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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第七章(前) 下克上編
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7-11 同床異夢

「それで、これからどうする?」


当初の勢いを失ったサイサリスとウェスティリアが落ち着くのを待って悠は問い掛けた。


「・・・可能であればここに居候させて欲しい。私はもうあらゆる意味でドラゴンズクレイドルには帰れぬ」


「サイサリス・・・」


呼び掛けながらもウェスティリアはサイサリスに翻意を促す事は出来なかった。サイサリスは自分の一番大事なものが何なのかを悟ったのだ。これ以上言葉を重ねて説得出来るとはウェスティリアには思えなかった。


「そうか。・・・ウェスティリアはどうする?」


「私は・・・帰る。ドラゴンズクレイドルに戻り、浮かれている同胞を止めねばならん。・・・恐らくそれが不可能だとしてもな」


サイサリスと共に居続けるには、ウェスティリアの精神は潔癖過ぎた。ごく僅かに親しくしている者達だけでも守らねばならないという思いも捨てきれなかったのだ。


「・・・」


悠はそれを見て自分の首からスフィーロのペンダントを外し、サイサリスに突き出した。


「え?」


「帰るにしても残るにしても今日はもう遅いから泊まっていけ。リュウに睡眠などそれほど必要無かろうが、積もる話もあるだろう、3人で最後に良く話し合うといい」


「・・・私が持ち逃げするかもしれんぞ?」


「スフィーロから聞くサイサリスという女はその様な性格では無いと理解している。それに生身を取り戻したければ俺が居なければ不可能だ。明日の朝返してくれ」


突き出したまま引っ込める気配の無い悠とペンダントを見比べ、サイサリスはおずおずとスフィーロにに手を伸ばし、受け取って自らの胸に抱き締めた。


「スフィーロ様・・・もう離れませんから・・・」


《・・・我も覚悟を決めねばならんか。分かった、共に果てるまで添い遂げよう、サイサリス》


「スフィーロ様ぁ!!!」


『様は止せ。それと、済まぬなウェスティリア殿。どうやら我も裏切り者だ』


「・・・致し方ありません。サイサリスは暴力的に見えて情の深い雌ですから。今日だけはあなた達を寿ことほぎましょう。・・・幸せにな、サイサリス、スフィーロ殿・・・」


サイサリスを抱き寄せ、ウェスティリアは頬を寄せて擦り付けた。これはドラゴン同士でも特に親愛の情を表す仕草であり、ウェスティリアはこれまで父とすらこの様な事をした事が無かったが、サイサリスには抵抗なく行う事が出来たのだった。


「・・・ぼ、暴力的は余計だ、バカ・・・」


胸にスフィーロを抱いたまま、サイサリスも悪態をつきながらもそれを受け入れた。


それを見て悠は席を立ち、しばらく厨房に行ってからまた戻って来た。その手には様々な料理が盛られた大皿があり、それを置くと今度は鞄からテーブルの上に酒や果実の汁が入った瓶をゴンゴンと林立させていく。


「好きに飲み食いするといい。ウチの料理人は凄腕だ。・・・ではな」


そのまま立ち去ろうとする悠にサイサリスは一つ皮肉を言ってみる気分になって口を開いた。


「茶は出ないのでは無かったのか?」


「招かれざる客にはな。そうでないなら2人は客だ。・・・ちなみに毒は入っておらんぞ?」


呆気に取られるサイサリスとウェスティリアを置いて、今度こそ悠は広間の外へと出て行った。


「・・・クッ、クックックックックッ・・・わ、訳の分からぬ人族だ、アッハッハッハッハ!!!」


「先ほどまで殺し合いをしていた者を野放しにして更に酒に飯か? ・・・プッ、アハハハハハ!! 確かにドラゴンでも居ない様な変わり者だ!! さぞスフィーロ殿とは話が合ったでしょう!?」


《その言われ様は不本意だな。我はあそこまでおかしくない。なぁサイサリス?》


「さあ、どうでしょうかね?」


とぼけるサイサリスの言葉に、この夜初めて3人の笑い声が広間に響いたのだった。




「シュルツ、ギルザード、見張りをご苦労だった。後は俺がやるゆえ、お前達は休んでくれ」


「私は別に睡眠など必要無いよ。シュルツだけ休むといい」


「師と姉君がお休みで無いのに拙者が休む訳には参りません」


「私は睡眠など必要無い体だから起きているだけだ。寝なさい」


「しかし・・・」


上下関係を重んじるシュルツは弱って悠を見たが、悠の意見も同じだった。


「寝ろ」


「・・・・・・・・・畏まりました、何かあったらすぐにお呼び下さい」


表情には出さなくても渋々受け入れたと理解せざるを得ない間を開けてシュルツは首を縦に振って歩み去った。


「・・・全く、1000年経っても弟を見ている様だ。ユウ、お前が女にしてやればどうだ? そうすれば少しは融通が利く様になるかもしれん」


「弟子に手を出すほど落ちぶれてはいない。俺は悪友と違い、戯れで女を抱く趣味は無いのでな」


「弟子以前に男と女だろう? ・・・まぁいい。人の色恋に口を出すのは私も趣味じゃない」


やれやれと首を振り、ギルザードは腕を組んだ。


「お前も寝てしまっても良いのだぞ、ユウ?」


「俺が招いた俺の客だ。最後まで自分でケジメをつけるべきだと思っている」


「そう言うと思った。待っていろ、椅子と毛布を取って来る。ここに居ればいいのだから、それくらいは構わないだろう?」


「ああ、感謝する」


平常運転の悠の返答にギルザードが苦笑する。


「ふっ・・・お前は本当に変わっているな、ユウ。私の様な魔物モンスターだろうと吸血鬼バンパイアやドラゴンだろうとまるでお構いなしだ。いつか足元を掬われるぞ?」


「俺達の世界では異形の種と友好を育み、そして殺し合って来たからな。自分が信じた相手に裏切られるのならそれは自分の責任の範疇だろう。疑って誰も寄せ付けぬのは孤高とは言わぬ。孤独と言うのだ」


「耳が痛いな・・・私も精々その姿勢を学ばせて後々に生かすとしよう」


過去の自分達を思い出したギルザードは両手を上げて降参の意志を示し、椅子と毛布を持って来る為にその場から立ち去って行った。


《ふぅ・・・相も変わらず忙しい毎日ね。あっちへ行ったりこっちへ行ったり・・・》


「お前もあちらに混ざって息抜きでもするか?」


《冗談。いい女は空気が読めるものなの。だからお呼びで無い場にしゃしゃり出たりはしないのよ。それに、私の息抜きはあなたと一緒に居る事なんだから別にいいの》


「それは済まなかった」


そう言って悠がペンダントを弄ると、ほんのりとペンダントが満足そうに赤く光った。


それぞれの夜が過ぎて行く・・・。

サイサリス加入、ウェスティリア離脱。


サイサリスはギルザードと並ぶツートップです。バローやシュルツは単体では勝ち目が薄いですね。現在は装備の差もあって実力差が縮まっていますが。

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