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1-26 会議本番4

少し息抜き回。つまり意訳すると犠牲者は真です。

「ナナナ様、お疲れ様でした。これから休憩を挟んで多少内輪の話し合いをしますが、ナナナ様はお疲れでしたらここまでで結構ですよ?」


「ここまで参加したからには、最後まで参加させてもらうよ。お願いする立場なのはこっちだし。邪魔なら外そうか?」


「いえ、構いません。後ろ暗い相談をする訳ではありませんからね」


「ありがとう。なるべく静かにしてるから」


「では、3時も過ぎましたから、軽くお茶に致しましょう。男性陣は軽食がよろしいですか?」


「そうだな・・・頂こう」


雪人が男性陣に確認を取ってそう伝えた。


「では、私はお茶の用意をして参ります。皆様、しばしお待ち下さい」


この会議に余人を交える訳にはいかないため、侍女に任せず朱理は休憩の準備に向かい、退室していった。

束の間、皆の緊張が和らぎ、歓談を始めるのだった。


「ふぅ・・・さて、ここまで決まれば後は詳細を詰めるのみだな。やはり少人数だと議論の流れが速い。俺好みだ」


雪人は目の間を揉みながらそう告げると、悠もそれに続いた。


「即断即決が真田竜将の売りというのが世間一般の認識らしいからな」


「悠、俺がそんな決断を出来るのも、志津香様がいらっしゃるからだ。でなければ、俺のような人間は精々閑職行きだな」


「牢獄行きでなくて良かったな」


「貴様とは一度ゆっくり話し合わんといかんようだな」


「まぁまぁ。だが、この辺りが民主制との一番の差かもしれんな。勿論、信頼出来る皇帝陛下がいてこそでありますが」


「防人様、ありがとうございます」


匠の言葉に志津香が微笑んだ。確かに、愚鈍で卑小な人物が皇帝であったりすると、一気に国の全てに暗い影が差すという欠点があるが、聡明で善良な人物がその座にある限り、専制国家はとても住み易い物になるのだ。民主制は特定の人物に頼らなくても良いという利点があるが。


「この国は全世界的にみても稀なくらい、カルマの優れた国だよ。沢山の人が亡くなったのは悲しい事だけど、生き残った人達が必死に支え合って生きようとしてる。・・・これが業の低い所だと、自分の事だけ考えるようになって、人と人とが憎しみ合いの果てに絶滅しちゃう事もあるんだよ?」


天界で世界の全てを見て来たナナナの言葉は重い。その世界の住人次第で、そこは天界にも魔界にも変わるのだろう。ナナも言っていたが、業には後天的な要素も大きいのだ。


「そのような愚かな真似は出来ませんわね。私も気を引き締めて頑張ります」


「我らもそれをお支え出来ればそれに勝る喜びはありませんな」


「はい、俺も頑張ります!」


匠と真がその言葉に続いて思いを新たにした。が、雪人がにやりとしてそれを見て言った。


「真は西城どころか妹達の尻にも敷かれているからなぁ。志津香様をお支え出来るのであろうな?」


「ちょ!?真田先輩!こんな所で言わなくてもいいじゃないですかっ!!」


「そこは惚けるか軽く否定して欲しかったな。まるっきり図星を指された人間の態度そのままだと、ちとからかいがいが無い」


「俺は別に西城や妹になんて尻に敷かれてなんて・・・」


「私がどうしました?」


「おわぁぁぁあああ!!!」


尚も真がグチグチ反論していると、お茶の準備を整えた朱理がカートを押しつつ戻って来た。


「未熟者め。同格にまで出世してまだ鍛え方が足りんようだな」


匠が取り乱す真を嘆かわしそうに見ながらそうこぼした。志津香はそんな取り乱している真になんとなくシンパシーを感じていた。いつもは自分がされているからであろう。決して羨ましくてみている訳では無い。


「真は陰でそんな風に私の事を思っていたのですね・・・朱理は悲しくて悲しくて、うっかり皇都中に『千葉虎将は10歳の時、犬に襲われて失禁した(画像付き)』なんて怪文書が出回ってしまいそうです。しくしく」


嘘泣きしながら脅迫する朱理に真が叫んだ。


「なななななんでその画像がっ!?消したって、消したって言ったじゃないかぁあああ!!!」


「え?バックアップを取るのは基本ですけど何か?」


がくりと俯いて真は黙った。


真の名誉のために言っておくが、前触れもなく漏らした訳では無い。いつも通り3人で遊んでいる時に、野犬に襲われたのを、真が身を張って二人を庇ったのだ。幸い、すぐに近くの大人が気が付いて事なきを得たが、それ以来真は度々その件でからかわれたのだ。しかし、それは朱理にしてみれば、ずっとその事を忘れていないという感謝の現れでもあったのだが、そんな分かりにくいものが、探知能力は高くても機微には疎い真に分かるはずもない。


「貴様らはいくらなんでも志津香様の御前で砕け過ぎだ」


匠が際限無く緩んで行く空気に渇を入れる。


「失礼しました。ほら真、お前が原因なんだからお前も謝れ」


「申し訳ありません防人様。ほら真、謝りなさい」


「だからなんで俺が一番悪いみたいになってるんだよ・・・ぐぐぐ・・・申し訳ありませんでした・・・」


「ご苦労様です・・・」


前半を口の中だけで言って、結局謝る真なのだった。


「ささ、皆様、しばしお口は喋る為でなく、飲食に使ってくださいね」


そうしてささやかなお茶会で一同和むのであった。

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