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1-55 出発前日3

「ユウさん、男ですね」


「陛下の為だ、悠には犠牲になって貰おう」


既に楽しむ事に決めたらしい朱理と雪人と違い、ナナナと匠はまだ常識があるので心配はしていたが、志津香の為と割り切る事にした。手伝ってはあげないらしい。


「タクミ、今だから言うんだけど、実はユウさんがどうしてもダメだったら、次点の候補はタクミだったんだよ」


「俺が? 何故だ?」


「実力、人格、これまでの人生経験を考えると当然じゃない? ユキヒトとマコトは戦闘能力に不安があるし、シュリはタクミよりも防御的だし、ジョウは・・・まぁ、言わなくても分かるよね?」


「それはつまり・・・消去法では無いか?」


「悪く捉えないで欲しいな。逆に考えてよ。ユウさんが居なかったらタクミにお願いしていたんだから」


「本当は俺が行くのが誰にとっても幸せだったんだろうが・・・悠は俺では最早相手にはならんからな」


「ユウさんの強さは普通じゃないよ・・・現時点で、おそらく私はおろかナナ様よりも強いと思う」


「む、そこまでか・・・」


考え込む匠に、ナナナは真剣な目を向けて尋ねた。


「ユウさん、強くなる為に・・・時間を弄ったね?」


「! 何故・・・いや、ナナナ殿は神であったな。気付いて当然か」


悠の強さはその年齢に見合わない強さではない。人間に見合わない強さなのだ。であればそこに何らかの原因があると推察するのは難しい話では無い。


「うん。でも責めている訳では無いの。ただ・・・悲しいなって」


「・・・」


匠にはそれに答える言葉は無かった。安易な同意は悠に失礼であるし、なにより自分が不甲斐無いと感じていたからだ。


《ナナナ殿、その事にはあまり触れんでやってくれんかのぅ。ユウは決して他の人間をレイラの個有能力の『竜ノ微睡オーバードーズ』に巻き込もうとはせんかった。これはタクミしか知らん事なのじゃ》


その能力を悠から聞いた匠は、当然の事だが自分にも施して貰おうと考えた。しかし悠の返答は否で、決して口外しないようにと念を押されてしまった。


《レイラも反対した。もっともレイラは悠自身に対しても反対したがの。人が人でない時間を生きるというのは・・・辛いものなのじゃよ。ワシもユウがどれだけの時間、時間停止空間で修業したかは分からん。だが、あの精神力を見れば、それは10年や20年では決して無かろう・・・》


悠の強さの秘密はここにあった。身体の時間を止める空間内での修行が悠に他の者と隔絶した強さを与えるに至ったのだ。しかし、当然リスクはあった。


《体の老いは防げても、精神は完全に止める事は出来ん。あれは基本的に物質体マテリアルに作用する技じゃからの。ユウは人として最も感情豊かな時間をあの空間で消費し尽くしたはずじゃ・・・惨いのぅ》


「うん・・・だから、悲しいね」


「ナナナ殿、この事はナナナ殿の心の中に留めておいてくれんか? 俺はもう、これ以上悠に辛い思いをさせたくはないのだよ」


「分かった。誰にも言わないよ・・・と言っても、他の面倒事を持ってきた私が言える義理じゃ無いんだけどね・・・」


「別にナナナ殿が悪い訳ではあるまい。あまり気に病まん事だ。世の中には分かっていてもままならない事は多々あるのだからな。この俺とて、結局は悠に全てを押しつけてしまった。やれ教官だ新竜将だと言われても、その事は何の慰めにもならんさ」


匠は教官の経験からナナナを慰めた。世の中にはどうしようも無い事は沢山ある。むしろ、この世界ではどうしようも無い事ばかりだったのだ。


「悠は、本当は俺よりもう遥かに年上だろう。それでもあいつは俺を教官と呼んでくれる。俺はそれに少しでも応えてやりたいのだ。教官として、男として、何より一人の人間として、な」


「ユウさんは大変な人生を歩んで来たけど、周りの人には恵まれたみたいだね」


「ふ・・・逆に励まさせているようでは、俺もまだまだだな」


そう言って匠とナナナは微笑み合ったのだった。







その頃、遠くでそれを見ていた雪人と朱理の会話では、


「おい、西城、防人教官が(見た目)少女といい雰囲気になっているぞ。俺達は祝福すべきなのか?」


「防人教官、浮いた話が無いと思ったら、年下趣味だったのですか・・・真田先輩、防人教官につける副官はなるべく幼い・・・もとい、若い子に出来ますか?」


「・・・難しいな、教官の好みに合う年頃と言えば、まだ軍学生の時期だからな・・・ハッ、まさか、教官を歴任しているのもその年頃の子達を愛でる為ではっ!」


「十分にあり得る事ですね・・・私も当時はそのように慈しまれていたのでしょうか・・・」


「うむ、俺も教官には世話になった。ここいらで恩を返しておくのも良かろう」


匠にロリコン疑惑が掛かっていた。







後日、戦闘竜将室。


「本官がこれより一月の間、防人竜将の副官をさせて頂きます。古賀こが 紗里奈さりな軍曹待遇でありますっ! 15歳です!」


「ああ、よろしく頼む・・・」


防人の副官は軍学生の持ち回りで担当される事になっていた。それも何故か少女ばかりだ。


雪人が言うには「これから軍に入る若者に上の者の仕事を見せる為」との事らしい。平和になったからこそ出来る事ではあったが、何か腑に落ちない物を感じる匠だった。

悠の強さの秘密が垣間見える回でした。


そんな真面目な話をしているのに、約2名ケシカラン奴らが居ますね・・・

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