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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第二章 異世界出発編
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2-5 見渡す限りに屑ばかり5

その後も時にはやり過ごし、また時にはベロウに騙させて、悠達一行は城の中を進んで行った。どうしても回避出来ない場合は・・・悠に『物理的に』眠らせられた。子供達の様に、レイラに優しく意識を落として貰う様な手間を掛けるほど、悠は甘くは無かったのだ。


一階に辿り着いた一行は正門から出るのは困難と見て、厨房の搬入口から城の裏庭へと脱出していた。裏庭と言えど、一国の城だけあって、その広さは屋敷を建てられるほどに広い。悠はそこに『虚数拠点イマジナリースペース』を現界させるべく、レイラに声を掛けた。


「レイラ、ここなら大丈夫だろう。拠点を出してくれ」


《分かったわ。『虚数拠点』展開!》


レイラの声と共に、目の前の空間が歪んだかと思うと、次の瞬間には今まで無かった屋敷が裏庭に現れていた。子供達もベロウもその光景に目を白黒させているが、恵と明だけは悠の強さを知っているので誇らしそうにはしていても、そんなに驚いては居なかった。悠ならこのくらいの事はやりそうだと思ったのだが、これは流石に買い被りというものであった。『虚数拠点』はナナからの譲渡品であるので、悠とて扱える様になったのはまだ今日の話である。


「よし、子供達は中に入ってくれ。それと、貴様は中に子供達を置いたら俺とここに戻って来い」


子供達にはなるべく優しく言い、ベロウにはまるで感情のこもらない声音で命令して、悠達は屋敷の中へと入った。








屋敷の中は当然の事だが誰もおらず、子供達全員を受け入れてもまだまだ余裕がある程度の許容量があった。悠は子供達に一人一部屋を選ばせて休ませる事にし、恵に子供達の監督を任せてベロウと共に玄関へと戻っていった。


「恵、子供達をしばらくの間見ていてくれ。あと、この屋敷の中は俺もまだ見回っていないのでな。危険は無いと思うが、厨房や風呂があるのかどうかも分からん。もし腹が減っている様なら何か食ってもいいし、風呂があれば入ってもいい。頼めるか?」


「分かりました。でも、悠さんはどちらに?」


「俺は・・・この国の上の奴等に少々話がある。何、そう時間は取らん。釘を刺すだけだからな・・・」


その声にベロウの顔が強張った。こいつは国家反逆罪を犯すつもりだ。もう今更な感は拭えないが、それでも直接王族に危害を加えたとなれば、それはこれまでやって来た事の比では無い。必ず指名手配されて、一生どこに居ても追い回され、そして殺されるだろう。


「お、俺も行くんですか?」


「貴様には出てきた奴の面通しをして貰う。顔を隠しても構わんぞ。まぁ、無駄だと思うがな」


その言葉にベロウは泣きたい気持ちになって顔を顰めた。もう生きている兵士からベロウが賊の手引きをした事はばれているかもしれない。顔を隠そうと、ベロウは裏切ったと思われているだろう。


そんなベロウを一顧だにせず、悠は玄関へ向かって行き、ベロウは最早全てを諦めて悠へと付いて行くのだった。








玄関から外に出ると、城内は俄かに騒がしくなり始めていた。生きている兵士が覚醒したか、巡回の兵士が倒れている兵士を見つけたかしたのだろう。裏庭に向かってくる足音もいくつか聞こえてきていた。


「レイラ、仕舞ってくれ」


《了解》


短いやり取りでレイラは悠の言葉を理解すると、『虚数拠点』を再び亜空間に収容した。


「それと、少し派手にやる。着装だ」


《ええ、分かったわ》


レイラの了解の言葉と共に、悠を赤い靄が包んだかと思うと、瞬き一つした後には、この世界に初めて竜騎士が出現していた。


ベロウは目の前で着装した悠に目を白黒させているが、兜を下ろして顔を隠した悠に襟首を掴まれると、悠はレイラに飛翔を促し、ベロウに正面はどちらかを尋ねた。


「あ、アンタ、その姿は・・・それに、一体何を・・・」


「貴様は俺の質問に答えていればいい。それとも・・・用済みと判断されたいか?」


「めめめ滅相も無い!!よ、喜んでご協力させて頂きますっ!!」


あっさり折れたベロウは裏庭とは正反対の方が正門である事を告げ、悠はその言葉に従って宙に浮かぶと、そのまま飛翔して城の正面へと向かったのだった。








途中で何人かの兵士が悠達の姿を見つけたが、空に居る相手にどうする事も出来ず、ただ地を這って懸命に追いかけた。


やがて正門に辿り着くと、悠は門番をしている兵士の前に降り立ち、ベロウを後ろに従えて歩き出した。


「レイラしばらく『竜のトゥルーサイト』を切らない様にしていてくれ」


《ええ、やる気ね?ユウ》


「ああ、この国の上層部他を見極める。願わくば更正可能であればいいのだが・・・彼らの為にもな。最低でも、召喚によって子供達を弄んだ罪は償って貰わねばならん。そして、何時の時も・・・罪は、罰をもって贖うものだ」


そうのたまう悠は既に戦場に出る時の、剣呑な気配を身に纏っている。誰何しようとした門番が、思わず一歩後退し、それでも職務としてやらない訳にはいかずに悠へと槍を突き付けて怒鳴りつけた。


「き、貴様何者だ!!ここがノースハイア城と知っての狼藉かっ!!」


「当然、知っての狼藉だ。邪魔だからそこをどけ」


門番に槍を向けられようとも、悠の口調に何の変化も無い。高天原の住人であれば、その光景を見たとしたら笑いを誘われた事だろう。竜騎士の中の竜騎士、神崎 悠に竜器でも無い槍など向けても、爪楊枝以下の役にも立たないだろうと。


「おのれぇぇ、大口を叩きおって!!この槍のさびっ!!」


この槍の錆にしてくれる、という口上は最後まで発する事が出来なかった。瞬間移動の様な悠の踏み込みからのアッパーで槍ごと門番は吹き飛ばされてしまったので。


「口上が長い。賊と見たならさっさと動け。愚図が」


悠は殴り飛ばす前にこの門番のカルマは確認済みである。当然の様に赤かった。


そして悠は倒れて痙攣する門番の首にかかった笛を取り上げると、そのまま大きく息を吸い、そして勢いよく笛を鳴り響かせた。


「あ、アンタ何を・・・」


「一々一人ずつ相手をしていてもラチがあかん。さっさと上役に出てきて貰わんとな。それと・・・」


そう言って悠は閉まっている門に向き直ると、体を屈め、そこから一気に門に飛びかかって、飛び蹴りを見舞った。


バガァァンという轟音と共に、破城槌の攻撃にも耐えられる城門は閂を一撃でへし折られて、城内へと凄まじい勢いで開ききった。


「な、なんだ!!!」


「おい!どこかが攻めて来たのかっ!?」


「馬鹿な、一撃で門を破るなど有り得ん!!!」


そこにはもう既に多数の兵士がおり、突然の状況に右往左往している。


「錬度の低い兵士共だな・・・」


《ユウ、仕方無いわよ。こんな国じゃ兵士の質も知れているわ。・・・それにしても・・・》


「ああ、見渡す限りに・・・屑しかおらんな」


呆れ気味に言ったレイラと悠の言葉通り、城の庭に集結していた兵士達は色の濃淡はあれど、一人も欠ける事無く赤く染まっている。


「ナナが言った以上の酷さだな・・・」


ナナは悪人が多い、とは言ったが、悪人しか居ないとは言わなかった。きっと、特にこの国が酷いのだろう。


兵士達は悠を遠巻きに取り巻いたまま動こうとはしなかった。今の城門破壊に度肝を抜かれたのもあるが、その様な相手と戦って怪我をしたくないと言うのが本音だ。


状況が膠着してしばらく経った時、不意に城の方から怒声が上がった。









「貴様等何をしている!!!さっさとその賊を取り押さえろ!!!」









そこに現れた人物こそ、ノースハイア王国第24代国王、カザエル・ミーニッツ・ノースハイアその人であった。

王様登場。ぼかすまでも無く屑ですよ?

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