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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第五章 異世界修業編
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5-18 修行準備7

次にユウが向かったのはいつもの武器屋であった。訓練用の武器に関してはカロンが多少用意してくれている様だったので、余り使い手の居ない系統の武器と小さめ・・・と言うより、子供用の防具をある程度サイズ差を付けて揃えていった。


「兄さん、変わった買い物をしているね?」


「子供相手に教師の真似事をする事になったのでな」


「へぇ・・・冒険者ってのも楽じゃないねぇ」


そんな会話を交わしながら、悠はカロンに頼まれた材料に付いても尋ねてみた。


「それと、これらの素材も手に入れたいのだが・・・?」


「どれどれ・・・んー・・・この辺はウチでもどうにかなるけど、材料屋か割り引きの利く冒険者ギルドに行った方がいいと思うね。特に魔銀ミスリル魔金グラリルなんて、纏まった量になれば相当な額になるからね。危険だけど、自分で採掘に行った方が安く上がるよ」


「そうか・・・分かった、まずはギルドに行ってみるから、買った物の計算を頼む」


「はいよ、お代は金貨52枚と銀貨4枚、そして大銅貨4枚に銅貨7枚・・・と、細かく言えばそんな感じだが、兄さんは払いがいいからね、特別に金貨50枚でいいよ。エリーちゃんによろしくな」


店主は気前良く端数になる部分を引いて悠に金額を示して来た。


「助かる、また寄らせて貰うとしよう」


店主にしても単なるサービスで値引きをしている訳では無く、こうして懇意にしてくれる客を確保する事で次回以降にも繋がる上、エリーがこの事を知ればまた新たな客を流してくれる期待も持てるのだ。悠もそれを分かった上で感謝の意を述べているので、言わば予定調和である。分かっていて譲歩し合うのが良き商人と良き客というものだ。








店を辞した悠はそのまま今度はギルドに足を向けた。まだまだやるべき事が山積みな中ちょっと一服などといった暇は無いし、本人もやるべき事を差し置いて休む様な性格はしていなかった。


悠がギルドに現れるのは数日振りであったが、その間にも悠の名声は高まり続けており、その姿を認めた冒険者達は悠の前から素早く飛び退いて道を空けた。このギルドに所属している冒険者で悠にちょっかいを出そうなどという勇者は既に一人も居なかったのだ。


「・・・」


期せずして沈黙に包まれたギルド内を、悠は無人の野を進むが如く歩いていく。悠がカウンターに着くまで、しばらくは悠の龍鉄の靴の立てる乾いた音だけがギルド内に響いていた。


やがてカウンターに着いた悠に柔らかな声が掛けられた。


「おかえりなさい、ユウさん、フェルゼンでも随分とご活躍だったそうですね?」


「ただいま、エリー。冒険者としてちょっとした依頼を果たしたに過ぎんよ」


「・・・あのですね、ドラゴン退治はちょっとした依頼なんかじゃありませんからね? あっ、しかもⅧ(エイス)になってるじゃないですか!! おめでとうございます!!」


物怖じせずに悠と世間話に興じるエリーの姿に冒険者達の緊張も解れ、ギルド内に徐々に喧騒が戻って来た。その内の半分以上は悠達の噂話ではあったが。


「ところでエリー、これらの材料をギルドで揃えられるだろうか?」


悠がカロンから預かったメモを見ながら、エリーは自分の記憶と照らし合わせていった。


「・・・ギルドの在庫では幾つかは足りませんね。特に希少金属が。魔銀や魔金はまだしも、厳鋼鉄アダマンタイト神鋼オリハルコンなんて、殆ど伝説の武器や防具でしか使われていませんよ? まぁ、注釈にも出来ればとは書いてありますが・・・」


カロンもそう簡単に希少金属が揃えられるとは思ってはいなかったので、メモにもその旨を記していた。


「とりあえずは揃えられる物だけで構わんが、どうだろうか? 採れる場所が近いなら直接採って来ようと思ってるのだが・・・?」


「そうですね・・・魔銀と魔金は一応必要量はあります。材料屋さんにも聞いてみますが、ユウさんの冒険者ランクなら25%値引きされますので、わざわざ取りに行く必要はありませんね。あと、神鋼は現存している物以外では見当も付きませんが、厳鋼鉄は確か火山帯でごく稀に産出すると聞いた事があります。ミーノスの東側、ガラリヤ山でならもしかしたら見付ける事が出来るかもしれません。・・・でも、鉱石の発掘には熟練した手腕が必要ですから、いくらユウさんが強いからと言ってもそう簡単に見付ける事は出来ないと思います。ギルドにもほんの爪の先ほどしか残っていないんですけど、それだけで金貨50枚もしますから・・・」


そこでエリーは自分で話していて思い出した事柄を悠に伝えた。


「あっ、それ以外で入手なさりたいのなら、商人ギルド主催のオークションを利用するといいですよ。懇意の商人さんに参加して貰って間接的に買い取る事も可能です。確か、2日後に開催されるはずですから」


「そうか・・・済まんが、その厳鋼鉄を見せては貰えないだろうか?」


悠の申し出にエリーは申し訳無さそうな表情を浮かべた。


「すみません、厳鋼鉄の持ち出し、販売にはギルド長の裁可が必要なんです。少々ギルド内でお待ち頂けますか? 今ギルド長は席を外していまして・・・」


「ならば先に支払える者は支払っておくか」


「はい、それでしたら銅が5キロで銀貨5枚、鉄が30キロで金貨6枚、魔銀が2キロで金貨80枚、魔金が同じく2キロで金貨60枚、妖精鋼エルヴンタイトが5キロで金貨50枚、他触媒、燃料合わせて金貨23枚と銀貨5枚ですから・・・合計金貨220枚から25%を引いて、金貨165枚ですけど、大丈夫ですか?」


まるで大人数のパーティーが装備を揃える為に行う様な買い物の量と金額に、エリーは二重の意味で悠に問い掛けたが、悠はしっかりと頷いて金貨を取り出し始めた。


「金は依頼達成の報酬があるし、運搬も冒険鞄エクスパンションバックがあるから心配はいらんよ」


「あっ、そうでしたね。・・・・・・はい、確かに」


10枚ずつの山を16本と5枚の金貨を確認して仕舞い、エリーは壁に掛かっている鍵を手に取ってカウンターから出た。


「大きな品物や重い物は倉庫に入れているんです。一緒に付いて来て貰えますか? 金属は重いので・・・」


「ああ」


隣に並んで歩き出すエリーと共に、悠はギルドから出て行った。

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