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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第五章 異世界修業編
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5-97 奸計

「・・・で、抜かりは無いと言うのだな?」


ミーノス王国公爵、ディオス・マンドレイクは深く椅子に腰掛けて配下であるカーライルに確認をとった。


「はい、彼の者達は手練れではありますが、何処までも手が届く訳では御座いません。王都に居る間はフェルゼンは手薄になりますし、ローランめは普通の人間です。同時に攻められて両方を守りきる事は叶いません。そして、どちらか片方だけでも落とせば我らの勝ちなのですから」


答えるカーライルの顔には強い自信が窺えた。此度の策はカーライルが立案した、針の穴ほどの隙も無いと自負する自信作である。


「そうは言うがな、前回の策もお前の自信作では無かったかな、カーライル?」


だがディオスの言葉は冷たい刃となってカーライルに突き刺さった。カーライルは内心では顔をしかめながらも、表面上は恭しい態度を崩さずに述解する。


「い、いえ、先の策は確かに私の自信作では御座いましたが、世間の噂を信じ過ぎました。悪名高い『影刃シャドーエッジミロ』があれほど弱腰とは思いませんでしたので・・・。所詮は下賤な暗殺者アサッシン、信用するには値しないと言う事でしょう。ですが、今回は閣下の為なら命をも投げ出す覚悟の忠臣のみを用いて事に当たります。必ずや成し遂げてくれる事でしょう」


カーライルの話す内容を聞く者が聞けば目を剥いたであろう。それはミーノスに激震を与えた『黒狼騒動』と『影刃衆』の暗躍がディオスの指示の下に行われた事を指す内容であったからだ。


「本来、このパーティーに奴を呼ぶ必要など無かったのだ。あの時彼奴が死んでおればな・・・だが、それがたった2人の冒険者が絡んで来ただけで全てが崩れた。此度も同じ轍を踏むまいな?」


「勿論で御座います、閣下。今回の仕掛けは半年も前から練られたもの。本来ならば彼奴如きに使うには惜しいほどの代物で御座います。今回の仕掛けはそもそも殿下の――」


「カーライル!!」


ディオスの叱責にカーライルが口を噤んだ。


「例え屋敷の中と言えど軽々しく口にすべきでは無い。どこに目や耳があるか分からんのだからな」


「も、申し訳ございません、閣下!!」


「・・・まあよい。それよりも、当然理解していようが、彼奴の一族は悉く殺し尽くせ。生まれたばかりの乳飲み子から屋敷に仕える者達も全てだ。・・・だが、ミレニアだけは殺すなよ」


「心得ております。兵士共も主君の奥方を抑えられては白旗を上げざるを得ないでしょう。その後殺されると分かっていても何も出来ますまい」


ディオスの顔に好色そうな笑みが浮かんだ。前々から目を付けていたミレニアを手に入れる事がようやく叶うのだ。下級貴族の家に生まれた者にまで目が行き届かなかったのは自分の失策であったが、年を経て、更に成熟度が増したミレニアが手に入るのならば溜飲も下がろうというものだ。元公爵夫人であれば自分の妾にしても見劣りはするまい。


だが、そこでディオスは表情を引き締め直した。


「だが決して油断するなよ? 彼の家には貴族社会の中でも怪物と言われたフェルゼニアス家先代当主に仕えた『無貌のアラン』が居る。奴らが生きている間は儂も手を出す事は出来なかったのだ」


「畏まりました。念には念を入れて、フェルゼンへは私が自ら赴くつもりです」


カーライルは口ではそう言いながらも、アランなどという過去の遺物にそれほど注意を払ってはいなかった。現に当主が代わってから、彼の老人が表だって何かをした事は無いのだ。恐らく先代の死去と共に牙が抜かれてしまったのだろうと、内心では老いた者達を嘲笑っていた。そしてそれは目の前の老人も例外では無かったのだ。


(フン、いつまでも過去の栄光にしがみつく愚物が。見ていろ、今に貴様の家も我がサリンガン家が飲み込んでくれるわ!! その時には精々哀れな声で泣くがいい!!)


対してディオスはアランの全盛期を見て来た者として、その恐ろしさを身に染みて理解していた。先代当主の後ろに控えるアランの何もかもを見通す様な目は、ディオスの脳裏に深い恐怖を刻んでいたのだ。


だからこそディオスはフェルゼン攻略という大任を自らでは無くカーライルに任せてしまった。自分ではパーティーに出席するから不可能なのだと理屈を作っていたが、無意識の部分でアランに対する恐怖がディオスをフェルゼンから遠ざけていたのだ。


(此度の策が成功すれば、マンドレイク家はこの先100年の栄華が約束されよう。その為の礎になって貰うぞ、ルーファウス殿下、そしてフェルゼニアスの小倅こせがれ・・・)


空を睨むディオスの目には、目前に迫ったマンドレイク家の繁栄だけが映っており、天井の細い隙間に気付く事は無かった。

ここで五章を締める事にします。次回から何話か修行の合間のエピソードの閑話を入れて、その後人物紹介、用語解説、あらすじと続いて、第六章に行く前にその頃の他の場所の様子を書いた閑章を書いてから第六章に行こうかと思います。


内容は蓬莱、ノースハイア、エルフ、ドラゴンの各勢力の話になるかと思います。


久々に出て来る人達も居ますので、愛でてあげて下さい。

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