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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第二章 異世界出発編
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2-10 管理人

恵が寝たからといって悠もハイお休みという訳には行かなかった。何処とも知れぬ異世界に居るのだ。何らかの敵性生物や、あるいは悪意ある人間がここを襲わないとも限らない。


「今日は寝ずに番をしておくか」


《ユウは明日も朝から動くんだから休んで。寝ている間の警戒は私がするわ》


そんな事を悠とレイラが相談しながら辿り着いたのはこの屋敷の主人用の寝室である。この場所は先ほど別れた恵に聞いて確認済みだった。


そしてその部屋のドアを開けた時、突然何者かの声が悠に向かって掛けられた。


《おかえりなさいませ、我がマスター


「何者だ」


悠は素早く部屋を見回して声の所在を探ったが、それらしい人影は見られなかった。


《不躾にお声を掛けて申し訳ありません。私はこの屋敷を管理している者です。ナナ様より人格を与えられた擬似生命体です》


声の発信源はベットの横に置いてある青い水晶球から聞こえて来ていた。


「屋敷の管理をしているなら、何故俺達に入って来た時に声を掛けなかったのだ?」


《それが・・・私はこの屋敷の事なら何でも分かりますが、この通り自ら移動は出来ません。ナナ様がここに置いて行かれましたので、誰かが来るのを待っていました。お恥ずかしい事です》


先ほど恵が部屋の近くまで来たのだが、部屋の中には入らなかったので発見が遅れてしまったらしい。


《ですから、屋敷にいらっしゃる時は、ご面倒かとは思いますが、私を携帯して頂けると助かります》


屋敷の事が居ながらに分かるのは便利かもしれないが、微妙に不便な作りだった。


「持ち運ぶには微妙に大きいな・・・」


《球状自体は変えられませんが、多少のサイズ変更は可能です。一番小さくてこのくらいです》


そう言って水晶球は握り拳大ほどのサイズから、ピンポン球くらいのサイズになって見せた。


「ふむ、それくらいなら携帯出来そうだな」


《ただ、サイズが縮むと声も小さくなりますので、無くさないで下さいね。探すのが大変かと》


やはり微妙に不便だった。


「ところで名は何と言うのだ?」


《私に名はありません。いかように呼んで頂いても構いません》


そう言われても名前などそう簡単に思い浮かぶ物でも無く、浮かんで来るのは誰かの名前ばかりだった。


「レイラ、何かいい名前は無いか?」


《ユウ、私は貴方の知恵袋では無いんですけど?》


「怒るなよ。・・・そうだな・・・では、色からの連想でお前の事は『アオイ』と呼ぼう」


《畏まりました。以後、私の事はアオイとお呼び下さい、我が主》


《よろしくね、アオイ》


《こちらこそよろしくお願いします、レイラ様》


《様は付けないでいいわよ》


《申し訳ありません。設定上、まだ融通が利きませんので、尊称は外せません。情報回路にラグが出てしまいます。学習して成長したら親しみを込めてそう呼ばせて頂きますので、しばらくはご勘弁願います》


《まだ自由意志っていう訳では無いのね?分かったわ》


急いで考えたにしてはいい名前かもしれない。恐らくナナ辺りが名付けたら球状だから『タマ』とでも名付けてしまう危惧があった。


「では早速で悪いが、葵、この屋敷に防御機構は存在するか?」


《はい、存在します。二種複合結界(物理、精神)に加え、視覚遮断効果があります。現在はオフになっていますが、展開しますか?》


「待て、エネルギーはどこから得ているのだ?」


《地下にバッテリーとなる施設が存在します。収納中や現界時の結界非展開時に大気より自動的に補充しております。結界の最大連続稼働時間は100時間です。この数値は他の設備を使わない場合の数値となりますので、ご了承下さい》


つまり結界だけ張った状態なら100時間展開しておけるという事だ。


「現在のエネルギーの残量は?」


《お湯を沸かして照明を使用した程度ですので、ほぼ損耗はありません。その程度なら回復量が上回ります》


「そうか、では強度はどの程度だ?」


《我が主に分かりやすくお伝えするなら、Ⅴクラスのドラゴンの攻撃なら完全に遮断出来ます》


それは中々強力な結界だと言えた。破壊には竜器使いでもてこずるかもしれない。一応の安全はこれで確保されたと見るべきだろう。


「ならば葵、結界を展開してくれ。切る時はまた伝えよう」


《了解しました、二種複合結界を展開します》


葵の了承と共に、屋敷を中心に結界が展開された。そしてその結界に包まれた屋敷は外からは見えなくなった。


《これで外からは遠目には発見は困難でしょう。我が主が外から帰られる時に見つからないのは困りますので、レイラ様は座標を確認してからお出かけ下さい》


《ええ、気をつける事にしておくわ》


「これで後は周囲の警戒網があればいいのだが・・・」


《申し訳ありません、今現在はその様な機構はございません》


葵の手の及ぶ範囲は屋敷の中だけだ。そこまで望むのも贅沢だと割り切るしかない。


「攻撃の為の機構はあるか?」


《当屋敷はあくまで安全に暮らす為のものです。ですので現状ではその様な機構もございません》


「了解した。後の施設の事は後々見回りながら聞くとしよう。ご苦労だった」


《ありがとうございます。もうお休みになりますか?》


「ああ、明日も朝から動かねばならんからな。寝るとしよう」


《了解しました。おやすみなさい、我が主、レイラ様》


「ええ、おやすみなさい、ユウ、アオイ」


「ああ、二人ともおやすみ」


悠に寝る前に挨拶をする相手が一人増えたのだった。

家事サポートキャラの葵です。


最初はそんなに出来る事はありませんし不便ですが、徐々に機能は拡大される予定。

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