


『指令部より入電。三分前に、東部結界ポイント13付近で魔物の発生を確認。推定ランクはSランク。至急撃破されたしとのことです。』

 伝声管から通信兵からの報告が上がる。

 「了解。全艦戦闘準備。面舵いっぱい。」

 艦長であるハンネスの命令と共に、周囲五隻の艦が戦闘準備に入る。

 『11時方向に目標を確認。距離約30000。目標はアルカスカ本土に向けて時速20キロで海上を移動しています。』


 再び、通信兵からの報告が上がる。だが、その姿は30年以上軍に勤務しているハンネスにとっても初めて見る姿だった。それは、全長100メートル程の巨人だった。そして、足元の海は凍っていて、その上を歩いている。周りには、周囲との気温の差から生まれたであろう霧が全体を覆っている。また余談だが、この星は地球よりもかなり大きい。その為、地平線は約50キロ先になる。

 

 「了解。全艦主砲術式を長距離飛翔弾に変更。全艦主砲、右30度に旋回」

 

 『了解。全艦主砲旋回開始。発射準備完了まで約1分。』

 全ての主砲が、進行方向に対して右側にいる巨人に向けて、重い音を発て回る。だが、主砲、いや艦に搭載されている殆どの武装は、地球のそれとはかけ離れた形をしている。


 主砲の形は、砲身のない砲といった形だ。そして、砲身の有るはずの所には、半透明の青い水晶玉のような物が埋め込まれている。そのなかには複雑な模様の描かれた銀色の板が入ってる。


『主砲旋回完了。魔術板変更完了。主砲発射準備完了。』

 伝声管から報告が届く。

 --------------


 「しかし、最近は高ランクの魔物がよく出るな。」

 目の前の光景を見ながら、ハンネスは呟く。その瞬間、一瞬霧で覆われた頭が光った。次の瞬間、前を航行していた駆逐艦が二つに割れ、轟音と共に爆発を起こし、沈没した。

 「なっ、何が起こった⁉」

 軍艦が一撃で轟沈するなど前代未聞だ。根っからの軍人であるハンネスも目を丸くしている。


 『駆逐艦メルス轟沈!続いて、軽巡洋艦カルナス、ロミリア轟沈!』

 通信兵から報告が上がる。だが、これで黙っているハンネスではない。

 「………クソッ。全艦魔術砲最大出力。なんとしても奴を倒せ!」


 『了か……』

 通信兵が言葉を言い終わることはなかった。

 ラスカントが光に包まれる。そして、次の瞬間、真っ二つに沈んでしまった。


 作戦は僅か2分で失敗した。

 今回の作戦で、5隻あった大東洋艦隊は、旗艦ラスカント以下4隻が轟沈。残り1隻も大破。ラ・カルス艦長ハンネス以下6127名が死亡。アルカスカ史上初の大惨敗であった。

 

 翌2日、アルカスカ政府は目標の予想進路上にある、南部の238の村と街に非常事態宣言を発令。海岸の列車砲部隊による殲滅を試みるも、目立った効果は無し。アルカスカ軍が保有する通常兵器では、撃破は不可能と判断した政府は、"ある兵器"を使う事を決定した。


ーーーーーーーーーー

中央歴1592年7月27日 

 

 時は少し遡る。

 「師匠、今までお世話になりました。」

 そういって、俺は玄関前で頭を下げた。


 「おう、向こうでも頑張れよ。俺が此所に来てから30年も経ってるんだ。お前に教えられなかった事も沢山あったが、どんどん吸収しろよ。知っていれば、いつか必ず役に立つ時が来るはずだ。じゃ、あとは頼むぞ。セリア。」


「ん。任せて、おじさん。行こ、ソウヤ。」


「ああ、そうだな。師匠、本当に、ありがとうございました。」

 もう一度、師匠に深く頭を下げ、俺とセリアは師匠の家を後にした。


-----------

 「さて、ソウヤも行ったし、また寂しくなるな。」

 一人になった家の前で、クローグはボソッと呟く。一年前、ソウヤがを見つけた時は、可笑しなヤツだと思った。実際、常識は殆ど知らないくせに、何故か魔法を覚える速度は異常に早いし、科学分野は、最先端レベル、いやそれ以上の知識を持っていた。片腕を失っているのに、それを魔法で補えるのは純粋に凄いと思った。そんなこんなで、あっというまに一年が過ぎた。自分としては、まだまだ一緒に居たかったが、ソウヤを此所に閉じ込めておくのは勿体ない。

 「さて、これからは何をしようかねぇ。」


------------


 「なあセリア。川を下って村に行くって言っても、具体的に何処に行くんだ?」

 師匠の家の近くには川が流れている。この川はロー河と言う大河の支流の1つで、毎日俺が選択や水汲みにいったいた川だが、この川は上流に三キロ程登った所にある湖から流れている。特徴的なのはその地形で、左右に五メートル程の崖が有るU字状谷地形だ。確か日本の青森の方に、似た地形があると学校の授業で聴いた気がする。

 今、俺たちはその谷の下を魔法で脚力を強化しながら、川に沿って下っているのだ。


 「私達が向かってるのは、シクっていう村。この川を300キロくらい下った所に有る。1日100キロは進めるハズだから、三日くらいで着く。でも確か、なんかの調査隊が来てるから、運が良ければ拾ってくれるかもしれないよ。私達が持ってるのは、ここら辺だと外出するときに持ってるものばっかりだから、特に怪しまれないでしょ。こっち方面に仮設レールが敷設されてるハズだから、それに沿って進もう。」


 呑気に会話をしているが、俺たちは時速二十キロくらいのスピードで走っている。それと同時に探索魔法も発動している。ここの当たりは結界の通っているカフサル大山脈から二百キロ程と近く、其なりに魔素濃度が高い。その為魔物も比較的多く(結界が陸上を通っているアルカスカは、元々魔物が多い)油断はできないのだ。もっとも、俺たちならここら辺の魔物は大体倒せるし、倒せない程強力な魔物にはそうそう出会わない。むしろ師匠の備蓄を減らさないように、食料を持ってこなかった俺たちが食料確保の為に魔物を探しているくらいだ。魔物は体内に豊富に魔素を含んでいるから、魔法を沢山使用した時には普通の動物より魔物の肉を食べたほうが良い。


 そんなこんなで昼が来た。確か師匠の家を出たのが8時頃。途中休憩を挟みながらだから、約60キロ、半分を越えた当たりまで来た所だ。

 「よし、これくらい狩ればもういいだろ。」


 食料を探して約30分。小型のリス型の魔物3匹と幾等かの山菜を採ってきた俺達は、火を起こして料理を始めた。持ってきた香辛料で軽く味付けをして焼いていく。山菜は調味料が勿体ないのでアク抜きをしてそのまま食べる。

「……山菜、味がしねぇ。天ぷらが恋しい……。」

「テンプラ?なに、それ?」


「……なんでもない。」と流すと、セリアは頬を膨らまして

「……ケチ」


 まったく。だが仕方がない。この世界の様子が分かるまで、できるだけ日本の事は伏せておきたい。俺は出来るだけ目立ちたくないのだ。


 セリアが拗ねたハプニングはあったが、昼食を終えた俺たちは再び進みだした。そして二日後、俺たちはシクの村に到着した。

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