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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第二章 異世界出発編
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2-8 見渡す限りに屑ばかり8

残されたカザエルとサリエルはその姿を呆然と見送った。色々な出来事が急に立て続けに起こって心身ともに疲労していたのだ。


「サリエル、済まなかった・・・」


カザエルは力無く項垂れて娘に謝罪した。許されるはずも無いが、それでも言わずにはいられなかったのだ。


そんなカザエルにサリエルも首を振る。


「謝るのは私にではありません、お父様。私も、お父様も、その召喚されて来た子供達にこそ謝らなければならないでしょう。もっとも、許してくれるなどとは思えませんが・・・」


「そうか・・・そうだな・・・余はなんと愚かな事をしたものか・・・」


カザエルとて、最初はこの様な事には躊躇していたのだ。しかし、使い減りしない、自分の言う事に逆らわない強大な戦力はカザエルの目を眩ませた。いつしか罪悪感を感じる事も無く、戦場でその命を散らせる事になんの躊躇いも持たなくなっていった。


「それでも、謝らなければなりません。私達がその業を背負って行くしかないのですから」


「済まん。余のせいでお前にまでこの様な事を・・・」


「いいえお父様。あのカンザキと名乗った人は何一つ間違った事は仰っておりませんでした。私は自分がこの様に幸せなら、他の人もきっとそうに違いないと思い込んでいたのです。何も学ぼうとも、知ろうともせずに・・・それは確かに私の罪です。王族として許される事ではありません」


サリエルは悠の言葉をしっかりと受け止めていた。三月などあっという間に過ぎるだろう。それまでに自分はこれまで見ようともしなかった物を知らなければならない。悠に少しでもマシになった自分を見せなければならないのだ。


「一緒に頑張りましょう、お父様。生きている限り、償い続ける事はきっと出来ます」


「サリエル・・・」


温室の花として育てたサリエルだったが、その芯はカザエルの思いを越えて健やかに育った様だ。その事はカザエルの心を僅かばかり慰めた。


「そうだな、共に頑張ろう。余も今までサリエルには告げなかった事も全て話す。サリエル、お前はそれを知っても尚、良き王族となって国を支えてくれ・・・」


「はい、お父様!」


二人は初めて全てを曝け出して、今本当の絆を手に入れたのだった。








「だ、ダンナぁ!!ちょ、ちょっと速度を落として下さい!!ダンナ!!!」


悠は100キロ程度の速度でノースハイア城から離れて行っていた。空を飛ぶのもその様な速度を体感するのも初めてだったベロウは流石に耐えかねて悠へと懇願したのだった。


「ふむ、頃合か」


悠は近隣に人気の無い、少し開けた場所に降り立つと、ベロウから手を放した。ベロウは地面にべちゃっと落下すると恨みがましそうに悠を見・・・ようとして視線を逸らせた。今晩の出来事を思い出して恐ろしくなったのだ。


悠は着装を解くと、再びレイラに依頼して、『虚数拠点イマジナリースペース』を展開した。


「今日は休むぞ。明日の朝は戦場に行く。案内は任せるからな」


それだけベロウに言うと、返答も聞かずに悠は屋敷の中へと入っていった。


一瞬、この場から逃げ出そうかと思ったベロウだったが、その場合の悠の怒りを思い、諦めてトボトボと屋敷の中へと入っていったのだった。








屋敷の居間には恵が待っていた。


「あ!悠さん、お帰りなさいませ!!」


「ああ、ただいま。今帰った」


そう言えば、家に帰ってただいまなどと言うのはいつぞや振りだろうかと悠が考えていると、恵が悠にお茶の用意をしつつ尋ねて来た。


「それで、お話し合いはどうでしたか?」


「ああ、前非を悔いてこれからはまともな国政をする事を『了承させて』来た。少しはマシになるだろう」


「そうですか、お疲れ様です」


恵は素直に悠を労い、お茶を差し出してきた。


「ここの厨房、結構凄いですよ。置いておくだけでお湯を沸かす事が出来る道具とかもありました。このお湯はそこで沸かしましたから」


「そうか・・・ん、美味い。俺の好みだ」


「えへへ、前に悠さんが家に来た時に薄くて熱いのがお好みだと聞いていましたので」


「ありがとう、俺の好みを覚えていてくれたのだな。恵は良き妻になりそうだ」


「えっ!?あっ、あの・・・は、はい!ふ、不束者ですが・・・」


何かを勘違いしだした恵だったが、悠は先に色々聞かなければならない事があるので、それを尋ねた。


「それで恵、子供達はもう眠ったか?」


「え?、あ、はい。簡単な食事だけ済ませたら皆気を張っていたせいかすぐに。仕方無いですね、まだ皆小さいんですもの」


「そうか。怪我をしている子達はどうだ?」


「私は医者ではないですけど、正直、とてもいい状態だとは思えません。何か治療をしないと・・・」


それ以降の言葉を濁して恵は答えた。恵とて戦時に生まれた娘である。同年代で平和な場所に暮らしてきた男などより余程肝は据わっていたし、悲惨な人間も多く見てきたのだ。


「分かった、それは俺がなんとかしよう。案内してくれ」


「分かりました、付いてきて下さい」


そう言って悠は残ったお茶を飲み干すと、恵について子供達の元へと歩いて行ったのだった。

ちょっと息抜き回。また次から重いので・・・

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