魔術機械
遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。今年も頑張って書いていきますので、宜しくお願いします。
と、言うことで、本作のヒロイン、セリアちゃん(和服バージョン)です。
普段着の前に和服描くってどうなんだろう……
《システムスタート》
《F3A5〈アルファルグ〉 OS Ver1.22》
ぼうっと、ホログラムが浮き上がる。周りに見えているのは、倉庫の壁だ。今、蒼冶は師匠が保管している、アルファルグを起動している。なぜ、こんなことになっているのかと言えば、師匠が、
「アルファルグをつかえるように為れば、魔法を使う感覚が良く解るようになる。」
と、言ったからだ。
他には、師匠とセリアが倉庫の中に居る。
《コックピット閉鎖》
《起動コード確認。パイロット仮登録者を認識。火器使用を制限。》
《エネルギーパック始動。エネルギー残量98%》
《アクチュエータ活性。関節ロック解除》
アルファルグが起動し、独特の駆動音を発する。ただ、意外にも音が小さく、すぐにかき消されてしまいそうだ。
「ん。おじさん、起動したよ~」
最近はお互いに名前で呼ぶようになったセリアが、いつもどうりのマイペースな声で師匠を呼ぶ。
「よし、それじゃあソウヤ、取り敢えず外に出してくれ。」
「解った、師匠。」
蒼冶は操縦桿を前に倒し、アルファルグを外に出してゆく。
アルファルグの操縦は簡単だ。両手の操縦桿と、両足のペダルを使う。しかし、動力炉を使うために、常に魔素を操作しなくてはならず、結果としてただでさえ集中力を必要とする魔素の操作(=魔法)を使いながら、操縦をする事になる。更に、武器を使うためにも魔法を使わなければならないのだ。そんな事が出来るのは、ほんの一握りだけなので、実戦に投入される前に、アルファルグの開発は、中止になったのだ。
しかし、そんなアルファルグを操縦できれば、魔法は一人前と言っても良いだろう。
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私には、前から気になっていた事がある。
最初にそれに気が付いたのは、ソウヤと軽く模擬戦をした時だった。
「……ソウヤって、やっぱり魔法を覚えるの早いよね。」
「そうか?あんまり気にしたこと無いんだが」
気軽に会話をしながらの訓練なので、かなり雰囲気は緩い。でも、私は気付いてしまった。ソウヤの魔法は、自分たちの魔法とは似て非なる物。全く未知の魔法だと言う事に……
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夕方6時、蒼冶は、一通りの操作を覚え、師匠のお手本を真似しながら訓練をしたあと、家に戻って夕食の支度をしていた。今は夏なので、この時間でも、辺りは明るい。
「それにしても、師匠は本当に人間か?何で、あんな物を自由に操れるんだよ。あんなものが跳ぶってどう考えてもおかしいだろ。」
蒼冶が夕食を作りながら愚痴る。ちなみに、今夜のメニューは、昨日捕れた鹿を使ったステーキと、裏の畑で取れたキャベツのサラダだ。余談だが、猟中心の生活なので、どうしても肉が多くなってしまう。その為、家には香辛料が大量に保管してある。その為、胡椒等をケチらずに、美味しいステーキが食べられるのだ。閑話休題。
テーブルに座り、蒼冶の愚痴を聞いた師匠は、「あんまり、変な事言うなよ。俺は人間だ。それに、セリアだって、少しは動かせるぞ。な。」
師匠は、テーブルの向かいに座っているセリアに話を振る。
「ん。私だって、戦闘は無理だけど、アルファルグで狩り位できる。……さすがに、おじさんみたいな動きは無理だけど……。」
セリアが、どこか呆れた様に言う。
いや、セリアさん。それはもう一流のレベルでは?
「ま、まぁそんな事は良いとして、夕食ができたぞ。」
出来た料理をテーブルに運ぶ。
「「「いただきます」」」
そう言って皆で食事を食べ始める。ちなみに、さっきのいただきます。あれは、二人とも最初から言っていた。異世界の文化が日本と同じな訳がないはずなので恐らく、女神様の転生特典で、自動翻訳されているのだろう。
「ねぇソウヤ、前から気になっていたんだけど、」
食事中、セリアが話かけてきた。
「ん?どうしたセリア。」
「ソウヤの使っている魔法を私は見たことが無い。あの魔法は何?」
「え?」
突然の事に戸惑う。セリアは何を言っているんだ?俺の魔法は全部師匠に教えてもらって、今の段階では、全く同じくしているはずなのに。
「何言ってるんだよ、セリア。そんなはず無いだろ。それに、別にそれでも、大した問題じゃないだろ、変なら直せばいいし。」」
その発言に俺は軽く返した。するとセリアは……
「そんなに軽々しく言わないで‼」
と、大声で叫んだ。
いつもは、大人しく、大きな声など出さないあのセリアが、である。
「いい、私の魔法、例えば水生成の魔法は今分かっている中で、一番変換効率が良いものを使ってる。それで、その魔方陣は、もう百年以上変わっていないの。でも、あなたの魔法は、その倍の効率はあるわ。もし、あなたの魔法が世界的に発表すれば、技術レベルがぐんと上がってもっと人が豊かになれる。魔物からの被害も減る。私の知り合いに、魔法研究所の人がいるの。だから、ソウヤをそこに連れていきたい。」
すると、師匠は
「いや、ダメだ。確かにソウヤは、良くわからない魔法を使っている。確かに効率は良いが、どういう仕組みかさっぱり分からない。悪用されたら困る。それに、まだ魔法を全部教えきれてない奴を外には出せない。」
さすがに、正しい事を言っている師匠相手はきつかったのか、セリアはそれ以上言うのを止めた。
「……解った、ソウヤの事は言わない。それと、明日には帰らなきゃいけなくなった。二日後から、帰りの使う予定の路線が魔物対策で封鎖されるらしい。それに乗れないと、学校が始まるのに間に合わない。……次の長期休暇、一年後にもう一度此処に来る。ソウヤ、それまでにこっちに来るか決めておいて。」
それだけ言うと、セリアは席をたって、寝室に籠ってしまった。女心は良くわからん、と師匠は言っていた。こういう事には役に立たないのが師匠である。
そのあと、夕食の片付けをしながら、俺の魔法の何が違うか聞いてみたら、例えば水を作る時、訳の分からない魔方陣を三つと、温度上昇の魔法を作っているらしい。はて、その構成はどこかで見たような。というか、気づいているのに特に気にしない師匠は、大丈夫なのか?それと、どうやらセリアは学校での勉強が思うように進んでいないらしい。だから、もっと色々教えて欲しかったんじゃないか、ということだそうだ。まあ、学校すっぽかして大丈夫な所ではないしな。この世界の学校も、均一な人間を作りたいらしい。確かに、日本でも特定の物では天才と言われても、学校生活が合わず、成績が伸びない人がいたな。
結局、セリアは部屋から出てこず、次の日の朝には、家を出てしまっていた。まだ暗いうちに出ていったが大丈夫だろうか。
九月になり、山々にうっすらと雪が積もり、木々も紅葉しだして、山を紅く染めていく。相変わらず師匠の訓練は厳しかった。そして、十月には、本格的な冬が到来する。辺りは深い雪に閉ざされ、一面の銀世界が広がる。
やがて、季節は巡り、五月になった。標高の高いこの場所でも、春がやって来て、連日暖かい日が続いていた。
そして、俺がこの世界に来てから、二度目の夏がやって来た。
今回で一章は終わりです。このあと、閑話を挟んで、二章に移ります。