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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
閑章 それぞれの思惑編
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X-4 蓬莱4

「何だよ、急に呼び出しやがって。俺は忙しいんだが?」


「貴様はいつまで経っても目上への態度が改まらんな。頭に蛆でも湧いているのか?」


「あぁん?」


のっけから険悪な雰囲気を醸し出す仗と雪人に周囲の者達は溜息を付いた。噂では多少丸くなったと言われていた仗だったが、口の悪さは相変わらずだ。もっとも、口の悪さでは雪人も引けを取るものでは無いが。


「お2人ともお止め下さい。今は防人教官の持ち帰られた情報を精査するべき時間です。防人教官、お話をお願いします」


「うむ」


今『竜騎士』達は皇居にある第3会議室に集まって会議を開いていた。議題は当然、匠が持ち帰った情報を共有する為だ。


新参の亜梨紗は緊張して唾を飲み下していて、真は匠の発言を待って沈黙を保っている。


「昨日、ナナナ殿に市中を案内している際に少々踏み込んだ話をしたので、皆にも意見を聞きたいと思い集まって貰った。特に雪人と西城にはよくよく吟味して貰いたい」


「ほぅ・・・教官も中々隅に置けませんな。情報竜将も兼任しますか?」


「茶化すな雪人。それでその内容だが・・・」


雪人の軽口に付き合わず、匠は昨日ナナナに聞いた情報を開陳する。


その話の重要性にすぐに気付いた雪人と朱理は同時に眉を顰めた。


「それは・・・」


「・・・今更話の危険度を上乗せするとはな・・・当のナナナはどこだ? 嫌味の一つでも言ってやりたいのだが?」


「それは俺が許さん。ナナナ殿は自らを危険に晒してまで我らに情報を下さったのだ。その義を踏みにじる様な真似はさせんぞ」


目付きを険しくする雪人と匠がしばし無言で睨み合った。この2人がこの様な形で対立する事は珍しく、取りなす必要を感じた朱理が間に割って入る。


「真田先輩、ナナナ殿が体調を崩されているのは確かです。今はご無理をさせませんよう。教官も気を静めて下さい。今は情報の方に集中しましょう」


「ふん・・・分かっている。事が事だけに裏を取りたかっただけだ」


「済まんな、だが無理強いした張本人として俺には負い目がある。ナナナ殿に確かめるのは体調が戻ってからにしてくれ」


一応、2人は蟠りを棚上げし、情報の解析に掛かった。


「だが、これは捨て置けん話だぞ西城。これが本当の話であると過程するならば・・・恐らく天界は敵となる存在にある程度目星が付いていて、更にそれは悠ほどの強者でなければ対処し難い強大な存在だという事だ」


《やはりそうなるのぅ・・・》


「私もそう分析します」


雪人、プロテスタンス、朱理という、頭脳に秀でる者達が揃って断定するのだから、そこに異論は無かった。


「付け加えるならば、神崎先輩の強さが神々にも迫るというのなら、その敵の正体にもある程度目星は付きます」


険しい顔つきの朱理がそう述べると、同じ予測を抱いている雪人が頷いた。


「ああ・・・俺も同じ事を考えている」


「・・・あの、私は事の最初から関わっていた訳では無いので分かりません。お2人の予測をお聞かせ願えませんか?」


亜梨紗が恥を忍んでそう尋ねると、雪人が答えた。


「亜梨沙、天に神々が居る様に、地には悪鬼共が暮らす世界があると説明したのを覚えているか?」


「はい、それは覚えて・・・ま、まさか!?」


雪人の言わんとする事を察して、亜梨沙は驚愕を浮かべた。


「そうだ。龍などというイレギュラーな者達を想定しているのでは無い限り、敵は・・・魔界の住人に他ならん。未だどちらかの界が無くなっていないという事から、両者の力は拮抗していると考えてよいだろう。その様な敵を想定しているからこそ悠の力を欲したと考えれば、一応の説明にもなる」


事態の深刻さに室内がしんと静まり返った。雪人は内心の怒りが目に表れているし、朱理も志津香にどう説明したものかと熟慮している。仗は面白そうな顔をしているが、その隣に居る亜梨沙の顔は強張っていて青くなっていた。そんな皆を見かねて焦りを浮かべた真が匠に問い掛けた。


「ど、どうすべきでしょうか? 防人教官!」


「・・・今はナナナ殿の回復を待って、その後ナナ殿に直接聞くしかあるまい。それに、我らに出来るのは今の所情報を集め、連絡が繋がった時に悠に遅滞無く伝える準備をする事だけだ」


「何を悠長な事を仰るか!!」


バンとテーブルを叩いて雪人が匠を睨みながら立ち上がった。


「おいおい、真田さんよ。熱くなって取り乱すなんてらしくねぇんじゃねぇの?」


「脳味噌まで筋肉を詰め込んでいる戦闘狂は黙ってろ!!」


「・・・んだと・・・!」


売り言葉に買い言葉で今度は雪人と仗の間に険悪な空気が流れ出したが、それを匠が一喝した。


「やめんか貴様ら!!! 雪人、今ナナナ殿は具合を悪くされていると言ったはずだぞ!!」


「それがどうしたと言うのです? ベッドに寝ていても話くらいは聞けましょう?」


「正に話す事が危険だからこそ止めている! 冷静になれ!!」


だが今度は雪人も引かなかった。


「冷静? 俺はこの上無く冷静ですが? ・・・そもそも、防人教官は何か誤解されておられるのでは無いですかな?」


「誤解だと?」


「いかにも。我らの目指す所は一体何であるのかお忘れですか? それは究極の所、異世界の救世でも子供の救出でも無く、悠が無事に事を終えてここに帰ってくる事ではありませんか? 神共が表面上、文句の付けようの無い綺麗なお題目を用意していようが知った事か!! 奴らが情報を隠して悠を都合の良い駒とするつもりなら、こちらも相応の手段を取らせて貰う!!」


「雪人ッ!!!」


「ぐっ!?」


匠の拳が振り抜かれ、雪人の頬を打ち抜いた。それは大の大人でも失神しそうな一撃であったが、雪人は倒れる事も無く匠を睨み返した。


そもそも雪人の言葉は匠にも確かにある感情なのだ。だからこそ匠は雪人を殴らざるを得なかった。


「・・・フン、今更学生でもあるまいし、殴られた程度で俺が考えを改めるとでもお思いか?」


「何・・・!」


「や、止めて下さい!!! 真田先輩も落ち着いて下さいよ!!!」


匠を羽交い絞めにしながら真が叫んだが、匠も大声を張り上げた。


「それが連合国家の最高級軍人の言葉か!! 答えろ雪人!!!」


「軍人なればこそ、目的を履き違える様な真似はしませんが? 防人教官こそ、やけにナナナの肩を持つのは『妖精フェアリーパウダー』で洗脳でもされましたかな?」


「貴様ぁ!!!」


「お止め下さい!!! 真田先輩、出て行って下さい!!!」


真を引き摺って再度雪人を殴ろうとした匠を朱理も加わって押し留め、雪人に退室する様に促した。


「ああ出て行くとも。こんな幼稚な言い争いなどやっておれん。・・・ご安心を、ナナナの寝所に押し入る様な真似はしませんよ。では失敬」


雪人は口の端から垂れる血を拭い、踵を返すとそのまま部屋を出て行った。


しばらくは匠の荒い息遣いが部屋に響いていたが、やがて落ち着いた口調で匠が口を開いた。


「・・・済まん、もう何もせんから放してくれ」


そんな匠が落ち着きを取り戻したと判断した真と朱理は匠の体を解放した。


「へっ、情けねぇな。ダンナが居なけりゃ『竜騎士』なんて言ってもこんなモンかよ。アホくさ、俺は帰るぜ。亜梨沙、帰って続きすんぞ」


「あ、轟虎将!!」


そう言って仗もサッサと部屋から出て行ってしまった。亜梨沙は残るべきか付いていくべきか迷ったが、今日の所はもう話し合いにはならないだろうと一礼して退室しようとしたが、ドアから出る前に振り向いて自分の気持ちを吐露した。


「・・・新参者が無礼を承知で言いますが、私は雪人さんの言い分も分かります。私は誰が死んでも悠さんには無事に戻って欲しいです。矮小で自己中心的だとは思いますが、それが偽らざる本音なんです。私達が認識出来る範囲はそんなに広くありません。それをこの世界の者でも無い人に掻き乱されるのは嫌です。・・・失礼します」


もう一度頭を下げ、亜梨沙も部屋を出て行った。そして室内に匠と朱理、真が残された。


「2人とも済まなかった。雪人に図星を突かれて逆上するとは・・・我が事ながら情け無い・・・」


「いえ、でもこんな事はこれきりにして下さい」


「今はどんな情報が出て来ようと、神崎先輩が帰って来られる訳では無いのですから天界との接点は切らない方が良いはずです。・・・勿論、真田先輩もそんな事は百も承知で言ったのでしょうけれど」


朱理の言葉に匠は大きく溜息を付いた。


「はぁ・・・仗の言う通りだな。ただ一人、悠が居ないだけでこうも纏まらんとは・・・。俺もいつの間にか悠に依存していたらしい」


「・・・正直、戦闘が殆ど無い現状なら私も神崎先輩が居なくてもそれなりに上手くやれるのではないかと思っていました。しかし、いつの間にか神崎先輩は私達の精神的支柱となっていたのですね・・・。志津香様をお慰めする事もままなりません。小賢しい事を考えていた自分が恥ずかしいです」


「後ろ向きな事を言っていても始まりません。今はナナナ殿の回復と悠さんからの連絡を待ちましょう」


悠の不在は時を追う毎に大きく、そして重く圧し掛かっていた。如何なる時もぶれない悠の存在は皆の一種の精神安定剤の様な効果も持っていたのだ。


「ああ、そうだな。では解散しよう。・・・俺は後で雪人に会って来る」


「少し時間を置いた方がいいですよ、防人教官」


「うむ」


結局、会議はしこりを残したまま解散する事になったのだった。


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