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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第四章 新天地探索編
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4-38 原因究明8

その後、ささやかながらにクエイドの町長就任の宴が催されたが、悠達は明日も早い事もあって早々に宿へと戻っていった。




そして次の日の朝。悠の姿はいつも通りに宿の裏庭にあり、そこにはベロウとアイオーンの姿も見られた。


「これがお前達の日課か?」


「ああ。そういうアイオーンも鍛錬は続けているのだろう? 最初に手合わせした時の鋭さは机で仕事をしている人間の物では無かった」


「当然だ。私は強さを至上に置く者だぞ」


そう言ってアイオーンも柔軟をする悠達の横で体を解し始めた。


「ところでアイオーン、今日はどこに案内してくれるってんだ? 案内を買って出るくらいなんだから、多少の目星は付いてるんだろ?」


「幾つかな。まずは森の南にある地下洞窟と東にある湖、そして最後は・・・頂上付近に入り口があるダンジョン(迷宮)だ」


「げ、こんな所にダンジョンがあんのかよ・・・」


「洞窟とダンジョンは違うのか?」


聞き覚えの無い単語について悠が質問するとベロウが答えた。


「洞窟ってのはそのまんま洞窟さ。誰かが掘ったのもあるし、自然に出来上がったモンもある。だが、ダンジョンは誰かが掘ったモンじゃねえ。・・・いや、正確には誰かが掘ったモンになるのか?」


「ダンジョンは多少力を持った魔物が稀に『迷宮創造ダンジョンクリエイト』の能力スキルに目覚める事で生成される。自らの住処を迷宮化し、周囲の魔物を誘引する能力だ。時が経つにつれてダンジョンは大きく、また複雑になっていく。最深部に居る魔物モンスターを討伐しない限り、ダンジョンは消滅する事が無い。また、その魔物は寿命では死ななくなる。更に、一定期間を経るとその魔物は『魔物創造モンスタークリエイト』の能力に目覚め、ダンジョンはどんどん難攻不落となっていく。が、ギルドでは特にダンジョンの踏破は推奨していない」


「なんでだ? そんなのがあったら危ないじゃねぇか?」


ベロウが質問するとアイオーンが続けて答えた。


「ダンジョンの魔物は決して外には出て来ないからだ。内部の魔物が増えると共食いや種族間抗争で数を保つらしい。また、優良な狩場であるという利点もあるし、魔物素材を集めるのにも便利だ。後は・・・最深部に居る魔物に殺される冒険者が多過ぎるからだな。『迷宮創造』に目覚める魔物はⅦ(セブンス)以上の固体が非常に多い。生半可な冒険者が挑んでも殺されるだけだ。見返りが大きいせいで狙う者が後をたたんがな」


「結局Ⅶの魔物は居るのかよ・・・でもその見返りってのは?」


「様々だ。単純な宝の場合もあるし、魔道具や力ある武器防具の時もある。少ない例では新たな能力に目覚めたなどという報告もあるが、これは信憑性については不明だ。だが、どれもが冒険者に取っては垂涎の物であろう」


流石ギルド長であり、元Ⅸ(ナインス)ランク冒険者であったアイオーンの知識は正確だった。


「件のダンジョンはどのくらいの規模があるのだ?」


「俺が知っている限りでは・・・山頂付近から麓まで、全てダンジョン化していると見ている。階層構造で50階ほどはあるだろう」


「うげ・・・何日掛かるんだよ、そんなの」


アイオーンの説明にベロウが顔を顰めた。


「ダンジョンは出来立ての物で10階前後だ。1年程度で1階ずつ増えるから、今回のダンジョンは40年程度の物だな。広い世界には更に巨大なダンジョンが至る所に存在しているはずだ。だが今回は奥まで潜る必要は無い。多少異変が無いか覗く程度でいいだろう」


「そうか。では2日もあれば調査は済みそうだな」


悠がそう言うとアイオーンは首を横に振った。


「残念だがそう簡単にもいかない。最大の問題はエルフに出会ったらどうするかという事だ」


「そうか、この山脈は緩衝地でもあったのだな」


悠はこれまでに聞いた情報を思い出していた。元々ローランの父とエルフはこの地を挟んで何度も諍いを起こしていたのだ。それをローランが不干渉を貫く事でようやく終息させたのである。その為、アザリア山脈は人間というよりエルフの土地と言った方がいいくらいなのだ。


「エルフは人間に対して非常に高圧的な上、魔法と弓の腕前は侮れん。森の中で襲われたりしたら苦戦は免れないだろうな」


「まずは話し合うって発想はねぇのかよ・・・」


「奴らは人間の言葉に耳を傾ける事は殆ど無いぞ? ごく稀に人間の言葉に耳を傾けるエルフも居るが、エルフ1000人に対して1人くらいだと思っていい。昔、コロッサスと冒険していた頃に出会ったエルフがそう言っていた」


「ふむ・・・だからと言って無闇に害する訳にもいくまい。まずはバローに交渉させてから考えるとしよう」


「そうだな、私は話し合いは好かん。バローに任せる」


「面倒な事ばっかり押し付けやがって・・・!」


憤るベロウだったが、悠もアイオーンもどこ吹く風といった風情で聞き流している。


「さて、そんな事より鍛錬を始めよう。バロー、構えろ」


「そ、そんな事の一言で済ませやがった・・・クソ、今日こそ一撃入れてやるからな!」


悠とベロウの言葉にアイオーンがピクリと反応した。


「む、手合わせなら私とやれ、ユウ。バローだけずるいぞ」


「アイオーンは本気でやるから駄目だ。道案内が居なくなっては余計な時間を食う」


「・・・それは私が怪我をするという意味か? 面白い、ならば試してみればよかろう?」


「朝っぱらから町中で殺気を振り撒くんじゃねぇよ!!!」


スピアを手に殺気を滲ませるアイオーンの前に立ち、何とかして宥めようとするベロウ。その胸中は最近、自分の立ち位置がどこであるのか見失いそうな気持ちで一杯であった。

ダンジョンについての軽い説明。異世界といえばダンジョンですよねー

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