1-27 会議本番5
お茶が済んで時計の針が午後5時を指す頃、再び会議は再開された。
「では会議を再開します」
朱理がこれまでの質疑応答で決定した事柄を並べていく。
「神崎先輩が異世界に行くという事は決定として、あちらでする事と行く前にこちらで済ます事を確認させて頂きます」
そういってボードにまとめた事項を書き込んでいった。
★異世界での目的、指標
・神崎 香織様の捜索
・異世界人の保護
・業の低い人(悪人)の更生か排除
・邪神悪神の排除
・強制召喚の停止(原因の究明、解決含む)
・連絡可能にする為に、心通話の使用(1日1回以上)
・それによる隔界心通話の獲得
・次元転移の獲得
「今西城がまとめた物で俺はいいと思うが、何か見落としはないだろうか?」
悠が尋ねると、雪人が挙手してナナナに向き直って尋ねた。
「異世界人の保護とはどうするのだ?匿うにも、悠には拠点が無いが?」
ナナナはにんまりとして答えた。
「それについてはナナ様からユウさんとレイラさんに贈り物があるみたい。だから大丈夫だって」
「・・・そうか、神がくれる何かなら、まぁ悪い物では無さそうだな」
腑に落ちない物を感じるが、それで一応雪人は引き下がった。
「ああ、失念していた。この世界では無いのだから、拠点は必要だな」
悠も合点がいって頷いた。
「あと、向こうはいい人は今はあんまり居ないから、人を見る時はくれぐれも慎重にね。甘い言葉で拠点を用意するなんて言って来る人なんて特にね」
「ああ、了解だ」
「では次はこちらの世界で済ませて頂きたい事柄です」
そう言って朱里はまた新しく案件を箇条書きにしていく。
★こちらの世界で済ます案件
・民衆への発表(仮目的の設定)
・軍への通達(同上)
・官舎引き払い
「公的な物のみですが、私的なものは個人で消化して下さい。予定はなるべく詰め込まず、時間を作りますので」
「分かった。そうしてくれると助かる」
悠とて木石から生まれた訳では無いので私的な付き合いもある。特に軍関係では。
「民衆への発表が明日なら、軍への通達も明日行った方が良かろう。『妖精の粉』の使用時にこの件も入れられないか?」
「いいよ、2度に分けるのも面倒だからね」
ナナナは快諾して言った。
「それと、官舎の引き払いについては、荷物の整理は大体終わっているからいつでも大丈夫だ」
「了解しました。では、5日後に引き払う旨、軍部には明日午後にでも伝達しておきましょう」
朱理の言葉に悠は頷いた。
「仮目的とは要するに悠を旅立たせる事の名目を考える事だな。まぁ、元々の通り、旅に出ると言っていいと思うが。単にそれがこの世界では無い事を言わないだけだからな」
「そうですね、名目上は世直しの旅とでも言えばいいでしょう。聞いた人間は龍の残党狩りとでも誤解してくれるでしょうし」
流石に頭も口も良く回る雪人と朱理だった。
「これでこちらとあちら、両方の予定は立ったか。・・・それにしても、代名詞で言うのも分かり辛いな。ナナナ殿、あちらの世界に名前は無いのか?」
「う~ん、それも情報が封鎖されていて分からないんだよね。ユウさんと連絡が付くようになったら、ユウさんから伝えてくれる?私達も知らないから助かるな~」
「ああ、連絡が付き次第伝達しよう」
「こんな所でいいんじゃないか?」
悠の返答で語るべきを語ったと感じた匠がそう切り出すが、志津香が挙手してそれを遮った。
「あの・・・最後の夜に、皆さんで送別会をしませんか?別れを惜しみたい気持ちもあるでしょうから」
自分が、とは言えない志津香であるが、雪人と朱里は敏感にそれを感じ取った。
「いいですね、精々派手に送ってやりましょう」
「私も賛成です。手配その他はお任せ下さい」
雪人が皆に音頭を取り、朱理がそれを実務的にまとめ上げる。
「では出発前日の午後6時開催予定としておきますので、皆様はその時間帯は開けておいて下さいね」
そういう事になった。
「では今日の所は俺が悠を借りよう。悠、お前の知っている店に行くんだろう?可愛い女はおるか?」
「さてな。元軍人の男が一人居るのは確かだが」
「・・・貴様に期待した俺が馬鹿だったよ・・・」
「ああ、本当に馬鹿だな」
「貴様は本当に性格が悪いな」
「何せ、つるむ相手が悪かったからな」
口数が多くないはずの悠も雪人となら延々と悪態を付き続けられるのも、本人の言う通り、朱に交わった結果なのかもしれなかった。雪人が聞いたら、「それはあいつの方だ!」と反論したであろうが。
そうして皆と別れ、二人は秋山の店に向かったのだった。
「自分も付いて行こうと思ったんですが、真田先輩に「今日は済まんが二人だけにしておいてくれ」って言われちゃいましたけど、防人教官は何かご存知ですか?」
「・・・ああ、雪人も覚悟を決めたという事だな」
《ホッ、辛い事じゃが、真に友人と思うなら、乗り越えなければならんのぅ》
「?何の事です?」
「悪いが俺からは話せん。これは二人の問題だからな」
「・・・分かりました」
真はその事情が気になったが、匠の目が真剣なのを見てとって追及を諦めた。
「全く、真田も口が回る癖に、肝心な事は言えんのだからな・・・」
《それだけ相手を大切に思っておる証拠ではないか。お主もまだまだ小憎よの》
「違いない」
そうして匠とプロテスタンスは二人で苦笑しあった。
流れ的にBでLな気配がしますが違います。タグについて無いですから~
期待した方はゴメンナサイ。