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1-22 質問提起6

《まず、この世界がいくつもの層状世界で成り立っているのは本当ね。そして、天界、魔界もあるわ。ただ、そこがどんな場所で何をしているかについては私達も知らないの。そして、この層状世界は地面に聳えているんではなくて、宙に浮いてるって捉えてもらえるかしら? そして、私達の世界もそれと一緒で、別の場所に浮かんだ世界なの。この層状世界みたいにはなっていないけどね。人間の言葉では発声出来ないから、仮に『竜界』とでも呼んで頂戴。私達がそれを知っているのは、この世界に来る時に、俯瞰してそれを見たからよ。異世界に詳しいリュウから天界、魔界の事は聞いた事があるわ。・・・もう居ないけど》


少し悲しそうな気配を感じさせたレイラだったが、そのまま続けた。


《今まで竜騎士達にもその事は伝えた事は無かったはずよ。そもそもこの世界が層状だとは皆見て知ってはいたけれど、この大戦に関係あるとは思ってはいなかったから。でも、今にして思えば、ナナの言う事を信じるなら、ドラゴンは何らかの方法で世界の防護を突破したはずね。私達は遅れてこの世界に来たから分からなかったわ》


そう、世界に結界の様な物があるのなら、龍もそれに阻まれていたはずなのだ。レイラ達が来た時にはすでに穴を開けられていて気付かなかったのだろう。ナナも今から行ってもらいたい世界は強制召喚で加護に穴が開いているからこそ行けるという話であった。


「そうか・・・今の所、話には整合性があるな。・・・それにしても、俺達の世界とも共通する事が見つかるとは思わなかったな。今まで、龍を退ける事で精一杯で、どうやって来たのかまでは深く考えなかったし、そもそも世界防護結界の事も初耳だったからな」


雪人は唸った。今後、似たような事態を防ぐ為には、その辺りの事情も研究しなくてはならない。また同じ事が無いとは言い切れないのだから。


「まぁ、今は明日の事だ。一つずつ消化していこうか。まずは、異世界に行くには悠でなければならないのか、だな」


「実際、ここと同程度の戦闘が予想されるのなら、俺か真、防人殿、西城・・・あとは一応、轟の5人しか候補は無かろう。西城は陛下の護衛があるから除外して、4人か」


「ああ、俺達竜器使いでは荷が重いな」


悔しそうに雪人は悠の言葉を認めた。


「轟もあと5日で復帰出来るかは分からん。現状、俺、真、防人殿だろう。そして真は情報系で防人殿は国防を担っておられる。俺が適任であると思うが?」


「ふん、認めたくない所ではあるがな」


雪人は不機嫌そうだ。状況が選択肢を悠へと狭めてくる。


「今は質問の一つとして置いておこう。では次は異世界の救世とは何をするかだが、まぁ、これは大体分かる。ここと一緒なら、世界を滅ぼそうとする者を排除しろという事だろう」


雪人が質問の横に「脅威の排除?」と書き込む。


「それに、異世界人の保護だな」


匠の言葉に雪人は頷いた。そして先ほどの追記の下に「異世界人の保護」と書き込む。


「ああ。で、次がある意味最大の問題だが・・・帰って来れるのか、だ」


皆の顔に緊張感が浮かぶ。そう、行って世界を救えれば、まずは良しとして、帰って来れないのでは非常に困る。


「遠足は家に帰るまでが遠足だからな。きちんとそこは問い質すべきだろう」


雪人が場を緩める為に軽く言い、質問の前に赤で二重丸を付けた。


「それに伴って連絡だな。毎日好きなだけとは言わんが、せめて月一の定時報告くらいは聞いておきたい。向こうで困った時の助けになるかもしれん」


定時報告は無ければ無いで、それ自体が異常を示す報告にもなる。


「で、連絡と言うなら天界とも連絡を取りたい所だ。向こうで連絡出来ない事態になったとして、それを確かめる術が無いのではどうしようもないからな。これについては、ナナナ殿に逗留して貰えればそれで大丈夫だろうが、可能かどうかは分からんので、ナナ殿に尋ねるとしよう」


連絡経路を複数とるのも軍の基本である。


「次は・・・神、か。正直、なれるかどうかなどに興味は無いが、悠を持っていかれる訳にはいかん」


志津香が盛んにうんうんと首を縦に振っている。それを悠以外の皆は微笑ましく見守った。


「悠、お前神になりたいか?」


「特に」


「そうか」


良く考えると恐ろしいレベルの会話なのだが、二人ともまるで今日の昼何を食う? くらいの軽さで話している。真は少し呆れた表情をしているし、匠と朱理は苦笑している。なお、志津香は胸を撫で下ろしていた。


「ま、強制的に連れて行かれないのなら良しとしようか。悠を拝む事になるなど考えただけで笑える」


「やめろ、俺の徳が下がる」


「ぬかしやがれ」


悠と軽い遣り取りをしつつ、続いて雪人は議題を捌いていく。


「コホン。では次は『妖精フェアリーパウダー』の使用の可否だが、これは大丈夫だろうと思う。一度使っているからな。駄目でもゴリ押し出来ん事も無い。西城は無理だがな」


これにも皆納得した。あれば非常に助かるが、無ければ無いで仕方が無い。しかし、要請に応えての事なので、恐らく拒否もされないだろうと思われた。


「割とスムーズに進んだな。では最後に、情報の裏を取るための質問をと言う事で、天界に行ったと思われる家族の事を聞く、という事だな・・・」


そこでしばし雪人は言葉を切って、皆を見渡した。


「これについては俺からも頼む。可能なら皆の事も聞かせてやりたいが、無理ならここは悠に譲ってやってはくれないだろうか?」


雪人はあの虐殺の現場に悠と共に居た。そして悠の母親である美夜にその命を助けられたのだ。その為、この枠は是非とも悠に譲って欲しかった。


「俺は構わん」


匠がいち早く賛成した。


「自分も構いません」


真も当然の事と首肯する。


「私も構いません。志津香様、如何でしょう?」


「勿論構いませんわ。私は家族とはちゃんとお別れを済ませられましたもの・・・」


首を縦に振る朱理と、気遣わしげに悠を見やる志津香。


「皆の心遣いに感謝する」


悠は皆に向かって深々と頭を下げたのだった。


「では、聞けるかどうか分からんが、これを最初に聞く事にしよう。裏が取れればその後の情報の精度が増すからな」


そうして雪人は朱理へと向き直った。


「では西城、この後、質問案を清書して貰えるか。他の文官に任せる訳にもいかんのでな」


「はっ、了解です」


「質問順は以下の通りだ」


そう言って雪人はボードの右半分に質問順を書き連ねた。


・情報の裏付け

・悠以外の人間では駄目なのかという事についての整合性

・救世の内容

・帰還、連絡の可否

・神への転生とその時期

・『妖精の粉』の使用の可否


「これが妥当だと思うが、皆は異論があるか?」


どこからも異論が無い事を確認してから、雪人は会議を締めくくった。


「明日の質問は詰問では無い。であるが、例え神であろうとも騙されて手の平の上で踊らされるのは俺には我慢ならん。皆にもその辺りは良く吟味して貰いたいと思っている。では、閉会!」


会議は2時間少々で閉会となったのだった。

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