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1-31 練兵3

初バトルです。アポカリプス戦を敢えて書かなかったら、バトルが途中全然無かったという;

誤解の無いように言うが、竜器使いには男も当然混じっている。彼らの目的は当然悠とお付き合いをする事・・・では無く、最後に悠に今の自分達の実力を見てもらいたかったからだ。


だが一方で、戦場に誰よりも早く駆けつけ、誰よりも長く留まり、誰よりもあとに帰還する悠の生き様に惚れる女性軍人は多く、その中でも亜梨紗のような行動派は告白まで漕ぎ着けていた。しかし、悠がそんな彼女達を必ずある一言で断ち切っていた。すなわち、


「俺に勝ったら付き合おう」


と。


東方軍の個人では最高戦力である悠に単体で勝てる女軍人などいる訳が無い。自然と、全ての告白は断られる事になった。しかし、恋するオトメはその程度では諦めない。己を鍛え続けた結果、竜器使いまで成長する者が現れだしたが、それでも悠には当然敵わなかった。


そもそも、竜騎士ですら単体で悠に勝てる者は居ないのだから(事実、過去に悠を止めようとして竜騎士2人が叩きのめされた事があった)、仕方ないだろう。


しかし、今この場には竜騎士には及ばないが、それに準ずる戦闘力を持つ竜器使いが20名も揃っているのだ。これは千載一遇の好機と言えた。


「皆、これは好機だ。神崎竜将に我らの強さを見せてやろうではないか!」


亜梨紗が皆を鼓舞して士気を上げようと試みる。それは一部成功し、勇ましい言葉に男性陣は奮い立ったが、数名の女性陣が訝しげな視線で亜梨紗を見ていた。こいつ、抜け駆けするつもりじゃあるまいな?と。


その女性陣に声を掛けるべく、亜梨紗は後ろに下がり、小声で声を掛けた。


「心配するな、ああは言ったがとても抜け駆けしてどうにかなる相手じゃない。全員が一丸にならなければ秒殺されるぞ」


あれは亜梨紗の決意表明であって、抜け駆けの告白では無かった。もし万が一、その様な事になったら約束は果たしてもらうと伝えたかったのだ。


「だけどどうする?神崎竜将は倒すどころか一撃入れるのも至難の業だよ?」


「それに引き換え、私達は一撃食らえば落とされるわ。作戦がいるわね」


同僚にしてライバルの天城あまき つばめ斉藤さいとう れんが現状を確認する。彼女らは、亜梨紗がその類の虚言を言わないであろうと分かっていたので、いち早く頭を冷やして現状の把握に努めていた。


「私達の竜器は攻撃型で防御が薄い。そして神崎竜将に生半可な攻撃は通りはしないわ。だから男連中が突進した後を追う。竜器使いが20人も居れば、飽和攻撃で神崎竜将の守りも抜けるはずよ。その隙を狙って3人で同時攻撃を仕掛けるわ。私の竜器は篭手型で射程が短いから真っ直ぐ神崎竜将の顔を狙う。燕は弓だから出来るだけ回避しにくい様に体の中心を狙って。蓮は三節棍を横から叩き込む振りをして、後ろから膝裏を狙ってね。さすがに神崎竜将も他の攻撃を捌きながらこの同時攻撃全てを受け流す事は出来ないはずよ」


若くして竜佐にあるだけあって、亜梨紗の作戦は的確だった。


「それでも2回目のチャンスは無いと思っていいわ。初撃で決めるわよ」


「「了解!」」


この辺りは軍人だけあって理解が早い二人である。


「相談が終わったなら掛かって来い」


悠がクイクイと竜器使い達を手招きする。


「皆、行くぞ!!」


鬨の声と共に、竜器使いが悠に向けて殺到した。


「はっ!!」


まず最初に辿り着いた一番数が多い、剣型の竜器を持つ男が袈裟切りに悠に切りかかった。


それを悠は半身になって避けると、すれ違いざまに肘を脇腹に打ち込んだ。


「ごはっ!?」


「攻撃が正直過ぎる。フェイントも活用しろ」


打ち込まれた男はそのままその場に蹲るが、それを飛び越えて足甲型の竜器を付けた男が悠に飛び蹴りを浴びせてくる。


悠はその場に素早くしゃがみ込むと、その飛び蹴りが頭上を越える瞬間に拳を天に付き立てた。


「がぁあっ!!」


「狙いは悪くないが、速度が足りん。見てから十分回避出来るぞ」


一々竜器使い達にアドバイスする余裕すらある悠を見て、波状攻撃は各個撃破されると悟った竜器使い達は手近な相手と連携を組んで攻め立て始めた。


剣と槍が弾かれ、盾を持った相手を吹き飛ばして弓使いを押さえ、鞭を逆に絡め取って持ち主ごと振り回し接近していた竜器使い達を殴り倒す。


「くっ、一旦距離を取れ!」


人付きの鞭などもはや射程の長いモーニングスターの様な物である。その男の判断に間違いは無かったが、今日の悠は(龍相手で無い割りに)多少本気だった。


「迂闊に距離を取るか。浅はか」


そう言って右拳を前に出し、左手を添えて集中すると、拳に赤い光が集まった。


「マジか!?おい、後ろ!竜将の『竜砲りゅうほう』がくるぞぉ!!」


今までの練兵では殆ど使わなかった、竜気プラーナを拳に集めて遠い相手を打ち抜く技が『竜砲』である。その威力はⅤクラスのドラゴンですら直撃すれば落とされかねない物で、竜器使いでも食らえば戦闘不能は間違いない。下手に当たれば死ぬ危険すらあった。


「遅い」


悠が嗜めると同時に赤い光の弾丸が竜器使いに迫る。殆どの竜器使いはなんとか回避したが、先ほど殴り飛ばされた盾型竜器を持った男が回避は間に合わずと踏んで、その盾で防ごうとしたが、


ドガッッ!!


まるで何か大きな生き物に跳ね飛ばされたかの様に、10メートル以上後方に吹き飛ばされ、そのまま起き上がって来なかった。


「くっ、後方援護!射程の長い竜器は神崎竜将に攻撃を集中しろ!近接部隊、その間に距離を詰めろぉ!」


誰かが上げた声に弓型や砲型の竜器を持つ者達が火線を集中させた。


横に移動しながら着弾を避ける悠に、近接部隊が攻勢をかける。


「一気に攻めるぞ、かかれぇっ!」


そして剣が、槍が、双節棍ヌンチャクが悠に振り下ろされるが、


「回避中の相手は速度が乗っている。ただ焦って攻撃するのでは無く、回避の方向を探って塞げ」


そのまま横滑りしながら振り下ろされる攻撃を掻い潜った。


「ここだ、燕! 蓮!」


攻撃側は体勢を崩したが、悠も今の一撃を避ける為に体が流れている、人数が削られてきている今、チャンスはここしかなかった。


「はっ!!」


「たあっ!!」


「ほいっ!!」


そこに燕の矢が悠の体の中心に向かって飛び、かわそうとすれば蓮の三節棍に足を取られるか、亜梨紗に殴り飛ばされるか。いずれにしても一矢報えると誰もが思った。しかし、


「ふっ!」


悠は空中で『転んで』矢と拳を上に、三節棍を下にしてその間に体を通らせた。


「うっそ・・」


「なんて器用な真似を」


そして仰向けのまま地に下りると、手を地に付けて後転し、低い体勢を維持したまま近くで攻撃動作後の硬直で動けない者達に向かって襲い掛かった。


「捨て身の攻撃は外してはならん。死に体になる」


そう言いながら急いで体を離そうとする男達に水面蹴りを放ち、3人まとめて足を刈り取り、そのまま浮いている3人に更に追撃して回し蹴りを放つ2連脚撃でその体を吹き飛ばした。


不幸中の幸いで体が流れていた亜梨紗と少し間合いの遠かった蓮はそれに巻き込まれずに済んだが、このままでは次の一撃で倒されると察した亜梨紗が大声で叫ぶ。


「燕ぇ! 蓮っ!」


その言葉に即座に反応した二人は奥の手を切る事を決意して弓と三節棍に力を込める。


「『光弓こうきゅう散華さんげ』!」


叫びと共に燕が弓を放つと、矢は途中で枝分かれして悠へと殺到し、


「『臥竜衝がりゅうしょう』!」


蓮が三節棍を振るうと、それは地をのたうつ様に不規則に後方から悠へと迫った。


「む」


悠はその攻撃に少しだけ目を細めた。さすがにこの攻撃群を受けては悠とて無傷ではいられない。前後からの攻撃に対して回避を選ぶなら、攻撃面の広さから、逃れるには上しか無かった。だから悠は上へ飛んでそれらの攻撃を回避した。だが、そこには既に力を溜めていた亜梨紗が落下して来ていた。


「『竜墜天りゅうついてん』んんっ!!」


そして光を放つ組み合わせた両拳を悠に向かって叩き付けた。


その攻撃は腕に確かな打撃の衝撃を伝え、悠を攻撃の最中へと叩き落したのだった。

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