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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第七章(前) 下克上編
475/1111

7-19 初対面1

深夜、そろそろ日付が1月1日に変わろうかというタイミングで悠は主だった者達を集めて『隔界心通話ハイテレパシー』を行おうとしていた。皆の正体も一目瞭然に分かる様にハリハリはエルフに戻り、ギルザードは兜を脱いでいる。・・・シュルツは覆面のままだが。


「恐らく年末という事で俺の知己が揃っていると思われる。前回で多少コツは掴んだので、今回話せるのは5分程度だろう。残念だが一人一人をゆっくり紹介している暇は無いので、皆はそこに居てくれるだけでいい」


「ユウの仲間ってぇと、殆どの奴が『竜騎士』なんだろ? ちっと緊張すんな・・・」


「もしかしたら皇帝陛下もいらっしゃるかもしれん。くれぐれも粗相の無い様にな、バロー」


「師よ、出来ればこの髭面は紹介しない方がいいかもしれません。逆に心配されます」


「これでもバロー殿も貴族の端くれと言えない事も無いですから、口さえ開かなければ・・・いや、いっそお面でも被っていた方がいいかも・・・」


「うむ、たまにバローは女性をいやらしい目で見ているな。そういうのはバレているから気を付けた方がいいぞ?」


「お、お前ら・・・! いい加減にしねぇとブッ殺すぞ!!!」


憤慨するバローだったが、悠はそちらにはもう目もくれないで蓬莱との『隔界心通話』を接続した。


「・・・繋がった。画面と音声が再生されるぞ」


「おお!! これが・・・さてさて、どんな方がいらっしゃ――」


「「「・・・」」」


ハリハリが画面を覗き込んで見えた映像に絶句し、他の者達も一斉に沈黙してしまった。そこに映っているのは皇帝の志津香であり、皆その美貌に一切の言葉を失ってしまったのだ。そこには男女の別さえなかった。


『悠様!! きっとご連絡して頂けると思っていましたわ!! ・・・久しぶりに元気なお顔を拝見する事が出来て、私、・・・やだ、涙が・・・』


「志津香様、ご連絡が遅れた事を陳謝致します。どうかお気を静めて下さい。神崎は遠い空の下でも元気にやっておりますので」


『ええ、本当に・・・。いけませんわね、こんな事で涙を見せてしまうなんて、はしたない真似を致しました。・・・あら? 悠様とご一緒に居られる方々はアーヴェルカインの皆様ですか?』


涙を拭って志津香が微笑むと、バローの顔が溶け崩れ、すかさずシュルツが見えない様に向こう脛を蹴り飛ばしてバローを画面の可視範囲内から強制的に退場させた。


「はい、人間のシュルツ、エルフのハリハリ、吸血鬼バンパイアのシャロン、デュラハン(首なし騎士)のギルザード、ドラゴン・・・いえ、リュウのサイサリスです」


サラリとバローを除外する悠であった。


『吸血鬼? デュラハン? それに竜と言われても何処にも・・・』


「サイサリスは人化の術を心得ております。人に見えますが竜なのです」


『まぁ!? そんな事が出来るなんて凄いですね・・・』


そこでギルザードが志津香と目が合ったので、両手で自分の頭をひょいと上に持ち上げてウィンクを送った。


『・・・・・・・・・う~ん・・・』


『志津香様!? 気を確かに!!』


5秒ほど見詰め合った後、志津香はふらりと後ろに崩れ落ち、画面からフェードアウトしていく。呼び掛け支えたのは朱理であろう。


「む? ユウ、あちらにはデュラハンはおらんのか?」


「・・・おらん。初対面であまり派手な真似はしてくれるな」


『ユウ、聞こえるか!!! お前は一体何をしているのだ!!! たまに会った時くらい陛下に甘い言葉の一つでも掛けてやらんか!!!』


「雪人か。相変わらず無駄に元気そうだな、新年くらい大人しく出来んのか?」


『やかましいのは貴様だ!!! クソ、久々に会ったというのにお前は変わらんな。時間が無いのだ、今日の所は俺の質問に可及的速やかに答えろ!! 竜が居ると言ったな? ドラゴンも居るのか?』


雪人もざっと悠の側に居る普通の人間とは異なる者達を見回したが、流石に肝が座っており、ハリハリの長い耳を見てもギルザードのフワフワと揺れる生首を見てもそれに突っ込みは入れなかった。


「大半は敵対的だが、全く話が通じない訳では無いな。それと、蓬莱に飛来した者達よりも個体としては弱い。恐らく頂点に立つ龍王とやらでⅦ(セブンス)~Ⅷ(エイス)と言った所だろう。狩り損なう心配は無いと言っていい」


『なるほど、確かに貴様ならば狩り損なう事は無いランクだな。その他の脅威についてはどうだ?』


「これまでの所では俺が戦えないほどの相手には出会っておらん。・・・ただ、どうにも気に掛かる謎の女が世界に悪意を振り撒いている。例えばこの召喚器もその女がある国の王を唆して置いていった物だ」


悠は見え易い様に召喚器を顔の前に掲げて雪人に提示した。


『それが例の召喚事件の元凶か?』


「そうだ。出来れば破壊してしまいたいが、ここのハリハリ曰く、それによってどの様な事が起こるか分からんので現状を維持して保管している。ここに魔力マナと呼ばれるある種の力を注ぎ込む事で自動的に召喚が行われるそうだ。魔力とは竜気プラーナに似た性質の物と捉えてくれ」


『ふむ・・・ナナナ殿、あれを見て何か分かるか?』


そこで画面の下からナナナが顔を除かせて悠の持つ召喚器を観察した。


『・・・遠くて良く分からないけど、それ、今も起動してるね。召喚じゃなくて何か別の機能が。・・・何だろう、凄く嫌な気配がするよ。後でナナ様にも聞いてみるね』


「そちらは頼んだ。情報の分析は頼んだぞ」


『任せておけ。俺は肉体労働専門の貴様と違って頭脳派だからな』


「単に貴様が虚弱なだけだ」


『言ってろ。・・・っと、今日の所はこの辺が限度か。おい、悠に挨拶しておきたいなら今の内だぞ!! ちなみに真の時間は無い。他の者に譲れ』


雪人が画面からずれると、そこにで亜梨沙達が割り込んだ。


『悠さん!!! 亜梨沙です!!! 悠さんに振り向いて貰う為に日々精進しています!!!』


『息災だな、悠。こちらは心配ない、存分にやるがいい』


『ダンナ!!! 今からでも遅くねぇから俺と代わってくれ!!! 料理も思ったよりゃ悪くねぇが、やっぱり俺ぁ戦いてぇんだよ!!!』


全く変わらない仲間の『竜騎士』達に悠は頷きを返した。


「皆も元気そうだな。亜梨沙、引き続き鍛練を怠るな。・・・と言ってもお前は見ていないからと怠ける性格では無いな。千葉ご夫妻や滉にもよろしく言っておいてくれ。教官、自分の留守でご迷惑をお掛けしております。轟、俺が帰ったら手合わせをする約束だろう? 存分に腕を磨いておくのだな。・・・なんなら料理勝負でも俺は構わんぞ?」


悠の言葉に亜梨沙は目元を拭い、匠は敬礼を返し、仗は苦い笑みを浮かべた。皆大戦を生き抜いた、悠の誇るべき仲間達だ。


そこで前回同様画面にノイズが走った。


「ここまでか・・・次回は問題が無ければ10日後の正午に連絡しよう。次回は咲殿も連れて来ておいてくれ。恵や明の姿を見せてやりたい。それと・・・良き年を」


その言葉を最後に空間に投影されていた画面は消失し、広間は静けさを取り戻したのだった。

志津香は当然ホラーは苦手です。ギルザードもア〇レちゃんよろしく「んちゃ!」とやっちゃあ駄目でしょうに・・・

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