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1-39 デートという名の戦い1

次の日も悠はいつも通り5時に起床した。元々徹夜程度でへこたれるようなヤワな鍛え方はしていない。戦いながら寝る間もなく戦場を渡り歩いた日々に比べれば、昨日の夜などはピクニックも同然だった、


「おはよう、レイラ」


《おはよう、ユウ。今日ぐらいもうちょっと寝ていてもいいのに》


「癖でな、一度決めた時間には起きる様になってしまったよ」


そう言って胸元のペンダントを弄る悠。


「今日は出かけるまでにここの片付けを済ませてしまいたいからな」


《荷物はどうするの?》


「いらん物は捨ててもらうとして、他は雪人に預けていくさ。もっとも、大した物も無いがな」


そんな事を喋りながら、悠はレイラと午前中は片づけをして過ごした。






「なぁ、変じゃないよな?この格好」


「大丈夫だって、亜梨紗は心配性だなぁ~」


「うん、可愛いと思うわよ亜梨紗」


正門で待つ三人は思い思いの格好で悠を待っていた。亜梨紗は七分丈の白いシャツに薄い青のパンツルック・・・までは良かったが、それにゴツイジャケットを羽織っていこうとしたのを二人に止められ、薄手の縦縞のコートを羽織って、髪も普段は括ってあるポニーテールを解いている。燕は白いシャツの上にチェックのふわふわしたカーディガン、そして胸元にはネクタイをし、下は赤いフレアスカートにニーソックスと言った学生風にまとめ、蓮はタイトな長袖で胸元だけに横縞の入った白と灰色のワンピースを身につける大人の女風に着飾っていた。


ここに至るまでに起きてから3時間丸まるかかったのは男には秘密の女のタシナミだ。


「ねぇ、ふと思ったんだけど・・・神崎竜将、軍服とかで来ないよ・・・ね?」


「・・・・・・悠さんならやりかねん」


「そういえば私服は拝見した事が無いわ。まさか・・・」


軍服の男一人と着飾った女性三人。明らかに周囲から浮いた存在感を放つであろう。


「すまん、待たせたか?」


その時、三人に後ろから悠の声がかかった。


「いえ、今来たとこ・・・」


一度は言いたかったセリフを悠に対して言える!と反射的に返事をしようと振り返った亜梨紗だったが、悠を見た途端、言葉が止まってしまった。


「わ~、神崎竜将カッコイイー」


「あら、とても素敵ですよ、神崎竜将」


悠は髪を整髪料で後ろに流して固め、服は薄めの黒のハイネックセーターとベージュのチノパンとラフで暗めの配色ながら、胸元のレイラの赤いペンダントが雰囲気を軽くしている。その顔には変装でもらった伊達眼鏡がかけられている。


「俺は服の事は良く分からんのでな。あるものをレイラに見てもらって着てきただけだ。それと、俺だとばれると周りがうるさいからな。今は役職名は省け」


「分かりました!では悠さんとお呼びします!」


「私もそうします。ふふふ、いつも亜梨紗が羨ましかったのよね」


当の亜梨紗は見慣れない悠を見てドキドキして意識が飛びかけていたが、しばらくして気を取り直すと改めて悠に語りかけた。


「こ、こんにちは悠さん!あの、お、お似合いですね!」


「そうか、ありがとう。三人も個性が出ていて可愛らしいと思うぞ?」


(よっしゃぁ!!!『可愛い』って言わせたぞぉぉおおお!!!)


(頑張った甲斐があったわね!!)


後ろで二人が見えない様にガッツポーズを決めている。事実三者三様で好みは分かれるだろうが、皆十分美人の部類に入るのだ。その証拠に三人が待っている間、何人もの男が声を掛けようか迷っていたが、悠が現れた事で恨みと妬みのオーラが周囲に充満していた。


「あ、ありがとうございますっ!で、では早速参りましょうか!」


「ああ、今日はお手柔らかに頼む」


そうして和気藹々と四人は街へと繰り出して行った。







「まずは昼を食べようかと思うが、何か希望はあるか?」


中央通りまで歩いてきて、悠は三人に尋ねた。今日は昨日の穴埋めという事もあって、三人の希望に沿う事に決めていたのだ。


「はい!一度行きたいと思っていたお店があるんです!中央通りの中心から徒歩で2、3分のお店なんですけどね」


「あ、確かこの前言っていた店か?高いから諦めたんじゃ・・・」


「奢りの時に行くのは失礼じゃないかしら?」


「構わん。俺の役職は知っているだろう?金の事は気にするな」


「ほらほら、かんざ・・・悠さんもこう言ってるし!」


「全く燕は・・・分かったよ。悠さん、ご馳走になります」


「ああ、昼も少し過ぎているからそんなに混んでもいないだろう」


そこは外国の料理も知っている店主が様々な趣向を凝らして料理を出すと評判の店だった。その分、料金もお高いが、それに見合う味でもあったのだ。


「最近は外に出歩く人も多くなりましたね」


「式典以来、皆の意識が変わったよね。なんか、平和!って感じ」


「私達が生まれた時からドラゴンと戦ってたんですものね」


「軍に居た人間ほどまだ実感が沸かないかもしれんな。民衆は日常の変化には敏感なのだろう」


「そうかもしれませんね」


そんな事を話している内に目的の店に着いたのか、燕が一軒の店の前で足を止めた。


「あ、ここですよ悠さん。では、腹ごしらえ腹ごしらえ~」


スカートを翻しながら燕は皆に先んじて店内に入っていった。


「こら、燕!子供かお前はっ」


「亜梨紗も走らないのっ」


《ユウ、迷子に『しないように』今日は気をつけてね》


笑いの気配を滲ませたレイラのペンダントを指で弄びながら、悠も店の中へと入っていったのだった。

3:1のデートとか、リア充ばくはつしろと思いました。

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