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1-34 頭痛の種

誰が誰にとっての、なのか考えると面白いです。

泣き疲れと精神へのダメージで再び眠った亜梨紗を医務室に寝かせ、悠は軍本部を後にし・・・ようとしたが、入り口付近で雪人に捕獲された。


「おい、貴様、あれだけ暴れて報告もせずに帰ろうとするとはいい度胸だ。死ね」


「貴様は会話に毒を混ぜんと話せんのか?」


「馬鹿野郎は自分が馬鹿野郎だと分からんからこそ馬鹿野郎なのだ。言わんと分からん馬鹿野郎には言うしかないだろうがこの馬鹿野郎が」


一息に5回も馬鹿野郎を会話に入れてくる辺り、雪人も相当切れ掛かっている。


「その代わり竜騎士が一人増えたのだからお釣りが来るだろう」


「偶然の産物だろうが!一歩間違えば竜器使いは壊滅だぞ!?」


「俺はあいつらを信じている。たとえ今竜騎士に成れずとも、必ず立ち上がるはずだ。その様に訓練してきたのだからな」


「おのれ、ああいえばこういう・・・くそっ、その間の周囲の警戒はお前もシフトに入ってもらうぞ!コキ使ってやる!!」


「人使いの荒い嫌な上司だな」


「お・ま・え・の・せ・い・だ・ろ・う・が!!!」


激怒する雪人に対して悠はどこ吹く風といった感で受け流し、入り口に向き直った。


「了解した。俺のシフトは官舎に伝えてくれ。なるべく夜間がいい。昼はまだ挨拶回りで忙しいだろうからな」


「言われんでも一番キツイ時間帯をくれてやる。覚悟しとけ!」


それ以上話す事は無いと言わんばかりに雪人は肩を怒らせて戻っていった。






《これからどうするの、ユウ》


「さて、練兵も済んだし、墓参りもした。仕事は入ったが夜だ。あとやっておく事といったら、官舎の整理と・・・千葉のご両親にも挨拶しなければならんな。それと今日分かったが、『妖精のフェアリーパウダー』は強い思いまでは上書き出来んようだ。なら、今日の通達を聞いて俺に用事があるやつが来るかもしれん。出発までに竜気プラーナの回復もしたいが、さて、また果し合いでも挑まれると厳しいな」


《あんなに張り切るからよ。竜気解放プラーナリバレートなんて、訓練のレベルで使う物じゃないわよ?》


「これまでは戦時中で竜器使いを行動不能にするような事は許されなかったからな。これが最後の機会だったのだ。いい加減機嫌を直せ、レイラ」


《怒ってなんかいないわよっ》


怒っているのが丸分かりなレイラだった。


「なんだかんだしているうちに昼食を食いそびれてしまったな」


現在は午後5時である。正午から通達が始まって、練兵と亜梨紗の付き添い、そして雪人の小言で時間を食ってしまったのだ。


「とりあえず官舎に戻って伝言が無いようなら街で夕飯を済ませるか」


そして悠は官舎へと帰っていったのだった。





「最後の日は、夜は皇居で送別会、明日辺りに夜は雪人が仕事を振ってくるだろうから、千葉の家には明後日しか行く機会が無いな。では、こいつをどうするか・・・」


官舎に帰った悠には大量の伝言が届いていた。殆どは別れを惜しむ内容の物だったが、その中の一つが悠を悩ませていた。


《ジョウは絶対やる気よ。どうするの、ユウ?》


「思った以上に回復が早いな。あと3日は動けんと踏んだのだが」


悠の手にミミズがのたうって断末魔を上げている様な紙が一枚あり、それにはこう書かれていた。


『おれとたたかてくわ』


恐らくは『俺と戦ってくれ』と書きたかったのだろうが、果たせずに平仮名で書かれていて、しかも最後の『れ』にいたっては、跳ねさせる事が出来ずにそのまま紙の下端まで流れて『わ』にしか見えない。どう見ても回復している感じでは無いが、根性で書いたのだろうと思われた。


「仕方ない、明日は午前中は轟の見舞いだな」


《面倒だから、こっそり病室に忍び込んで、寝てる間に『竜ノ咆哮』でも軽く当てておけばいいんじゃないかしら?》


「いい案だと思うが、もう竜気を消耗したく無いな。殴るか」


非常な案を出すレイラと外道な案で答える悠だったが、勿論冗談だ。モチロン。


「病人を殴る訳にはいかんか。まぁ、さすがにあいつも入ってきた瞬間に飛び掛る元気は無かろう」


《這ってでも掛かってきそうだから怖いのよね・・・》


とどろき じょうは大戦を生き延びた最後の竜騎士だ。戦闘力では竜騎士でも1、2を争う力を持つが、反面、燃費が悪く、細かな調整が利かない技が多く、味方の居ない場所での広範囲殲滅を得意としていた。というよりそういう戦い方しか出来なかった為、今回の戦いで敵陣で自爆に等しい特攻を敢行し病院送りとなった為に生き延びた。


その性格は粗暴で、元気な時は常に悠と戦おうと画策していたが、稚拙な策の為、朱理や雪人に簡単に言いくるめられてしまい、中々果たせなかった。


しかし悠が居なくなるとなれば、たとえどんな犠牲を払おうとも戦おうとするだろう。今回ばかりは朱理や雪人の言葉で止めるのは難しいに違いない。だから悠は自ら赴いて、その意思を受け止めるつもりでいた。


「結局は行ってみるしか無いだろう。ミドガルドも低位活動モードから回復していなければ竜気の回復もしていないのだろうしな」


《ミドは後先考えない所があるから・・・多分、まだ意識も取り戻していないなずよ》


相棒たるミドガルドも破壊を好むリュウであり、一歩間違えばドラゴンに加わっていてもおかしくないのだが、『弱っちい人間なんぞと戦えるか!!』と一喝してレイラ達と共に不利な人間陣営に与したのだ。


「考えるのは明日にしよう。それよりも飯に行くぞ」


出たとこ勝負にするして、考えるのを放棄した悠だった。

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