予言者の末裔 2
「久しぶり、歌留多」
「えっと・・・どちら様で?」
俺がいくら考えても彼女の存在は記憶にない。
こんな美少女がいたら覚えてるだろ普通!
健康そうな肌に赤っぽい茶髪、スレンダーな体をしていて身長も普通だが、かわいらしい外見をしていた。
「え?覚えてないの?私の事」
「え?あ・・・うん。」
「・・・最低」
「ごめんなさい許してくださいなんでもしますから!!」
土下座して謝った。まず俺の名前を知ってる時点で俺の知り合いだろう。彼女は「ん?」と言って後、すぐに咳ばらいをして話を続けた。
「私の名前は梨原 花蘭。貴方と同じクラスの転入生よ。」
「あ、ああ。俺は斬斎 歌留多・・・ってもう知ってるみたいだな。よろしく」
花蘭?どっかで聞いたことある名前だな・・・。
「で、梨原、なんか俺の思い出せそうな事とかないか?例えば、どこで会った~とか。」
「・・・中学校の頃、よく公園で・・・」
「・・・あ~、公園のあの短髪だった子か。思い出した」
簡単に思い出せた。中学一年生の頃、いじめられていた俺は学校が終わると家にまっすぐ帰宅せず、住宅街の入り組んだところにある大きめな公園でずっと泣いていた。そのとき、よく遊んだ女の子がいた。名前は知らなかったけど。
「なんかすぐ思い出したわね・・・。まぁいいわ」
そういうと彼女はくるりと後ろを向いて荷物を持ち、帰る準備をし始めた。
「あ、ちょっと待てよ。まだ礼もしてないんだ」
「いいの、気にしないで。私、用があるから。」
そういうと保健室の扉に手をかけた。
「あ、ありがとな!看護してくれて!助かった!」
「・・・どういたしまして」
彼女は何かにおびえているようだった。
「・・・いってしまいましたね」
会長が寂しげな表情を浮かべながら言った。
「歌留多さん、梨原さんって昔からあんな感じなのですか?」
「よくは覚えてないですけれど・・・もっと明るかったと思います」
ああ、彼女は僕にとってあこがれの存在。ヒーローだった。
「ではお気をつけて、さようなら」
会長は俺の帰路の途中までついてきてくれた。そこまで大きな怪我じゃないのに・・・。本当にいい生徒会長さんだ。僕も会長に手を振り、家に向かい始めた。
「今日は・・・充実してたかはわからないけど、濃い一日だったなぁ」
なんてつぶやきながら帰っているとふと後ろからの異様な視線に気が付いた。振り返るとそこには誰もいない。あるのは水で濡れたコンクリートの道だけだった。
「・・・誰かここで飲み物でもこぼしたのかな?」
おそらくそんなことだろうと思い、俺は改めて家に向かった。
「・・・彼は危険だねぇ。うん、危険だぁ♪」
廃れた教会の中で、水風船で遊んでいる水色の髪をした少女は呟く。
「何も知らないのにもう化身同士の鍔迫り合いに巻き込まれてるよぉ♪」
喜々として続ける。
「ま、化身の戦いで一番になるのは、この私だけどねっ」
そういうと彼女は水風船を地面に叩きつけた。すると水風船は割れ、中に入っていた水は四方八方に広がる。その水面に浮かび上がったのは一人の少年。
「化身を引き寄せる力でもあるのかねぇ。彼にはっ」
そういうと彼女は笑みを見せた。
「・・君の運勢を占ってあげましょう♡運勢は最悪ぅ。ラッキーアイテムはぁ、梨原 花蘭、って所かな♪ふひひっ」
少年を指さし笑う彼女は笑いながら水面にうつった歌留多を踏みにじるのであった。