表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/1111

1-25 会議本番3

「では次に聞くべきは、全てにかかって来る連絡と帰還について、ですね」


資料にも、


・連絡、帰還の可否


とある。


「正直に言って、現時点では帰還の目途は立ってません。向こうに送るだけならまだしも、向こうから送るとなると、あちらに協力者が要るの。それはユウさんに任せるとしても、ユウさんにもまだそういう能力――時空転移オーバーテレポーテーション隔界心通話ハイテレパシーは使えないはずだよね。だけど、連絡に関しては普通の心通話テレパシーは短距離なら竜騎士同士であるなら出来るみたいだから、しばらくの間向こうの世界に留まってもらえれば隔界心通話ならそれほど掛からずに使えるはず。こちらから飛ばす時にパスを作るから。ただし、その頻度についてはやってみないと分からないの。週1回かもしれないし、月1回かもしれない。あと、時空転移は難度が高いから、使えるようになるまで1、2年くらいは掛かってしまうかもしれない。連絡と帰還に関して私が言える事はそのくらいだね」


「つまり要約すると、帰還は出来ても1~2年先で、連絡に関してはおそらく出来るようになりますが、頻度は週1~月1回くらいになりそうだ、という認識で良いですか?」


朱理の言葉をナナナは肯定した。


「うん。あと、心通話はなるべく1日1回は試してね。能力が強化されやすくなるから。で、離れた世界同士で連絡を取り合う事で時空転移の習得も早まるよ。お話の相手はマコトさんが一番良いと思う。探知も得意みたいだから、繋がりやすいと思うし」


「俺ですか?」


「そう。マコトさんは現時点でも転移テレポーテーションの前触れを感知出来るから、隔界心通話を感じる事で時空転移の方法も解析出来るかも。レイラさんよりそれが先に分かったら、教えてあげてね」


《ふっ、任せろ!》


《まぁ、自力で出来るようになるけどね、私は》


ガドラスがレイラに教えるなど滅多に無い事なので張り切っているが、レイラの返事は冷たい。


「分かりました!帰路は自分が全力で探します!!」


「ああ、頑張ってみてくれ。俺も色々試してみよう」


真も自分が悠の力になれると分かって気合いを入れている。


「しかし、心通話が強化されるなど、聞いた事の無い話だな。今まで使って来たが、距離の伸びも微々たる物だ」


最初期から大戦に参加していた匠が呟いた。離れた相手と会話するという能力は戦場では重宝する。しかし、連絡用の機械もあるので、それほど多用された訳では無いし、会話出来る距離も精々1キロくらいだ。まして、離れた世界との距離など見当もつかない。


「あくまでユウさんが向こうにいる事が前提だよ。パスを通して練習なんて、普通は他の世界と繋がっていなくて出来ないから。だから隔界心通話は神の領域なんだよ。例えて言うなら、今までは持久力を鍛えたいのにずっと腕立て伏せをしていたみたいな感じで、これからはちゃんと走り込みをするっていう感じかな?」


「なるほど、言わんとしている事は何と無く分かるな。つまりは努力の見当違いか」


その例えに匠はうんうんと頷き、プロテスタンスが嬉しそうにのたまった。


《ホッホ、言いえて妙じゃな。これは他の事でも応用出来るかもしれんぞ》


「話を戻しましょう。連絡については、神崎先輩に繋がらなくなった時の為に天界にも連絡する手段が欲しいのですが、ナナナ様にこの国に逗留して欲しいというのが付随してあります」


「それは私の一存では決められないから、あとでナナ様に聞いてみて返事をするわ」


「ならばこの件はこれまでに。次は・・・神崎先輩の神への転生についてです」


・神への転生とその時期


「これは正直、今は聞く必要が無いかもしれませんが。神崎先輩が無事救世を果たしたら、すぐに天界に連れて行かれてしまうのでしょうか?」


「ううん、違うよ。これは本人の希望通りの時期になるの。この件が終わってすぐって言うならすぐだし、人間としての生を終えてからと言うならその時だね。ただ、今は保留中だから、向こうへ行ったら当然その間は神様には転生出来ないよ。向こうで死んでも出来なくなると思う。なぜか、皆魔界に堕ちるみたいだから。気を付けてね?」


「ああ、了解だ・・・それと、拒否は出来るのか?」


「ごめん、それは出来ないの。そもそも神様になるくらいの人間は本当に世界に一人居るか居ないかくらいだし、私たちが勇者の素質を持つ者――エインヘリヤルを鍛えているのも、神の軍として魔神や悪魔と戦ってもらうためなの。こっちは拒否出来るけどね。だから、ユウさんみたいに戦いに長けた人間にはどうしても神様になって欲しいの。この件の異世界の魂が魔界に堕ちるっていう事は、魔界の軍勢が力を付けてるっていう事だから」


一つの世界の魂が全て魔界へ行って魔神や悪魔になるなら、その数たるや膨大であろう。


「天界と魔界は争っているのか?」


雪人は軍人らしく、その事に気付いた。その事に対し、ナナナは顔を顰める。


「あちゃあ、ごめん!この事はこれ以上聞かないで!ユウさんが神様になる時はちゃんと説明するから!」


「ああ、分かった。両親が望んで戦っているというのなら俺が言う事は無いからな」


悠は特に執着を見せずに引き下がった。今言った通り、両親が無理やり戦わされているなら天界に乗り込んででも止めさせるつもりであったが、先程の二人からは全くその様なそぶりが見られなかったのもその言葉を信じた要因の一つだ。残りは正直に話しているナナナに対する信頼だろうか。


「ではこの話はここまでに。最後に、神崎先輩が抜ける事を民衆に自然に伝えるために、『妖精のフェアリーパウダー』を使わせて頂きたいという事です」


・『妖精の粉』の使用の可否


資料の最後のページにはそう書いてあり、使うタイミングの推察や範囲の確認などが記してあった。


「大丈夫だと思う。『妖精の粉』は元々そういう風に、物事の摩擦を無くすために使う物だったから。文字通り、『妖精のせい』って事でね。気軽にほいほい何度もとはいかないけどね」


「はい、それは了解しております。使用に関しては、志津香様に裁可を得る事となっておりますので」


「ええ、決して悪用は致しませんわ」


志津香はその言葉を受けて、しっかりと頷いた。


「うん、シヅカなら安心だね。と言っても、この場の誰もそんな悪い事に使うとは思ってないよ。一応私も従属神とはいえ神様だし、みんなちゃんとしたカルマを持っているのは分かるんだから」


ナナナもその言葉を認可した。


「範囲に関してはこの前と同様に、都一帯。時期に関しては、明日にでも使用して公示した方がいいですね。急過ぎると混乱が起きないとも限りませんし。時刻は正午が妥当と思われますが、何かご意見はありますか?」


皆を一瞥し、異論が無い事を確かめてから、朱理は志津香に改めて問うた。


「志津香様、明日正午、高天原たかまがはら一帯に『妖精の粉』のご使用をお認め頂けますか?」


「はい、東方連合国家皇帝、天津宮 志津香の名において許可します。ナナナ様、よろしくお願いします」


「はい、任されたよ。今回は睡眠効果はいらないから、すぐに公示しても大丈夫にしておくね」


「有難う御座います」


そうして、悠を送り出すための会議は終了したのだった。

この話を書くのに今までで一番時間がかかりました。


理論を考えるのに3割・・・・・・・・・・ナナナの口調に慣れるのに7割;

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ