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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第五章 異世界修業編
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閑話4 異世界博徒伝ジオ

真の意味で閑話ですので、特に本編に関わりはありません。何も考えずに日常の一コマとしてお読み下さい。

ざわ・・・ざわ・・・


ジオの背中に冷たい汗が滴り落ちる。その目線の先には2枚のカードを持つ悠が居た。


既に自分達以外の全員は遊戯を終えており、その勝敗の行方を固唾を呑んで見守っている。


確率は2分の1。そして有利なのは間違い無く自分であるとジオには確信出来た。


自分が正解のカードを選べばその時点で自分の勝ちであり、また間違いのカードを選択してもまだ負けが決定する訳でも無い。


だから後は選び取るだけだ。右か・・・左か!?


そっと悠の方を見たが、その目からは小憎らし程になんの情報も読み取る事が出来ない。微動だにしない悠が石像か何かの様に思えてジオは身震いをした。




「ねえ・・・何でババヌキでこんなに緊迫した雰囲気になってるの?」


「えっと・・・多分、ジオは一度も勝ててないからムキになっているんだと思う・・・」


「途中から2人だけで7枚のカードしか使わずにやってるのに勝てないもんね・・・」




外野がうるさい。これは男と男の勝負なのだ。決してリーンにいい所を見せたいからなどという事は無いのだ。


右を取る素振りをみせても左を取る素振りをみせても悠は小揺るぎもしない。


ここまで来れば完全な運ゲーだと割り切ったジオは遂に取るカードを決めた。左・・・と見せかけて右だっ!!


ゴクリと唾を飲み込み、ジオが自分の取ったカードを確認すると・・・




やはりダメッ!! 道化ッ(ジョーカー)!!




「う、っく!!」


ぐにゃ~っとジオの視界が歪んだが、まだだ、まだ悠が外せば自分のターンになると思い直したジオは素早くテーブルに置いていた自分のカードと合わせて後ろ手でシャッフルし、絵柄を見ない様にして悠に突き出した。


悔しいが自分には悠ほどのポーカーフェイスは無理だと20回連続で負けた時点で気付いたジオの編み出した苦肉の策だった。完全なる運否天賦とも言う。しかし・・・




「愚か者が」




ジオは一瞬、悠が何を言っているのか分からなかった。だがそれが自分に向けられた言葉だと知り、頭がカッと熱くなる。


「何だとっ!? どうして俺が愚かだって言うんだ!?」


ジオの怒りにも悠は涼しい顔でジオのカードの頭に手を添えた。


「勝つ為の努力を怠っているから愚かだと言っている。お前は早々に運のみに任せ、そしてそれすらも杜撰だった結果として負けるのだ、この様にな」


そして悠はあっさりとジオの手札から道化で無い方のカードを抜き取った。


「あっ!?」


「真に運否天賦に賭けたいのなら、そうする為の策を講じるのだな。正面から戦って玉砕するだけでは道は開けんぞ」


「ど、どうして俺の手札が分かったんだ!? ・・・あっ、イカサマだな!? 子供相手に恥ずかしくないのかよ!?」


「俺も「幼い」子供相手ならばこの様な手は使わんが・・・お前は熱くなるタイプだからな、一度痛い目にあっておいた方がいい。この程度のイカサマとも呼べん拙策が見抜けない様では賭場で丸裸にされるぞ?」


「ぐぎぎぎぎぎぎ!!!」




「私もあんまり賭け事には向いてないのかな~? ねね、何で今ユウさんはジオのカードが分かったの?」


「簡単な事よ、ジオは自分の手札を置いていて、悠先生は自分の手札を持っていた。それだけの事ね。まぁ、それでも分かる可能性は2分の1なんだけど」


「んん? ・・・・・・・・・ダメだ!! あたしも分からん!!」




女性陣で樹里亜とミリーだけは悠の策が見抜けたらしい。ポイントは3つ。ジオはカードを置いていた。そして悠はカードを持っていた。それでも分かる可能性は2分の1。くっ、考えろ、考えるんだ!!


そしてジオはこれまでの人生で一番と言える位考え抜いた。


考えて・・・


考えて・・・・・・


考えて・・・・・・・・・


考、え、て・・・・・・・・・


そしてジオはゆっくりとテーブルに突っ伏した。




「あ、撃沈した」


「ジオ、考えるの得意じゃないから・・・」


「うん、ちょっと神奈と同じ匂いがするわ」


「どういう意味だよ!!」




「ではこの辺でお開きにしよう。皆、明日は体を動かすから夜更かしはしないようにな。俺は3人を送ってくる」


「えーっ、もうちょっとやりたいな~」


「我慢しなさい、明。これから一杯出来るんだから」


少しぐずった明だったが、沢山時間があると諭されて引き下がった。


「あの、私達なら大丈夫ですよ? ここからそう遠くも無いですから・・・」


「いや、俺も外に所用があってな、そのついでだ」


「すみません、何から何まで・・・ほら、ジオ! もう帰るよ!!」


「何故だ・・・何故なんだ・・・?」


未だにブツブツと呟くジオはサティに手を引かれて虚ろな目で連れて行かれた。


結局、ジオは何故自分のカードが読まれたのか分からず終いであった。

悠の使った手段は大変アナログかつ運任せです。精々自分の勝率を少々上げる程度の効果しかなく、使えるシチュエーションも限られています。

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