1-21 質問提起5
会議室では早速意見の交換がされていた。
「では、明日の会議でナナナ殿に質問したい事柄を列挙していこうか」
そういってホワイトボードに箇条書きしはじめた。
「まずは俺が聞きたいと思っている事は・・・」
・異世界に行くのは悠以外では駄目なのか?
・異世界を救うとは何をするのか?
・帰還出来るのか?
・悠が神になったらどうなるのか?
「一応これだけは最低でも聞いておきたい事柄だな。他に何かあるか?」
その条件を見て皆うんうんと頷いているが、悠と匠と朱理が挙手した。
「では防人殿からお願いします」
「ああ、プロテスタンスからの提案なのだが、向こうに行ったら行ったでいつ帰還出来るか分からん。帰還すら現時点では分からんからな。だから、定期的に連絡がつけば多少なりとも心配は緩和されるのではないかという事だ。軍でも作戦行動中の定時連絡は基本だからな」
《ホッホ、儂は向こうの世界の事を聞いてみたいという好奇心もあるんじゃがな》
「なるほど、では帰還についてと付随して、定時連絡の可否も聞いておきましょう」
そして雪人はボードに、
・連絡は可能か?
と、書き込んだ。
「では、続いて西城、頼む」
「はい、私はどなたが行くにしても――行くとしたらですが、我が国の重要人物が国を空ける事になります。これは軍を退役される神崎先輩でも同じです。ですから、それを国民に不審を持たれる事無く伝えるために、『妖精の粉』を使用出来ないか、ナナナ殿に聞いておいて欲しいですね」
「そうか、そうだな。今俺達の誰であっても国を空けるのはおかしい。軍人組は唯でさえ戦力が減っているのだから、民心を考えればここに留まっているべきだし、志津香様の秘書官は西城以外考えられん。名目が必要だが、それも『妖精の粉』が使えるなら話は早いな。・・・真、あれを解析して使えんか?」
「えーと、どう、ガド?」
《今はまだ出来ん。防御出来たといってもあれは攻撃では無かったからな。再現するには・・・まぁ、一年はかかろう》
「そうか、まぁしょうがあるまい。所謂『神の御業』らしいからな」
《ホッホ、一年で出来るとは中々吹いたものじゃのう、ガドラスや》
《フン、ワシにかかれば造作も無い事よ!》
「では『妖精の粉』についても書き加えておこう」
・『妖精の粉』は使用可能か。
「しかし、使用には細心の注意を払うべきですな。あれは下手をすると兵器だ」
匠の意見は最もだ。通常兵器としても強制睡眠効果は強力であるし、認識阻害効果は洗脳に近い。
「ああ、もし再現出来たとしても、使用に関しては陛下の裁可を必要とする事にしよう。志津香様、よろしいですか?」
「ええ、真田様のお考え通りでよろしいと思いますわ」
それで雪人はボードの『妖精の粉』から矢印を引っ張ってきて、※使用に関しては皇帝の裁可が必須、と書き加えた。
「ふむ、では最後に悠、何がある?」
「まずレイラが、今回の件に関して少し他のソースから情報を持っているらしい。それと、ナナ殿の言葉の裏付けとして、俺の・・・家族の行く末を聞いてみたらどうかと提案された事だ」
「ほう・・・なるほど、確かに情報の裏が取れるならありがたいな。それにレイラの情報も気になる」
そしてボードに言葉を加えて書き込んだ。
・情報の裏を取る(死者の行く末を問う、等)
・レイラからの情報
「こんな所か。他には無いか?」
ぐるりと見渡したが、特に皆異論は無いようである。
「では、情報の強化の為にも、まずレイラの話を先に聞いておこう。なにせ、俺達はこの世界の外の事にはまるで疎いからな。そもそも、ここ以外の世界の事など誰も知らなかったはずだ」
その言葉に皆頷いている。確かに自分達が暮らす世界以外の世界など、想像の中にしか無かった。ましてや天界や魔界など、概念として知っていても、具体的に存在しているなどとは世界で誰一人知らない事であろう。
「ではレイラ、知っている事の説明を頼む」
雪人の言葉にレイラは了承の意を返しそして語り始めた。
《ええ、じゃあ私の知っている範囲で話させてもらうわ》




