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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第五章 異世界修業編
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5-68 フェルゼンの休日3

「バルド選手ダウン!!! 立てるか!? 立てるのかっ!! あーっと立てない!!! バロー様、全員撃破ッ!!! 審判さん、時間は!? 59!? 59秒!? えっ、ウソ!? すっご~い!!! バロー様、秒殺ですよ秒殺!!! 見事ユウさんとの約束を果たしましたぁ!!!」


ウィンの宣言でこれまでで最も大きな歓声が格闘場に巻き起こった。大半の人間が賭けを外してしまったにも関わらず、その顔には良いものを見たという深い満足感があった。


「ゼェ、ゼェ、ゼェ!! く、クソが、やってやったぞこんチクショーーーーーッ!!!」


ベロウが叫びながら剣を突き上げると、観客達からバローを讃える声が唱和する。


「「「バロー! バロー!! バロー!!!」」」


「格闘場にバロー様を讃える声が響き渡っておりますが、ここで解説のお2人に総括をお願いしたいと思います!! いかがでしたか、今の試合は?」


「ギリギリの及第点だな。初めに最も厄介な槍使いを倒したのはいいが、最後の斧使いに時間を掛け過ぎた。次はもう少し速やかに戦って欲しいものだ」


「ヤハハ、ユウ殿はバロー殿に大きな期待をしていますからね。でも手加減して秒殺出来たのですから、バロー殿もまだまだ強くなると思いますよ?」


悠の厳しい発言をハリハリが包み、ウィンが盛り上げるという役割分担も板に付いて来ていた。


「手加減!? バロー様は手加減してらっしゃったのですか、ハリハリさん!?」


「当然です。バロー殿が本気を出してしまったら死人が出てしまいますからね。せっかくお集まり下さった皆様に後味の悪い思いをさせる訳には参りません。そもそもバロー殿は無益な殺生を好まない、心優しいお方ですから悪人でも無い限りは無闇に剣を抜く事はありませんです、ハイ」


ここぞとばかりにベロウを持ち上げるハリハリに、ウィンも追従して声を張り上げる。


「皆様、お聞きになりましたでしょうか? 魅せながらも私達を気遣う大きな器!!! 正に英雄の呼称に恥じない戦い振りを示して下さったバロー様に今一度大きな拍手をお願い致します!!!」


ウィンが促すと、万雷の拍手が会場を席巻した。良く見れば敗れた対戦者達もバローに向き直って手を叩いている。


「戦いが終われば遺恨を残さず。この美しい光景にこれ以上飾る言葉は不要でしょう!!! 今はただ私も一観客としてバロー様を讃えたいと思います!!! ここまでの解説はユウさん、ハリハリさん、そして実況はウィンちゃんでお送りしました!!! ウィンウィン!!!」


「「「ウィンウィン!!!」」」


ヤケになったのかベロウもそのコールに参加し、ハリハリもちゃっかり混ざって会場の笑いを誘っていた。後ろでは子供達も楽しそうに混ざっていたが、智樹は若干恥ずかしそうだった。


《ユウ、ウィンウィンってやらないの?》


「・・・次があったらな」


そうして全員が満足の内に格闘場特別戦は幕を下ろしたのだった。




「お疲れ様でーす!! 今日はありがとう御座いました、ユウさん、ハリハリさん!!」


ウィンが上機嫌で悠とハリハリに握手を求め、2人も順に手を握った。


「いや、こちらも良い物を貰えたから別に構わんよ」


「ヤハハ、やはり大勢の前で喋るのは楽しいものですね。ウィン殿も頑張って下さい」


悠が貰った良い物とは拡声機能付きの魔道具である。予想以上の収益に気を良くした格闘場のオーナーが悠が所望していると分かるとすぐに持ち帰り用に包んでくれたのだ。恒常的な効果を有するこの魔道具は決して安い物では無いのだが、ベロウの奮闘により多数の人間が賭けを外した事と、途中入場者の収益によってそれでも十分お釣りが来る程度には潤っていたのだった。


オーナーは盛んに次回の出場を依頼して来たが、それは本業があるという事で未定として断っておいた。ハリハリが上手く取り成してくれたので、しこりを残す様な結果にならなかった事が救いであろう。


「毎回出てしまってはありがたみが薄れてしまいます。ここはまたしばらく日を置いて、それからやるべきですよ。会場も全員は入りきらなかったでしょう? 出来れば貴賓席なども欲しいですし、もう少し子供や女性向けの演目も考えるべきかもしれません。せっかくこの街はミーノス第2の都市なのですから、健全さを保ちつつ街の発展に力を注げばフェルゼニアス公爵からも支援を受けられるかもしれませんよ?」


「なるほど! ハリハリさんの仰る事は一々ごもっともですな。街を荒らさずに発展出来る方法を職員一同で考えて、一度フェルゼニアス公爵様にお伺いを立ててみようと思います! 本日はあなた方と良縁を結べて僥倖でした!」


オーナーの老人は両手で包み込む様にしてハリハリの手を握って感激を露わにしたのだった。




「けっこうおもしろかったな!!」


「うん、おかしもたくさんもらえたし、みんなよろこぶよ!」


「でもあの掛け声はちょっと恥ずかしかったなぁ・・・」


「ヤハハ、トモキ殿、ああいう時は恥ずかしさは全て忘れて楽しんでしまえばいいのですよ。可愛いではないですか、ウィン殿は」


「・・・ま、まぁ・・・可愛い人でしたね・・・」


「おやぁ~? トモキ殿はああいうタイプがお好みでしたか!? いやぁー、若いですなぁ!!」


「ちょっ!? ぼぼぼ僕は別にそんなつもりじゃ無くてですね!?」


「俺はああいう騒々しいのより、もっと出るとこ出てるお淑やかな女がいいね。お前もそう思うだろ、ビリー?」


「・・・はぁ・・・ウィンちゃん・・・」


「・・・や、スマン。何でもねぇ・・・」


それなりに楽しめた男性陣は待ち合わせ場所の中央広場へと向かっていた。昼近くになると流石に観光地にしてミーノス有数の大都市であるフェルゼンは賑わっており、真っ直ぐ進むのも困難な人混みであった。


「この混みようでは俺達が全員入れる食事処があると思うか?」


「厳しいかもしれねぇな。特に格闘場に詰まってた客まで一斉に出て来ちまったからだろうが、エライ混みようだぜ」


「それならば少し時間を外してから入ればいいのでは? 合流してから街を散策しているだけでもそれなりに時間は潰せると思いますよ?」


「そうだな、まずは合流して、それから考えれば良かろうよ」


結局良い案も無いので、男性陣は合流してから考えようと決めて再び中央広場を目指したのだった。

これは後々のフラグという事で。

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