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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第五章 異世界修業編
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5-29 危険な家路

グロいシーンがあります。器官破壊とかが苦手な方は該当箇所はササッと通り過ぎて下さい。

「印は絶対に付いて無かった・・・じゃあ何でだ? 俺の表情? いや、俺は自分の手札すら見てないんだから違うはず・・・う~~~~~~・・・」


「ジオったら、まだ引きずってるのね」


「思考が柔軟じゃ無いのがジオの悪い所よね」


「自分の思考が堅いのならば、他の仲間に頼ればいいのだ。その為のパーティーメンバーだろう?」


「そうですね。私も何とか分かりましたもん」


そうリーンが言うと、ジオが愕然とした顔で問い質して来た。


「え!? り、リーンはコイツのイカサマが分かったのか!? ど、どうやったんだ!?」


「フフフ、それはね・・・」


「3人共、そのままゆっくりと歩け。・・・ここから5つ目の路地に殺気がある。僅かに武器を抜く音も聞こえたな」


「「「えっ!?」」」


「大きな声を出すな、そのままだ」


談笑する3人にそう言って悠は懐に手を入れた。


「明日の訓練の前倒しだ。待ち伏せされた状況、もし気付いたならどうする? 制限時間5秒」


急に振られて3人は必死に頭を回転させたが、あまりに急過ぎて頓珍漢な答えが混ざってしまった。


「ぜ、全員倒す!」


「た、立ち止まる!」


「逃げる・・・かな?」


「ジオは全滅、サティは下策、リーンが正解」


全滅と伝えられたジオが悠に食って掛かった。


「何で俺のだと死んじまうんだよ!!」


「相手の力量はお前達が気付ける範囲だから同等と仮定しよう。だがお前達は殺気と気配だけで数まで把握出来るのか? もし戦闘になったとして、自分達より遥かに相手の数が多かったら? 一人を相手にするのが精一杯なのに、同数以上の敵と戦ってどうする。だからいらぬ怪我などを負う羽目になる」


「うぐっ・・・」


「また、サティの立ち止まるとは一見良さそうに思えるが、何の状況打破にも繋がらん。立ち止まってどうするのかも考えずに立ち止まっては、相手に自分達は気付いたと教えてやるような物だ」


「は、はい・・・」


サティも悠の言葉に反論出来ずに素直に頷いた。


「よって今の状況ではリーンの逃げるが正解だ。相手の襲撃場所から考えて、あまり人に見られたくない者達だろう。人気の多い所に逃げれば簡単には追ってはこれまい」


「は、はい!」


悠に褒められて嬉しそうにするリーンに悠は続けて言った。


「が、今は俺が居る。相手の数が正確に把握出来、尚且つ相手よりも相当量実力が上回っていると確信出来るのならば、最上の手は・・・気付いている事を利用して奇襲を掛ける、だ。ジオ、躓いて転んだ振りをしろ。そして3人は固まってここで待て」


「な、何で俺が・・・!」


「全ての状況を利用しろ。お前は昼までは足を怪我していた。敵の情報網が緩ければ、相手はまだお前が足を怪我していると思っているかもしれん。それに、お前は他の女の子に地面を転がれと?」


「わ、分かったよ!!」


ジオは悪態をつきながらもそれを了承した。まさかサティやリーンに代われとは言えなかったのだ。


反面、リーンは悠の思慮の深さに感動を抱いていた。確かに自分達はまだ弱いのだ。何もかもを利用してでも、それが例え役に立たなくても努力しなければならない。


「路地まであと一つの所で転べ。2人は心配する風でジオを囲むんだ」


「「はい!」」


「クソッ、これで誰も居なかったら俺が馬鹿みたいじゃないか・・・うわぁっ!?」


悠はジオがあと一歩で辿り着くという所で見えない様にジオの足を払った。不意を突かれたジオはなす術無く転倒した。


「・・・~~~~~ってぇな!! 何しやがる!?」


「シッ!!」


チュィン!!!


「ギャッ!?」「ヒギッ!!」「あがっ!!」「なっ!?」


「えっ!?」


ジオが痛みから立ち直って悠に文句を付けた時には、悠は懐から投げナイフを一息で6本路地に向かって投げ込んでいた。それは壁に跳弾して死角にいるはずの伏兵達の体を貫き、悲鳴が上がる。


「奇襲を行ったら間髪入れず突入し、敵の更なる混乱を誘う」


言い捨てて目的の路地裏に悠が辿り着くと、そこには既に抜剣した男達が4人とナイフに貫かれてもがき苦しむ男が4人、路地に転がっていた。


男達に対して悠は無暗に突撃はせずに路地の壁を蹴り、更に反対側の壁を蹴って真上から突入する。


男達も迎撃しようとはしたのだが、狭い路地に広く展開する事が出来ず、仲間の体が邪魔になって悠の姿を追う事すら覚束ない。


降下しながら一人、降下した直後に2人を一撃で下した悠の前に居るのは髭の焦げた男であった。先ほどの宿で絡んで来た男の一人だ。良く見るとナイフが刺さった中に他の2人の男達も混ざっている。


「お、終わりましたか?」


音が静まったのを見計らって、リーンがひょいと路地を覗き込んで問うた。


「概ねな。宿から出た時に居なかったから一応警戒していたのだが、案の定だったか。良く覚えておけよ、こういう三下ほど半端に痛めつけると分かり易く復讐に走ったりする物だ。それを防ぐ為には・・・まぁ、別に言う必要も無いな」


悠は静かに路地の外を指差した。


「お前達にはまだ見るのは早い。もう少し路地の外で待っていろ」


「は、はい・・・」


リーンが慌てて首を引っ込めると、悠は髭面の男に向き直った。


「さて・・・」


「お、お、俺が悪かった!! も、もう2度とアンタにちょっかいは掛けないって約束する!! だ、だから助けてくれ!!」


「信じるに値せんな。酒が入った状態であったのならまだ情状酌量の余地があるゆえにあの程度にしておいたが、素面でも腐っているならば救い様が無い」


「す、すまねぇ!! ま、まだ酒が残ってたんだ!! それで仲間内で話している内に話がでかくなっちまって・・・も、もう酔いは醒めたから!! だから見逃してくれ!! こ、この通りだ!!」


髭面の男は武器をかなぐり捨てて土下座して悠に許しを請うた。悠はそれをしばらく見下ろし、やがて踵を返した。


「2度と俺の前に現れるなよ。もし現れたら、それがお前の最後の時と知れ」


そのまま悠は路地の外へと引き返そうとした。




「あ、ありがてえ!! ・・・本当にありがてぇ野郎だ・・・」




髭面の男は土下座の姿勢のまま、こっそりと懐に手を入れると毒を塗った投げナイフを取り出した。そしてそれをゆっくりと振り被り、悠の背中に投擲する。


(偽善者野郎が!! くたばれ!!!)


髭面の男の毒ナイフは狙いを過たずに悠の背中に吸い込まれて行き・・・クルッと振り返った悠の手甲に叩き落とされた。


「あ?」


「ギャアアア!!!」


弾かれた毒ナイフは転がっていた男の一人に突き刺さり、その口から悲鳴が上がる。


何が起こったのか理解が追い付かない髭面の男の視界が闇に落ちる。遅れて両目に走る灼熱感。


「ああああああああッ!!! あああッ、ああッ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーッ!!!!!」


「貴様らの様な屑はせっかくの更生の機会を自らフイにする。だからいつまで経っても屑なのだ。そんな目の濁った輩に目など必要なかろう?」


髭面の男の胸の上に足を置き、固定してから今投げ付けたナイフを抜き取ると、そこに貫かれた眼球が一緒に付いて来て男の口から更なる絶叫が上がる。


ナイフを回収すると悠はそれを振って血を払い、懐に仕舞った。そして転がっている剣を掴むと、手近な男のアキレス腱を剣で寸断していく。


連続して上がる悲鳴に他の男達の口から慈悲を乞う声が上がったが、それも全て途中で悲鳴に取って変わられた。


ナイフを回収し、アキレス腱を切り、またナイフを回収する。悠の行うそれは作業的であって全く悪意も善意もその顔から読み取る事は叶わない。


そして最後の一人が毒ナイフを食らった男だったが、その男が既に事切れている事を知ると、剣を捨てて路地の外へと出て行った。


「お、終わったのか?」


ジオはその言葉の中に殺したのかというニュアンスを含ませながら悠に問い掛けた。


「少々痛い目に遭わせはしたが、俺は誰も殺しておらんよ。同士討ちで一人死んだがな」


人が死んだという事実よりも、悠が人死にを前にして何の感情も浮かべない事の方がジオには恐ろしく思えて思わず一歩後退した。が、そんなジオを悠が叱咤する。


「臆するな、ジオ。貴様は男だろうが。2人が窮地にあれば貴様が斬らねばならんのだぞ」


「お、俺はビビってなんかいねぇ!! サティもリーンも俺が守る!!!」


「ならば乗り越えろ。別に人殺しや傷害に慣れろと言っているのでは無い。やる時はやるという覚悟を持て。それが強くなる第一歩になる」


「やる時はやる・・・覚悟・・・」


悠の言葉を噛みしめる様に口の中でジオは復唱した。


「いつかお前も覚悟を問われる時が来よう。その時に自分に恥じない答えを心に用意しておけ。それが最後にお前を助けるだろう」


「・・・」


悠はそれだけ言うと3人に背を向けた。


「最早襲って来る者も居るまい。さっさと帰るぞ」


そう言って歩き出す悠の背中を慌てて追い掛ける3人の脳裏には今日の出来事や悠の言葉が渦巻き続けている。


・・・こうして、3人にとって多くの出来事があった一日は終わりを告げた。


王都に来てからやたら小物戦が続きますね。もう少し強い相手と戦いたい所ですが、これからも小物が絡んで来そうです。

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