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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第四章 新天地探索編
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4-42 VSドラゴン1

「げ・・・本当にドラゴンじゃねぇか・・・あの兄ちゃん、もう助からねぇな」


地面に伏せるベロウがドラゴンから視線を逸らせずに青い顔で呟いた。恐らくそうであろうと思ってはいても、実際に見るとその迫力は桁が違ったのだ。


「あ・・・が・・・だ、だじげで・・・」


美しい青い鱗を持つドラゴンの顎に挟まれたままのエルフの男はまだ辛うじて生きていたが、最早それは苦痛を引き伸ばすだけであるのは誰の目にも明らかだった。


「ひ、姫! どうなさいますか!? 姫!!」


「あ・・・ああ・・・」


エルフの男は色々な意図を混ぜてその質問を発したが、ナターリアは答える事が出来なかった。初めて見るドラゴンの威容と迫力、そして瀕死の仲間の悲鳴がナターリアの正常な判断を奪っていたのだ。だからナターリアは呟く様に言ってしまった。


「う・・・あ・・・た、助けを・・・」


ナターリア自身、それが助けを呼べという事なのか、捕まったエルフを助けろという事なのか分かってはいなかったが、エルフの男達は後者と取り、弓でドラゴンに射掛け始めた。・・・助け出すはずの男が居るのに射掛けたのは、男エルフ達も既に通常の精神では無かったからかもしれない。


そしてドラゴンは残虐で狡猾であった。自分に飛んで来る矢をワザと口にくわえたエルフで受け止めたのだ。


「あっ!? ぎっ!? ・・・・あ・・・ぐ・・・・・・」


胸と側頭部に矢を受けたエルフは短い悲鳴の後に一切の力を失い動かなくなった。


「お、おのれっ! 我等が同胞を盾にするとはなんたる・・・! えっ!?」


憤りを覚えるエルフの男はドラゴンの動きに対する注意を怠った報いをすぐに受ける事となった。ドラゴンが強く首を振って、口にくわえていたエルフの亡骸を生き残ったエルフへ投擲したのだ。それは狙い誤らず驚愕の声を上げるエルフの男に直撃した。


ドグチャッ!!!


水を入れた皮袋を地面に叩き付ける様な音がして、エルフの男は悲鳴を上げる間も無く仲間の後を追う事になった。


それを見たナターリアと男エルフは今度こそ恐怖でその場から動けなくなってしまった。それが更なる死を呼び込んでしまうと分かっていても。


ドラゴンが首を仰け反らせると、次の手が予想出来た悠は仲間達に号令を飛ばした。


「岩陰に入れ!」


「おう!」


「うむ!」


仲間達が飛び込み、そして悠も飛び込んだ直後、ドラゴンが首を正面に戻し、大きく口を開けて力を解き放った。ドラゴンの最も有名な攻撃方法であるブレス(吐息)である。


ゴオオオオオオッ!!!


それが着弾した瞬間、辺り一帯に強烈な烈風が巻き起こり、周囲の砂や石を巻き上げて荒れ狂った。何か悲鳴の様な声も聞こえた気がしたが、風の勢いが強過ぎて聞き取る事は叶わない。


それは時間にして数秒だったはずであるが、ベロウには恐ろしく長い時間に感じられた。いつまでも止まぬ風に自分が遥か彼方に吹き飛ばされる姿を幻視し始めた頃、ようやく風は治まった。


「ゲホ・・・な、なんて威力だよ・・・あっ! あのエルフの姫さんは!? ・・・うげ」


岩陰から顔を出したベロウが見た物は、血塗れで倒れ伏すナターリアとバラバラになったエルフの男だった。どうやら今のブレスは風の刃を生むブレスであったらしい。


しかしそうするとナターリアもバラバラになっていてもおかしく無いのだが、その疑問はすぐに解消された。


「・・・・・・・・・うぅ」


「む、生きているな、あのエルフ」


「マジか!? 一体どうやって・・・」


「直撃する寸前に防壁を張るのが見えた。それで防いだのだろうが、咄嗟によくやる。これもエルフの魔力のなせる業か」


「感心してる場合じゃねぇぞ、ユウ! どうする、逃げるか?」


「いや、助ける。更正の機会無く死ぬのは惨かろう。男共は手遅れだが、あの女くらいは助ける」


そう言って悠はベロウとアイオーンに向き直って作戦を伝えた。


「俺があの女の傷を塞ぐから、お前達は30秒程度でいいからドラゴンの気を引いてくれ。やり方は任せる」


「承った」


「即答すんな!!! あんなの相手にどうやって時間を稼げってんだ!?」


「お前には良く回る舌があろう。頼んだぞ」


言い捨てるなり、悠はナターリアに向けて全力で駆け寄った。それを見たアイオーンが続けて駆け出し、ドラゴンに向かって魔法を解き放つ。


「アイオーンが奉る。炎の矢よ、敵を撃て」


アイオーンの詠唱に続いて炎の矢が出現し、一直線にドラゴンへと迫ったが、ドラゴンが羽を羽ばたくとその風に吹き散らされてしまった。


しかしアイオーンは羽ばたいている隙に更に魔法を重ねていく。


「アイオーンが奉る。雷よ、驟雨となりて降り注げ」


アイオーンが『降雷ライトニングシャワー』を唱え手数でドラゴンを補足しようとしたが、ドラゴンは羽ばたきを利用して縦横無尽に旋回し、雷をかわしていく。


単純な組み立ての魔法では捕らえられない事を悟ったアイオーンは時間稼ぎに徹する事に決め、自分の手持ちの魔法から、次は殺傷能力の無い魔法を混ぜ込んで放った。


「アイオーンが奉る。光よ、闇を照らせ!」


アイオーンは魔力を過剰に流して光量を大きく引き上げた『光源ライト』の魔法をドラゴンに向かって解き放つと、アイオーンの挙動に注目していたドラゴンはその光をまともに見てしまい、身を翻して上空へと逃れていった。


「おのれ! 忌々しい人族が!」


「うおっ、喋った!?」


「レイラが喋るのを聞いているだろうが。今更何を驚く」


「おわっ!? ゆ、ユウかよ。ビックリさせんな!! ・・・済んだのか?」


「ああ、一応な。簡単に傷を塞いだだけだが」


いつの間にか戻って来た悠の背には青い顔で失神しているナターリアの姿があった。アイオーンは時間稼ぎをこなし切ったのだ。


「で、どうする? 問答無用みてぇだが、一応説得すんのか?」


「一度だけな。駄目なら倒すしかあるまい。・・・聞かなければならん事もある」


「何だ、聞く事ってのは?」


「今は先に交渉に入ろう。視力を取り戻すと話を聞かんぞ」


「おっかねぇなぁ・・・こうなりゃヤケだ!! おーーーーい、そこのドラゴンさんよーーー!!!」


ベロウはヤケクソで大声を張り上げたが、ドラゴンはその声を好機とばかりにその場でホバリングし目を瞑ったままベロウへと向き直って首を反らせた。


「そこか人族! スゥゥゥゥ・・・ガァッ!!」


「うおおおおおっ!?」


ベロウにとって幸運な事に当てずっぽうのブレスは狙いが正確でなく、前に飛び込む事で容易に回避可能であった事だ。


「ユウ、無理! 説得無理!!」


「うむ、残念だ。・・・アイオーン、奴を地に落とす、墜落直後を狙え」


「心得た」


思わず片言になるベロウに一言返し、悠は素早くアイオーンに指示を送った。そもそもどうやってドラゴンを地に落とすかも聞かなかったが、悠ならばなんとかするのであろうという信頼感は既に構築されていたのだった。悠は背中のナターリアを地面に下ろし、レイラにも策を伝える。


「レイラ、奴の目が利かん内に落とす。この状態では単発でしか撃てんが竜砲で翼に穴を空けるぞ」


《分かったわ。でもああ動き回られたら単発じゃ当てにくいわね。追尾だと正確な場所は狙えないし・・・》


ドラゴンは見えないながらも天地を感じる事が出来る様で、ランダムな動きで的を絞らせなかった。


「大丈夫だ。奴の動きを止める方法はベロウが教えてくれた」


《え? ・・・ああ、なるほどね。じゃあ任せたわ》


先ほどのベロウから察したレイラが悠に従い竜砲を撃つ為に竜気プラーナを集中させ始めた。『竜騎士』で無い生身の状態では竜砲は単発でしか撃つ事が出来ないが、翼に穴を空けるくらいは可能なのだ。


そして悠は息を吸い込み、ベロウを真似て大音声で怒鳴った。


「こそこそ逃げ回るのがドラゴンの流儀か!!! 所詮は羽の生えた蜥蜴という事よ!!!」


「舐めるな人族ッ!!! スゥゥゥゥ・・・」


悠の挑発に乗ってしまった青いドラゴンはベロウの時と同様にその場にホバリングしてブレスを放つ為に首を仰け反らせたが、それこそ悠が狙っていた状況である。静止し、攻撃も出来ない束の間の時間を悠は一切無駄にしなかった。


「撃て!」


《発射!》


悠の意思を受けたレイラがタイムラグ無く収束した力を空中のドラゴンへと解き放つと、首を仰け反らせていたドラゴンは竜砲を回避出来ずに翼に穴を空けられて墜落を始めた。


「ヌオオッ!?」


突然の事態に対処出来ないドラゴンはそのまま地面に叩き付けられて悶えたが、そこには既に準備を攻撃準備を終えたアイオーンが控えている。


「まずはその邪魔な翼を頂こう」


悠が攻撃している間に身体能力向上の魔法で強化したアイオーンは墜落したドラゴンの背を横切る様に飛び込みカロンのスピアを2度振るって飛び越えた。その後ろでは両断されたドラゴンの翼が遅れてドラゴンの背からずり落ちていく。


「グオオオオッ!!!」


苦痛の叫びを上げるドラゴンにもアイオーンの表情は崩れない。いや、正確に言えば、アイオーンは薄く、そして残酷な笑みを浮かべていた。


「高みから一方的に攻撃するなど詰まらんだろう。いざ、死力を尽くして戦おうぞ」


その宣言に対する怒りの咆哮が戦いの第二幕を開けるゴングとなった。

ナターリアは辛うじて生き残りました。他のエルフさん達はお肉の塊になってしまいましたが。

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