第八章 あらすじ
ノースハイアに集結するミーノス軍。数的優位と拙速を説くバローにジェラルドは敵の妨害を懸念するが、理路整然とした作戦に納得を示す。しかし、作戦の大詰めである大聖堂突入メンバーに選ばれなかった事を不服としてベルトルーゼが悠との手合わせを所望した。
ベルトルーゼの実力を測る為にそれを了承した悠は、かねてから気になっていたベルトルーゼの才能や能力を尋ねるが、ベルトルーゼは魔力を感知出来ず、あるのは確かだが良く知らないという不透明な答えに終わった。
そしてぶつかる両者。ベルトルーゼはリーンに鍛えられて実力を増しており、悠にその力を示す。結局はベルトルーゼを下した悠だったが、装備で補えば死にはしない程度の実力があると認め、同行を許可した。
医務室に運ばれ治療を受けるベルトルーゼは兜を脱ぎ、その顔に走る傷を再び悠に晒す。
医務室を後にした悠はジェラルドからベルトルーゼの幼い頃の話を聞き、それが『狂戦士』という才能の暴走が原因である事を知る。
ジェラルドは心の底からベルトルーゼを愛していたが、それ故に踏み込めない心情を察した悠はジェラルドを挑発しその本音を引き出す。しかしそれを当のベルトルーゼに聞かれ、ジェラルドは激しく動揺した。
逃げ口上を許さない悠の前でジェラルドは積年の想いを吐き出し、ベルトルーゼは激しく詰りながらも自分の気持ちに整理を付ける為に時間を欲したのだった。
悠達は冒険者ギルドを訪れ、途中で会ったギャランの腕前を確認して試作品の武器を託し戦争に備えさせ、翌日の夜にはノワール領の主要都市ソリューシャに到達する。そこで避難民に紛れて連合軍に毒を盛ろうと画策していた聖神教徒を捕らえ、その加護を叫ぶ者達を処刑する事で兵士達の聖神教への畏れを払拭した。
一方、フォロスゼータのガルファも自身の『天使』の力を使って強化を図り、動けないバルバドスを殺害する事で『天使』を殺す方が効率が良いと気付き、他の『天使』の殺害を計画する。
連合軍はソリューシャでアグニエルとアライアット軍を加え、ダーリングベル領を通り過ぎ、内乱状態のイレルファン領マーレを聖神教の手から解放した。
悩めるギャランやジオに人間性を失わないように諭し、メルクカッツェ領を目指しつつも、かねてから計画していた敵の兵糧を焼く為にフォロスゼータに子供らとハリハリを伴って侵入する。
首尾良く兵糧を焼き、聖神教とノルツァー家の間にバーナードの協力で亀裂を生じさせた悠達はメルクカッツェ領のヘネティアに到達、そこで待ち受けていたゾアントの娘ルビナンテと戦いこれを捕虜とした。
反抗的な態度を崩さないルビナンテだったが、智樹の誠実な行動と、これまで知らなかった『異邦人』の真実を知り、悠達に協力を約束した。
ヘネティアを流民達の避難場所として解放して貰う事になり、ルビナンテは智樹と連絡役のアルトを伴ってヘネティアに帰還するが、街はメルクカッツェ家の家令兼参謀のセロニアスに押さえられており、3人は命を狙われる。
しかし、セロニアスが実質的な『異邦人』の仇と知った智樹は自ら戦う事を決意し、初めて人間相手に能力を振るい圧倒的な攻撃力でセロニアスを殺害する。見事に仲間の仇を取った智樹だったが、力による暴虐で智樹の心が晴れる事は無く、悠が自分達を人殺しから遠ざけて来た意味を悟るのだった。
智樹がヘネティアを解放し流民受け入れの準備を整えている頃、連合軍もフォロスゼータに到達。一応の降伏勧告を行うが決裂し、明くる日の決戦に備える。
遂に始まるフォロスゼータ攻防戦。それは『異邦人』の子供らの攻撃を皮切りに連合軍が一方的に『生命結界』に攻撃し続けるという異様な形で推移した。
一見無駄にも見える攻撃だったが2時間を過ぎる頃、アライアット軍が異常を来す。次々と倒れゆくアライアット兵。『生命結界』を攻撃し続けたのは雪人が連合軍に授けた作戦であり、安全に生命力を削り取るという発想に基づくものであった。
一般兵を殲滅した連合軍はバーナード、パトリシアを保護すると決戦の地である聖神教大聖堂に悠達を送り込む。
そこで悠達を待ち受けていたのは教主シルヴェスタに時間稼ぎを命じられたガルファと『天使』達であった。
大聖堂の地下で『天使』達を次々と下す悠達だったが、隙を突いて戦闘不能に陥った『天使』達を『第三天使』を除いてガルファに殺されてしまう。
ガルファは更に強化された力をもって『第四天使』と教主シルヴェスタの殺害を目論み大礼拝堂へ踏み込んだが、そこは虐殺場と化していた。
シルヴェスタから『天使』の真実を告げられ、真の『第一天使』の権能により体の自由を奪われたガルファは無理矢理バローと戦わされ、瀕死の重傷を負った。
『天使の種』により『天使』達を統合し『大天使』に進化させて悠と対峙するシルヴェスタ。だが、他ならぬシルヴェスタが『大天使』の弱点であると悠に見抜かれ、シルヴェスタもまた重体に陥った。
『大天使』は司令塔であるシルヴェスタが死に瀕している事を感知するとシルヴェスタの肉体ごと『天使の種』を取り込み、完全体へと進化する。
自意識を発生させ再度悠と対峙する『大天使』だったが、その時素体となっていたマッディの意識が覚醒する。『殺戮人形』になりかけていたマッディは肉体と魂を失っていたが、精神体だけの存在として『大天使』の中に残存していたのだった。
悠は戦いながらマッディを『大天使』の中から引き上げる事を試み、スフィーロの力も借りてマッディを再び現世に呼び戻す事に成功すると、『竜騎士』の力で大聖堂ごと『大天使』を塵に帰し、フォロスゼータを聖神教の手から奪還したのだった。
アライアットに残る最後の火種であるノルツァー公爵家を恭順させる為に主要都市テルニラに歩を進める連合軍だったが、当のテルニラは『大天使』から産まれた『偽天使』により交戦状態にあり、その尖兵である『死兵』に視点が向いている内に悠とハリハリはテルニラ内部に侵入、トロイア照会のトロイアとネネの協力を得てテルニラの住民や兵士を逃す為に奔走した。
親衛隊の活躍で辛くも『偽天使』を退けたデミトリーであったが、それと同時に現れた連合軍とバーナードの姿に激しく動揺する。交渉により罪を逃れようとするデミトリーとイスカリオであったが、バーナードは以前作っておいたデミトリーとイスカリオの罷免状により彼らの権力を奪い取った。
デミトリーとバーナードは最早これまでとバーナードや悠達を抹殺せんと行動を開始するが、親衛隊長モーンドの裏切りによってイスカリオは死亡、デミトリーは逃亡する。
結局デミトリーは復活を遂げていた『偽天使』の手に掛かって殺され、悠はデミトリーごと『偽天使』を屠る事で遂に反抗勢力は完全に瓦解した。
マッディをマルコと改名しバーナードに仕えさせ、その報はメルクカッツェ領ヘネティアにも伝えられたが、それはルビナンテにとって智樹との別れの時が来た事を意味していた。
アルトはルビナンテの心情を思い、蒼凪に相談して助言を得るとルビナンテにその言葉を伝え、ルビナンテも覚悟を決めて智樹に自分の想いを告白した。
智樹は大いに悩んだが、自分もいつしかルビナンテに惹かれていたのだと気付きルビナンテの想いを受け止め再会を誓った。
一方、ノルツァー家の新当主に就任したパトリオは悠の協力を経て家臣団を再編しヒューゴーを筆頭にトロイアやネネを取り込んで新体制を作り出す。クリストファーも引き込みたいと欲するパトリオだったが、バーナードもまた国軍の長にクリストファーを求め、バーナードの説得でパトリオはテルニラから人材を探す事を決め、クリストファーと握手をして別れる事となった。
後継者に思い悩むバーナードと裏腹に悠の下で修練を積んだオリビアは避難民に請われてフォロスゼータに赴く事を決意する。悠はオリビアの喉を治療し、オリビアは今、自分の道を歩き出したのだった。
かくして三国鼎立は成立し、人間社会から大きな戦の種は消え去った。
しかし、悠の目は既に新たな戦場、ドラゴンズクレイドルへと向けられていたのである……。
次からは第九章、『龍巣強襲編』が始まりまする。




