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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第五章 異世界修業編
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5-61 顔合わせ

新たにハリハリとリーンを加えた一行はその夜、『虚数拠点イマジナリースペース』の中で初顔合わせとなった。


「カロンと申します。以後よろしくお願いします」


「アタシは娘のカリスだよ、よろしく!!」


「師匠の弟子となったシュルツだ、よろしく頼む」


「リーンと言います。若輩者ですが、よろしくお願いしますね」


「そしてワタクシが謎の超絶吟遊詩人のハリハリで御座います!!」


ハリハリがジャジャン! とリュートを掻き鳴らした。どうもハリハリは子供達に受けがいいようで、周囲には年少組がワイワイとたむろっている。


「貴殿が『鋼神』カロン殿か。ご高名は伺っている」


「名高い『双剣』に知られているとは光栄ですが、今の私はただの鍛冶師カロンです。過分な呼称はご勘弁下さい」


「へへ、オヤジの二つ名はアタシが継いでやるよ!!」


「こら、カリス!」


「なんとなく、リーンとは縁がある気がしてたのよね。これからもよろしくね?」


「うん! ケイもまたお料理を教えてね? いくつか試してみたいお料理があるの」


「ええ、いいわよ」


「・・・くっ、なんて女子力の高い会話なんだっ!!」


「大げさね、神奈は・・・。アンタはまず野菜を下ごしらえ出来る様になる所から始めなさいよ」


「・・・胃袋を掴んだ人間が、一番強い・・・」


広間はこれまでで最も大きな賑わいをみせており、それを見た悠が手を一つ打って注目を集めた。


「皆打ち解けてくれて何よりだ。かなり大所帯になってきたが、俺は予定通り行動するつもりだ。その予定を語る前に、今日は新しく迎えた者達に俺の事情を話しておきたいと思う。もし、俺の話を聞いて付き合い切れぬと感じたならば、ここから出て行っても構わん」


悠の言葉に広間に緊張が満ちた。


「先に言っておくが、荒唐無稽な話であり、到底理解し難い部分もあると思う。だが一通り話終えるまでは黙って拝聴して欲しく思う」


言葉を切って見回す悠に意見を指し挟む者はおらず、皆無言で頷いた。


「では、聞いてくれ・・・そもそも俺はこの世界の人間では無い。それはここに居る子供達にしてもそうだ。そもそも俺が何故この世界にやって来たかだが――」


心中はどうあれど、皆悠の話を黙って聞き、悠の一人語りは続いた・・・








「これが俺の事情だ。つまり、俺の究極的な目的は世界を正し、そしてこの子達を親許に帰す事にある。俺にどれほどの時が許されるかは分からんし、世界にどれだけ時が残されているかもまた分からん。その為、俺は可能な限りの早さで事態にケリを付けておきたい。・・・長くなったな、静聴に感謝する」


「「「・・・」」」


詳細な悠の話を聞いて新参の5人は黙りこくっていた。意見を言おうにもあまりに聞きたい事が膨大過ぎて理解が追い付いて行かないのだ。最も悠との接点が少なかったリーンは話の半ば辺りから思考が停止気味であったし、カリスに至っては途中からうつらうつらと船を漕いでいた。


カロンは思案深げにしているし、シュルツはやはり驚いていたものの、悠の力を見ているのでそういう事もあるかと割り切っている。


逆に楽しそうにしているのがハリハリであった。


「ヤハハ、異世界の技術に神の御業ですか。実に創作意欲を刺激されます。是非一度もっと詳しくお話したいものですね」


「後日の『竜ノ微睡オーバードーズ』の時に時間は取れるだろう。俺もハリハリには魔法について聞きたい事もあるからな。資料はあるが、お前以上に魔法に詳しい者もそうはおるまい」


「構いませんよ、ワタクシにお答え出来ることでしたらなんなりと」


ハリハリが口を開いた事で緊張が幾分か緩和され、他の者達もそれぞれ質問を口にし、自分達の疑問を穴埋めしていった。


「そっか・・・私、ジオやサティより一つ年上になるんだ・・・」


「龍鉄は異世界の産物でしたか。なるほど、それならばこの世界に存在しないのも合点がいきます」


「師は異なる世界の戦士であったのですね。異世界の武技の神髄、学ばせて頂きます」


皆が納得を返す中、船を漕いでいたカリスの頭がカクンと落ち、その勢いで目を覚ました。


「んあ? ・・・ふぁぁ・・・腹減った」


「・・・カリス、お前という娘は・・・」


カリスの醜態に父親であるカロンが頭を抱えて赤面したが、カリスの口からは特に悪びれる事も無く言葉が出た。


「アタシは兄さんが悪い人だなんて最初っから思っちゃいないよ。要は、弱きを助け、強きを挫く。そしてアタシ達はそんな兄さんの手伝いをするって事でいいんだろ?」


「その通りだ。別に俺は全世界を敵に回して殺し合いをしたいのでは無いからな。改めるべきを改め、守るべきを守る。そして皆にはそれを支えて貰いたい」


「オヤジは深く考え過ぎなんだよ。心躍るじゃないか、クソッタレな世界の世直しをする集団の仲間なんてさ。当然アタシは付いて行くよ!!」


「別に付いて行かんとは言っておらん!! ・・・はぁ、時々お前のその能天気さが羨ましくなる・・・」


「ヤハハ、ワタクシはその為に付いて来たのですから聞くまでも無いでしょう?」


「師の進まれる道が拙者の進む道、どこまでもお供します」


「私は・・・」


他の4人が快諾する中、リーンだけが返答に窮していたが、それを悠が遮った。


「リーンに付いて来いとは言わん。修業が終わったら独り立ちするのも良かろう。ただ、俺達の事を内密にしてくれればそれで構わんよ」


「ありがとうございます、ユウさん!」


リーンは安堵を浮かべて頭を下げた。リーンは悠に恩義は感じているが、だからといって世界を視野に入れた悠達に付いて行くとなると中々答えが出なかったのだ。


「ではそれが確認出来た所で食事にするとしよう。ウチの恵の食事はあのフェルゼニアス公爵をも唸らせた逸品だ。きっと皆も気に入ると思うぞ?」


「ゆ、悠さん!! 過剰に言わないで下さい!!」


「サロメさんから聞いた話だと、恵は元々料理が出来る上に『家事ハウスキーパー』の才能ギフトを持ってるのよね? ・・・益々差が広がるわ・・・」


「もう、樹里亜まで!! そんな事はいいから手伝って!! 人数が増えた分、大変なんですからね!」


「あ、私も手伝うよ、ケイ」


「ありがとう、リーン」


結局、女性陣は全員恵の手伝いに行き、ついでに悠も手伝う為にその場を離れた。この面子の中で、恵の次に料理が出来るのが悠なので居ると居ないでは効率が全く違うからだ。逆に神奈などは効率を極端に下げるのであまり難しい事はさせて貰えないのだが。


「しかし、やはりワタクシとしてはバロー殿の方に興味を惹かれますね。ユウ殿は既に完成された英雄です。荒削りなバロー殿の方が語っていて面白いのですよ」


「言ってろ! 俺だって今度の修行でユウの小指くらいにゃなってやる!」


「言ってる事が小さいですよ、バローのアニキ・・・」


「分相応というものだ。片腕は拙者に任せてバローは耳垢でも穿っているといい」


「シュルツーッ! テメェ喧嘩売ってんのか!?」


「おい、あまり騒ぐな。馬鹿な事をしているとメシ抜きだぞ」


「「「・・・」」」


騒がしい男連中に厨房から顔を出した悠が一喝すると、皆慎ましく黙り込んだ。やはり胃袋を掴んだ者が最も家の中では強いのだった。

さて、5章も終盤に差し掛かりました。魔法使いのハリハリも加え、悠の陣容も整いつつあります。

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