表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第四章 新天地探索編
232/1111

4-40 原因究明10

こちらを睨み続けている女エルフが返答が無い事に焦れて、今一度悠達へと詰問して来た。


「どうした、何故答えない! やはり貴様らがこの魔物の暴走を企てたのか!?」


「おいおい、よしてくれよ、魔物の暴走で大変なのはあんたらエルフだけじゃねぇんだ。人間も麓の町は壊滅寸前になるし、領土内で魔物が大暴れするしで大変なんだぜ? 俺達も原因がここにあると見て調査しに来たんだ。むしろあんたらエルフこそ何か知らないのか?」


これ以上黙っているとまた問答無用で攻撃されそうだと踏んだベロウが敵意が無い事を示す様に剣を鞘に収めながら返答すると女エルフの周囲に居る男エルフ達から怒声が上がった。


「人族風情が姫様に対して何と無礼な口利きか!?」


「貴様ら人族の事情など知った事では無い!!」


「図が高いぞ! 早く跪かぬか!」


(駄目だこいつら、傲慢過ぎて話しになんねぇ。さて、こういう時はどうするかな・・・)


途切れる事無く罵声を浴びせ続ける男達のセリフを聞き流しながらベロウはどうするかを考えていた。この場で戦闘に入るなど愚の骨頂であるし、そんな事をすればローランに迷惑が掛かるだろう。全員殺してしまうのならば話は別だろうが、聞いた限りではエルフの仕業でも無いのだからそこまでするのも憚られる。出来れば友好関係を築いておきたいが、アイオーンが言った通り話が通じる相手とも思えない。だがどうやら女エルフはやんごとない身分である様だし、ならばここはこの場だけの関係として舐められない程度に持っている情報を渡してしまう事にベロウは決めた。


「これは失礼を。しかし私は冒険者でして、礼儀作法など知らぬ田舎者ゆえ目を瞑って頂けると助かります。その代わり、我等の持っている情報は全てお渡ししましょう。特に秘匿する事でもありませんので」


「フン、教養の無い人族と話すなどエルフの誇りが許さん所だが、その態度に免じて命だけは助けてやろう。さあ、話すがいい!」


(殴りてぇ・・・このアマ・・・!)


「はい、事の起こりは3日前・・・いえ、もう4日前の事になります・・・」


内心で目の前の女エルフの耳を引っ張る妄想をしながら、ベロウは口調だけは丁寧に自分達が知っている事をエルフ達に語り始めた。


全てを聞き終えたエルフ達は難しい顔をして唸っている。


「ひ、姫、流石に我等だけでドラゴンと戦うのは些か厳しいかと・・・」


「今回は魔法鎧マジックアーマーも持ってきておりません。一度引き返した方がよいでしょう」


「や、例え相手がドラゴンであろうとも我等が負ける事などあり得ませんが姫の御身に万一の事があっては一大事。改めて完全な装備を持って出直すのが吉です」


「うぬぅ・・・」


どうやら一度出直す事になりそうなエルフを見てベロウはホッと一息付きたい気持ちになった。決まったのならサッサと帰って欲しいものであるが、女エルフは諦め切れないのか渋い顔をしている。なのでベロウは自分達から退去する事にした。・・・結果的にこの行動が間違いの元だったのだが。


「では、我等はこれにて失礼します。ユウ、アイオーン、行くぜ」


「ああ、これから山を登るのだ。これ以上の時間の浪費は避けねばな」


「・・・分かった」


かなり剣呑な雰囲気を漂わせるアイオーンに冷や冷やしながらもベロウが踵を返そうとした時、女エルフから詰問の声が上がった。


「待て! ・・・そこの男、ユウと言ったか? 今何と申した?」


その女エルフの指は真っ直ぐに悠を指していて、早く答えろとばかりに目に力を入れて来た。


悠は特に考えるでも無く自分の発言を繰り返す。


「俺達は今から山に登ると言ったが?」


「何故貴様らが山に登るのだ? 件のドラゴンを一度拝んでおこうとでも言うのか?」


悠の礼儀を払わぬ態度に周囲の男達が殺気立ったが、男達が前に出る前に女エルフが手を横に出してそれを制し、男達の発言を封じた。


悠は隠す必要を感じなかったので、そのまま思っている事を口に出した。


「そんな無駄な事はせん。件のドラゴンを説得するにも討伐するにも山を登らなければ始まらんからこそ登るのだ。ここを水場にしている様だから、ここで待ってもその内遭遇出来るかもしれんが、悠長な真似をするつもりは無いからな」


その言葉がエルフ達の頭の中に染み込むまでに数秒の時間を要し、そして理解出来たエルフの男達はその場で爆笑し始めた。


「クッ・・・クハハハハハハ!!! 聞いたか!?」


「ハハハハハ!!! き、聞いたとも! プッ、ククククク」


「ハッハッハッハッハ!! 脆弱で愚かな人族が事もあろうに説得? 討伐? 笑わせてくれるでは無いか!!」


「・・・」


ただ一人、女エルフだけが鋭い目付きで悠を見て沈黙を保っていた。


「大体そんな貧弱な装備でドラゴンに挑むつもりか? 貴様に至ってはまともな武器や防具すら持っておらんではないか! 自惚れもそこまで行くと笑いしか出んぞ!」


悠の体を上から下まで見渡し、鼻で笑ってエルフの男は罵倒を続けたが、悠は一切気にしなかった。


「ならばほおっておけばよかろう。武器や防具に頼る弱き心が怯懦を生むのだ。当たらぬ武器など飾りに過ぎず、動きを妨げる防具など重りに過ぎん」


悠の一言は男エルフ達の痛い部分を強かに突いてしまい、瞬時に男達は激昂した。


「き、貴様! 人族風情が我等誇り高きエルフを愚弄するか!!」


「せっかく我等が親切にも忠告してやったというのにその態度は何だ!?」


「愚弄などしていない。貴様らには貴様らの理があろう。それに異を唱えるつもりは無いゆえ、勝手に動いたらよかろうが。それと・・・他者を見下して話をするな、不愉快だ」


悠のあまりに直截な物言いにエルフ達は絶句して口をパクパクとさせるばかりであった。怒りが大き過ぎて短期的な失語症にかかった様だ。


「・・・言っちまいやがった・・・どうしてユウは猫を被るって事が出来ねぇんだよ・・・」


「ク、ククク・・・しかし少し胸がスッとした。これ以上会話が続く様ならスピアで突いてやろうかと思っていた所だ」


「行くぞ、これ以上戯言を聞いている暇は無い」


ベロウは天を仰いで目に手を当てて嘆き、アイオーンは珍しくツボに嵌った様で笑いを堪えながら物騒な事を口走っていたが、悠はそれらに構わず山への道を歩き出そうとした。だが、またしても女エルフが悠を制止した。


「待て!!」


「待たぬ」


しかし悠は振り返る事すらせずにスタスタと山へと歩き出したので、女エルフは慌てて悠の前に回り込んで怒鳴りつけた。


「ま、待てと言ったら待たぬか!! 我を誰と心得る!! 我こそはエルフ女王アリーシアが長子、ナターリア――」


「俺にも今の状況にも関係の無い名乗りなど余所でやれ」


悠は男達と同じく絶句したナタリアを避けて先に進もうとしたが、横を通り過ぎる時にナターリアが悠の服を掴んだ。


「あ、あくまで行くと言うのなら我等も行くぞ! 勝手に動いても文句は言わんのだろう!!」


「だから好きにしろと言っている。放せ」


「あっ・・・」


悠は袖を引いてナターリアの手を引き剥がすと、今度こそ山へと歩き去っていき、ベロウとアイオーンもその後を付いてこの場から去っていった。


後に残されたエルフ達はしばし呆然とそれを見送っていたが、ナターリアがハッと我に返って男達を叱咤した。


「お前達! 人族すらあのような貧弱な装備でドラゴンと見えようとしているというのに、我等エルフが背を向けるなど恥辱の極みだ!! 我等もこのまま山に入るぞ!!」


「ハハッ! あの無礼な人族、生かしてはおけません。ドラゴンを屠った後、嬲り殺してご覧に入れましょう!」


「簡単に殺したのでは生温いわ!! 手足を切って里で晒し者にするべきだ!!」


「良き考えだ! 少しずつ四肢を削ってくれようぞ!!」


「お前達の意気や良し。早速あの人族を追うぞ! 先に頂上に着かれたらドラゴンに殺されてしまうであろうからな!」


「「「ハハッ!」」」


(待っておれよ、ユウ! ドラゴンを屠った時が貴様の命運が尽きる時だ!!!)


ナターリアと男エルフ達は憎悪を目に滾らせながら悠達を追って山へと入っていった。命運残り少ないのは自分達であるとは思いもせずに・・・

恩には恩を。無礼には無礼を。果たしてナターリアは生きて山を下りる事が出来るのでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ