神の部屋
以外と早くかけた。
誤字脱字等有りましたら教えて下さい。
教室が突如発光し、光が止むとそこには真っ白な空間が広がっていた。
「お、おいなんだよこれ…」
山田がそう口にした。誰も何も言わないが、誰もが同じ事を考えただろう。見ると、皆動揺して、状況がうまくつかめていないようである。一方蒼冶は…
「なんだこれ。床が発光したらここにいた…あれか?よく見る異世界転移とかってやつか?」
などと、一人でぶつぶつ言っている。さりげなく、小春の手を握っているのが、ポイントである。どこか、小春も安心しているようだ。
そうこうしている内に、ようやく正気を取り戻した島原が、
「とっ、とにかく、ここから早く出なきゃ。私たちが教室からここに来たなら、どこかに出入口があるはず。」と、普段から大人しい島原にしては珍しく焦った声で話し出す。それを聞いて、山田たち五人に少しだけ希望が見えた。しかし、すぐにその希望はうち壊される事となった。なぜなら…
『それは無意味です。諦めなさい。』
突如として響く女性の声。ただ、どちらかといえば、頭に直接流れ込んでくる感じだ。
「何言ってだよ、早くオレたちを元の場所に戻せよ。」
チンピラグループの一人、横山進が言う。しかし、そんな事気にせずに、声の主は続ける。
『私は十六神の一人、アルファルドという。早速だが君達は、これから君たちで言う異世界、ユリアスへ勇者として召喚される。』アルファルドと名乗った神はさらに続ける。
『だが、召喚されて右も左もわからないまま、と言うのも困る。お前たちには魔王を討伐してもらはないといけないからな。そこで、お前たちにスキルをいくつか与えなくてはならないのだが、それをするのが私という訳だ。』
突然そんな事を言われてどうしたらいいのか解らない生徒たち。しかし、同時にこれからの事に期待も持っているようだった。それは、いつもそっけない翔も例外無く。
『お前たちに与えるスキルだが、何を手にするかはお前たち次第だ。なに、安心しろスキルは皆勇者と呼ばれるにふさわしいものばかりだ。それと、向こうには魔法があるからそれも使える様にしておく。』
『より詳しい事は向こうで覚えろ。では良い異世界での生活を送れることを祈っているぞ。』
今度は、空間全体が発光する。そして、体がふわりと浮くような感覚に陥る。しかし、何故か蒼冶だけはその感覚が消えて行く。
「おい、どうなってんだよ。はっ!小春!」
小春の手を離さない様に、蒼冶は手を強く握る。しかし、光はどんどん強くなり、やがて、小春の手は、蒼冶の手の中から、消えていった。
そして、山田たち六人は、強制的に異世界、ユリアスの飛ばされた。
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発光が止み、蒼冶が目を開けるとそこは思い描いたような異世界ではなく、先程の部屋のままだった。不思議に思っていると、また先程の声が聞こえた。
『フゥ~、あー疲れたー。やっぱり威圧感出すのはめんどくさいな~』
一瞬蒼冶は耳を疑ってしまった。確かに声は同じなのだが、余りにも雰囲気が違い過ぎたからだ。
「おい、お前。何故俺だけ召喚されない。」蒼冶がそう聞くと、彼女は
『あっ居ること忘れてた。』と小声で呟いた。自称女神にすら存在を忘れられる程に影が薄い事に蒼冶が嘆いていると、
コホンと咳払いをして彼女は話し出した。
『はい、実は蒼冶さんあなたには少々特殊な場所に降りてもらいたいのです。』
「特殊な場所?」蒼冶が聞き返すと
『はい、ですがその前により話を円滑に進めるため、これまでの事は忘れて下さい。』
蒼冶は面食らった。これまで聞いた事はなんだったのだろうと。
「で、その内容は。」
『はい、そもそも勇者とは魔王を倒す為に異世界から召喚されます。』
「ああ、そうだな。それくらいは、予想していた。」蒼冶は頷く。
『しかし、今回は皆さん同じ場所に転移しますが、本来はある程度バラけた方が効率が良いのです。そこで、皆さんの中で最も環境に適応しやすいであろう貴方を選ばせてもらいました。』
なるほど、と蒼冶は頷く。以外にまともな理由だ。
「それで、具体的には?」蒼冶が訪ねる。
『はい、まず前提として、貴方が降りる所は、巨大な結界の中で、そこではスキル、もとい我々神による加護が一切受けられません。魔法は使えますが。』
これには蒼冶も驚いた。異世界物では、半ば当たり前のスキルが使えない。それはつまり、魔法以外では何ら地球とかわりないのだから。
『その結界のせいで私たちは、一切その中を覗けません。中の様子が解らないため、どこに降りるかわかりません。そして、一度結界の中に入れば、例え魔王を倒しても、もう元に戻る事は出来ないでしょう。それは、例え結界の外へ出たとしてもです。それでも、貴方は行ってくれますか。』
姿は見えないが、彼女が本気だとわかる。蒼冶は目を閉じて考える。
元々あまり友人はいなかった。小さい時に両親が交通事故で亡くなり、ずっと親戚に預けられていた。考えてみると、別に元の世界にそこまで帰りたい訳でもなかった。ならばいっそ、異世界にいった方が良いのではないか?そして目をゆっくりと開き、
「分かった。その話受けよう。ただし、条件がある。さっきの話だと、その結界の外ならお前は干渉できるだよな。なら、小春を絶対に守れ。」
パァと、女神の表情が明るくなったのが分かった。
『あ、ありがとうございます。大丈夫です。コハルさんの身の安全を保証はしますので、安心してください。』
嬉しそうな声が響く。
『では、早速送り出します。一応向こうの言葉は脳にインプットしましたが、あくまでも一応です。それと、魔法も、最低限使える様にしてあります。おそらく人は居るでしょうが、言葉が解らなかったらその時はご自分で何とかしてください。』
「ああ、分かった。」
すると、先程のような光が蒼冶を包むみ翔は異世界、ユリアスに召喚された。
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『でも、やっぱり心配ね。よし、漆神。』
『どうした?姉様?』
何処からか声が聞こえてくる。
『私の残りエネルギーを全て使って、結界に穴を開けます。そこから貴女のコアを送り込むこで、結界の中で彼をサポートしてください。』
『ちょっとまって。そんなことしたら姉様のシステムが停止しちゃう!』
『確かにそうです。しかし、私は打てる手全てを打っておきたいのです。彼らを倒す為に。大丈夫です、私の防衛は、肆神にまかせます。』
『……わかった。それじゃあ私は準備してくるよ。姉様を気を付けて。』
『ええ、分かったわ。』
こうして、一秒足らずに話し合いは終わった。
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肌を刺すような冷たさを感じ、目を開く。その美しさに思わず息を呑む。眼下には一面雪で被われた山脈が広がり、日の光を反射して銀色に輝いている。空には地球のそれよりも一回り大きな月が一つ、浮かんでいる。幻想的な光景に蒼冶が見とれていると、フッと、影が辺りを覆い尽くした。そして、頭上で突然轟音が鳴り響く。驚いて上を見上げると20メートル程上空で二匹の生物が争っていた。その光景に蒼冶は絶句した。
それは、地球では絶対にあり得ない光景。十メートル程の赤いドラゴンが口から炎を吐き、五メートル程の白い狼が体の周りに造った氷の杭をそこに撃ち込む。刹那、二匹の間で大爆発が起こる。おそらく、水蒸気爆発だ。大量の氷が一瞬で蒸発したのだろう。その衝撃が蒼冶の体を地面に打ち付け、ドラゴンの炎の熱で周囲の雪を溶かす。何度もぶつかり、ときに避けドラゴンと狼は激しく戦う。
「くそ、何なんだよあれ!」
蒼冶はそこから逃げようと、必死に足を動かす。だが、酸素が足りず、思うように体が動かない。雪解け水に足を取られ、何度も転び体は傷だらけになりながら必死に逃げる。
だが、あのドラゴンたちが、蒼冶を気にしていないのは幸いだろう。翔の影の薄さが役にたった。
「うわっ」
雪解け水で足が滑り、体を岩肌に叩きつける。どうも右足首が痛い、足首を挫いてしまったようだ。
「くそ、こんな時に!」
なんとか立ち上がろうとするも、足に力が入らずうまく立てない。
突然、右腕の感覚が消えた。それに戸惑う蒼冶。無意識の内に右腕を見ると、そこには
「えっ⁉」
そこには右腕の影はなく、流れた血が池の様に溜まっていた。見ると、氷の杭が腕を引きちぎっていた。おそらく、ドラゴンが避けたものが、運悪く蒼冶の腕を貫いたのだろう。
血が足りず、徐々に薄れていく意識。激痛が走るも、すでに意識ははっきりしない。
「ああ、ここで死ぬのかな俺。せっかく異世界に来たのにこんなところで終わりかよ」
そこで、蒼冶は意識を手放した。
まだまだ続きます。
まだ出ませんが、アルファルドさんのイメージは巫女さん。