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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第七章(前) 下克上編
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7-15 激突の時3

「何だ、中に入らなかったのか?」


「・・・入る前の時点で突っ込み所が多過ぎるんだよ!」


屋敷を再設置した悠の言葉にコロッサスが言い返した。


「まぁいい、ここからフェルゼンまでは8キロ程度だ。時間が無いからすぐに出るぞ」


「走るのか、ユウ?」


「馬車で向かおう。ハリハリにも付いて来て貰いたい」


「ワタクシですか? まぁ、構いませんが・・・」


悠はローランから移動用に借り受けた馬車でフェルゼンに向かう事にした。敷地内にあればどこにでも持ち運べるので短距離の人目のある場所での移動には中々便利なのだ。ちなみにその世話は子供達が順に担当している。


「皆はそのまま鍛練を続けてくれ。俺達は出掛けて来る。1時間程度で戻るつもりだ」


居残り組に声を掛け、悠は再び屋敷を後にした。それを残念そうにギルザードが見送っている。


「うーむ、せっかくの剣士との手合わせの機会を逃してしまったな。・・・どうだろう、サイサリス。私と手合わせしないか?」


「・・・私は加減して戦うのが苦手だが?」


「構わないさ、私は他の者達と違って生ある存在では無いし、頑丈に出来ているからな。少々本気を出して貰っても大丈夫だ」


「ふむ、それならばお相手しよう。私もこの体での極限戦闘を経験しておきたいと思っていた」


そう答えるサイサリスの手の爪が一気に伸び、その目に戦意が宿り始めた。それを見たギルザードもニヤリと笑って兜を被り直す。


「こちらもまだまだ鎧の力を引き出せていないのでな。いざ!!」


・・・怪獣大合戦が密かに始まろうとしていた。




「ふぅ・・・こうやって外に出るのも久しぶりだな。冒険者だった頃を思い出すぜ」


「そういや俺もコロッサス以外の『六眼』の事は良く知らないんだがよ、『隻眼』がコロッサス、『氷眼』がアイオーンなら、後4人居るんだろ?」


「・・・今じゃ3人だ。最後の冒険で『慈眼』のシュレイザは死んじまったからな・・・」


「っと、悪ぃ」


「昔の事だ、別に構わんよ。・・・だがアイオーンは未だにその頃の事が忘れられないままここまで来ちまった。シュレイザが死んだのは誰のせいでも無いんだがなぁ・・・」


昔を懐かしむ目をしてコロッサスは呟いた。


「なぁ、相手は魔族だったって話だけどよ、そんなに強かったのか?」


「ああ、強かった。そいつは魔王の側近だって言ってたが、当時の俺達が力を合わせてようやく互角って所だったよ。筋力も魔力も体力も何もかもが俺達の上を行ってたぜ。・・・今の俺がこの剣を持って戦えば・・・それでもまだ分が悪いな。8:2で俺が殺されるだろうよ」


「バケモンだな・・・魔王はそれよりもっと強いんだろ?」


「魔族版のユウみたいなの物じゃないか? 出会ったら間違い無く全員殺されてただろうな」


「いつかはやり合わないとならないんだろうな・・・はぁ・・・」


悠が世界の変革を志すのならば、魔族と魔王であるカインフォルスは避けて通る事の出来ない相手だ。可能な限りバローもそれに付いて行くつもりであるが、昔より遥かに強くなったとはいえ、今のままでは悠の足を引っ張る事になるだろうと思えた。


「なぁに、それでも首を落とせば死ぬ事に変わりはない。魔族でもそこまで強い奴らがゴロゴロ転がっている訳じゃないからな。お前の剣なら一太刀決めりゃ格上だって殺せるさ。小技を増やしても意味は無い。ユウも言ってるが、相手を殺し得る絶対的な一撃があればどんな格上とやり合っても勝機は残ってるはずだ。現状に満足するなよ、バロー」


「忠告有り難く受け取っとく。『絶影』の先、か・・・」


『絶影』を連続で放つ『夢幻絶影』までも開眼したバローだったが、流石にその先についてはこれまで考えた事が無かった。この先戦いが厳しくなっていくのなら、更に先を求めなければならないのかもしれない。


「他の生き残りのメンバーとは今でも交流があるのか?」


「アイオーンを除けば一人だけな。『慧眼』オルネッタって言って、俺とアイオーンをギルドに引き込んだのもオルネッタだ。今はギルド本部で働いてる。『隼眼』アルベルトと『千里眼』イライザは『六眼』解散後に引退して2人で暮らしているはずだが、どこに居るのかは知らないな」


「今でもその魔族を倒したいか?」


「・・・」


悠の質問にコロッサスは遠くを見つめて沈黙した。それは答えるのを拒否しているのではなく、自分の中の思いを言葉に変換するのに必要な時間であった。


「・・・そうだな、もし目の前に現れれば分が悪かろうが戦いたいと思う。だが俺はミーノスのギルドを預かる身だ、そんな自分勝手な真似が許される立場じゃない。その点じゃアイオーンは一貫して意見を変えちゃいないがな。もしその魔族の居場所が分かれば、アイオーンはギルドなんぞ捨てて仇を討ちに行くだろう」


そこで一旦コロッサスは言葉を切り、再び語り出した。


「そもそも、俺もアイオーンもオルネッタが「ギルド長になれば最新の情報を手に入れられる上、大規模戦闘の際には優先権もあるし、国に仕えるよりも自由度が高い」って言葉を信じてギルド長を引き受けたんだ。・・・オルネッタには分かってたんだろうと思う。俺には責任を負わせる事でそこから離れられなくなる事も、アイオーンは放っておけば魔族領に特攻して死ぬだろうって事もな。あいつは上手く俺達に首輪を嵌めたんだよ。別に恨んじゃいないがね」


そんな事を語っている内に馬車はフェルゼンに辿り着いた。


「ユウは絶対コロッサスが勝つって言い切るんだが、コロッサス自身はどう思ってるんだ?」


「戦いに絶対はないさ。それにアイオーンは強い。俺だってそう簡単に勝てるとは思えんよ」


「だよなぁ・・・」


そう言いながらバローは悠に視線を送ったが、悠からの反論は来なかった。


「さて、行くぞ。ついでに帰りにアルトとルーレイを拾っていくか」


ローランの代わりに家の様子を見に行ったアルトとそれにくっ付いて行ったルーレイの事に触れ、悠達は馬車を降りてギルドへと向かったのだった。

コロッサスとアイオーンの過去に少しだけ触れる回でした。

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