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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第七章(前) 下克上編
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7α-59 合流2

昼食を済ませた悠はノースハイアに行く前にハリハリとシュルツに先ほどの一件を話して意見を聞いた。


「ベルトルーゼ殿は相変わらずですねぇ。あれだけユウ殿に扱かれても諦めない精神力は賞賛に値すると思いますが」


「しかし師がお忙しいなら拙者らの中に槍を教えられる者はおりません。いっそアイオーンにでも習う方が良かろうかと思いますが、フェルゼンのギルド長であるアイオーンを気軽に連れ出す訳にもいきませんな・・・」


「ふむ、槍ですか・・・」


シュルツの言葉を聞いたハリハリは何事かを考え、やがてニヤリと笑みを浮かべた。


「良い事を思い付きましたよ。ユウ殿、ここはリーン殿に行って貰っては如何でしょう?」



「リーンに? ・・・いや、そうか、俺とした事がリーンの事を忘れていたな」


「確かに、リーンは既に槍を扱わせればそれこそアイオーンくらいしか右に出る者はおりませんな。技量も才も抜きん出たものがあります」


「それにリーン殿はここを出たら独り立ちするつもりなのですから、今の内に国に伝手を作っておくのは悪くないと思いますよ? ユウ殿の紹介と言えば無碍には扱われないでしょうし、今回は戦争なのですから子供達に出番はありません。ここは一つ社会勉強として送り出してみては?」


ハリハリの提案は悠の思考の外からもたらされたものであった。リーンの槍の才は悠も認める所であるが、いつの間にか保護する子供達に紛れて同一視していた為に被保護者という意識が強かったのだ。魔法無しの試合であればリーンは子供達の中ではトップクラスの実力者なのである。


「リーンが受けてくれるならば俺に異論は無い。そろそろ社会と関わりを持つのもいいだろう。生半可な者ならリーンならば退けられるだろうし、性格的に人と衝突する事もあまりなかろう。期間も短いし、試すには都合がいいな」


「ついでにベルトルーゼ殿とジェラルド殿にはカロン殿の槍を手土産に持って行けばよろしいかと。後はユウ殿が文を認めて持たせれば大丈夫でしょう。サイサリス殿が幾らか鱗を融通してくれる様になりましたし、そろそろ信頼出来る国の上層部には龍鉄製品を渡して強化を図っても良いと思います」


これまでの研究や装備品の充実を行ってきた事で既に龍鱗は底をつき始めていたが、そこに新に加わったサイサリスがある程度なら供給しても構わないと申し出てくれた事で龍鱗の在庫に不安は無くなったのである。


そんな経緯の結果、悠の願いとハリハリの口車に乗せられてリーンはミーノスに残る事になり、悠はノースハイアへ向けて飛び立ったのだった。




北へ北へと飛ぶにつれて段々と眼下の景色に白いものが混じり始め、太陽の光を浴びてキラキラと煌めいていた。空気も冬らしく冷たく澄み渡り、気温も上空はとっくに氷点下となっている。


《流石にこっちは寒いみたいね。防寒具を用意しておいて正解だったわ》


「ああ、もうしばらく進んだら徒歩に切り替えるぞ。まずは単なる冒険者として街の様子を見てみたい。まずは取り繕われる前に確かめねばな」


悠が言っているのはノースハイアの内情についてである。悠が居る時だけ取り繕われては意味が無いので、事前に街の様子を探ろうと考えたのだった。


《そうね、幸い街道は除雪されてるみたいだし、人目の無い場所で降りましょ》


ノースハイアは大国というだけあり、冬のこの時期でもそれなりに人の行き来はあるようだ。今も遥か眼下には旅人や商人の馬車の姿が散見されていた。


悠はノースハイアの街に近く、適度に人が居ない場所に降下して変身を解いた。


「さて、街まで軽く走るか。夕暮れ時にはバローの領地に行かねばならんのだからな」



《あんまり本気出しちゃダメよ? ミーノスならともかく、この辺の人はユウを見慣れてないんだから》


馬より速い悠が本気で走れば新種の魔物モンスターと勘違いされかねないからこその忠告である。


かなり速度を抑えて(それでも一般的な冒険者より相当速いが)悠はノースハイアの街へとひた走ったのだった。




「う~さむっ、生まれも育ちもノースハイアだが、この季節の寒さだけはいつになってもたまらんぜ」


「ボヤくなよ、今日は雪が吹雪いてないだけマシな方さ。一日中除雪してる日なんか、俺は門番なのか除雪作業員なのか分からなくなるもんな」


「それでも動いてる方がオレは気が紛れて好きだがね。体も暖まるし、暇潰しにもなるからな」


「おいおい、仕事を暇潰しなんて言ってたら隊長にどやされるぜ?」


いくらノースハイアが大国と言えど、これだけの積雪と寒波が押し寄せればその人の行き来は当然の如く減少し、中には暇を持て余す者も出て来るのであった。


それでもこれまでのノースハイアの兵士から考えれば各段に勤務態度は向上していると言えた。以前は下級の兵士だけに仕事を押し付けて他の者は詰め所でぬくぬくと過ごすというのが当たり前になっていたからだ。


そんな風に時間を潰していた2人の視界の遥か遠くに人間らしき黒い点が浮かんだのはそんな時であった。


「お? この季節に一人旅たぁ気合い入ってんな」


「バカだろ? こんな季節に一人旅なんて・・・ヤケに速いな?」


街近辺の街道は敵が軍事利用する事を考えて真っ直ぐに敷かれておらず、わざと曲げてあるのだが、そのせいで遠くに見える人影が全力疾走しているのが丸分かりなのである。


「別に魔物に追われてるって訳じゃ無さそうだが・・・ようやく街が見えて興奮しちまったのかもな。多分ありゃ冒険者だ。しかもランクも低いんだろうな」


「街が見えた途端に走り出しちまうくらいだからな、確かにランクは低そうだ。精々優しくしてやろうぜ?」


生温かい笑みを交わす門番達が見守る中、程なくその人影――悠が門に到達した。


その時には門番は自分達の認識を改めない訳にはいかなかった。


(お、おい!! どこが低ランクの冒険者だよ!! 明らかにタダモンじゃねぇぞ!!)


(見れば分かるっての!! お前だって否定しなかったじゃないか!!)


180センチを超える立派な体躯は服に包まれていても鍛え込まれているのが伝わってくるし、手足の装備品はどう見ても安物とは思えない光沢を放っている。何よりその体から発せられる気配が尋常ではないのだ。どこかの国の将軍だと言われればなるほどと信じてしまいそうであった。


門番達は声を出す事も出来ずに固まっていたが、悠はそれに構わずに歩み寄っていった。当然であるが汗一つどころか呼吸一つ乱れは無い。


「街に入りたいのだが、君らに身分証を提示すれば宜しいのか?」


「あ、ああ、ご、ご提示願います」


予想を裏切らぬ渋く響く声に門番は弾かれた様に反応して頷いた。そして悠が懐から取り出した身分証として使っている冒険者証を受け取り怪訝な思いに顔を顰めた。


「・・・なんだ、いつの間に冒険者証はこんな高級品になったんだよ? こんなの見た事ねぇぞ?」


訝しげに悠の冒険者証を観察している門番だったが、もう一人が噂にしか聞いた事の無い冒険者証の存在に気付いて顔を蒼白にした。


「・・・魔銀ミスリル製で魔金グラリルの装飾・・・ま、まさか!?」


「あっ!?」


その正体に気が付いた門番はもう一人の手からその冒険者証を奪い取り、記載されている情報欄を見て確信を得た。


「やっぱり・・・スゲェ、本物だ・・・」


「いきなり何すんだよ!! その冒険者証がどうかしたのか? やっぱり偽造とか・・・」


「馬鹿野郎!!! 偽造するなら普通の素材で作ればいいだろうが!! 魔銀と魔金の装飾で作られた冒険者証と言えばⅨ(ナインス)の冒険者だけが持つ事を許された、世界に何枚と無い代物だぞ!!」


「な、Ⅸだって!?」


慌てて再確認した冒険者証のランクには確かに金色に輝くⅨの刻印が打たれていた。


「しかも今現役でⅨと言えば・・・いや、名前からしても間違いない。・・・し、失礼ですが、『戦神』のユウ様でお間違いはありませんでしょうか?」


まるで上位の貴族に尋ねる様にして門番が問い掛けると、悠は頷いて口を開いた。


「ご大層な二つ名はともかく自分の名は悠で間違いは無い。ただの冒険者ゆえ敬語は不要だ」


「やはり!! お、お会い出来て光栄に存じます!!!」


最敬礼を送る門番は昨今の冒険者情報に聡い人間であった。悠の名声はミーノスが主であるが、人の噂としてノースハイアにも届いており、既に悠の名を知る者はかなりの数に及ぶのだ。そしてこの門番は最近冒険者から国の兵士として職を替えたばかりであり、高ランクの冒険者達に大きな憧れを抱いていたのだった。


「・・・おい、そんなに凄いのか?」


「知らないのか!? ユウ様と言えばミーノスの公爵を救った事からその足跡は始まり、仲間と共にドラゴンを退治しルーファウス王を助けて国難を救い、たった3月足らずでⅨの冒険者に上り詰めた生ける伝説とまで称されるお方だ!!! Ⅸの昇格試験では人類最強の一角、『奈落の申し子』ヒストリアを下し、ルーファウス王が公の場で「我が友」とまで呼ぶ英雄なのだぞ!? 粗相があれば我ら門番の首をこの大地に見渡す限りに敷き詰めたとてまるで足りんのだからな!!!」


血走った目で本気で怒鳴る同僚の剣幕にもう一人もようやく事態が飲み込めてきたらしく、自分の態度を省みて顔を蒼白にした。


「も、もも、申し訳御座いませんでした!!! ど、どうか、どうかお許しを!!!」


「知らなかったとはいえご無礼を働いてしまい申し訳ありません!!!」


そのままシームレスに土下座になって畏まる男に続いてもう一人の門番も追従して冷たい大地に膝と頭を付いた。


「・・・」


(おー、恐れられてるわねぇ。次からは冒険者証じゃない身分証を作っておくべきね。どこに行ってもこの扱いじゃ動きにくくてしょうがないわ)


(・・・もう遅いだろう。これだけ大騒ぎしては次回からはすぐにバレるしな。なるべくここには来ない事にするしかあるまい)


やはり名声を築くのも考え物だと、悠はほんの少し溜息をついた。

ちょっと風邪を引いてしまい遅れました。


大体悠の事を伝聞だけで知っている人間の反応はこんな感じになります。

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