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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第四章 新天地探索編
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4-36 原因究明6

アザリアへと戻った悠は門番の兵に門を開けて貰い、ベロウの居る詰所へと案内されていた。


アザリアの町は内部も所々破壊されていて、まだ血の跡が乾かぬ場所も見受けられる。飛行出来る魔物の襲撃を受けたせいだ。怪我をしている兵士や冒険者の姿も多く、到着が明日になれば恐らく間に合わなかっただろう。


「・・・随分とやられた様だな」


「えっ!? な、何か仰いましたでしょうか!?」


悠を案内する兵士は額から汗を流して馬鹿丁寧に悠に尋ねて来たが、悠は何でもないと首を振った。どうも悠がとんでもない大魔法使いだと誤解しているらしく、機嫌を損ねてはならぬと丁寧に接しているらしいのだが・・・


(ここまで恐れられるとは計算外だったわね)


(魔法はあってもそこまで大規模では無いらしいな。あの程度の竜砲でこれでは)


悠が撃った竜砲は範囲としてはかなり広いが、威力としてはⅢ(サード)ランクのドラゴンならば辛うじて葬れる程度の威力しか込められていなかった。『蓬莱ほうらい』での戦時であれば牽制程度にしか使えぬレベルである。しかし、アーヴェルカインでは見た事も無い大魔法として人々の目に映った様だ。


(だからこそこの対応なんでしょ。ユウに臍を曲げられたら逆に町を落とされかねないとでも思ってるのかしら?)


(仕方なかろう。魔物モンスターの襲撃で皆不安を抱えているのだ)


心通話テレパシー』でレイラと話しつつ、悠はペンダントを弄った。


「こ、ここにお連れ様がいらっしゃいます!」


「案内感謝する」


やがて辿り着いた建物の前で兵士が振り向き、敬礼しつつ悠の為に詰所のドアを開いた。悠はこれまでの案内の感謝を述べて中に入ると、そこには既にベロウとアイオーンが揃っている。


「よっ、派手にやったみたいだな、ユウ」


「さっきの魔法については後でじっくり教えて貰うぞ」


「・・・その話はその内にな。今はアザリア山脈の情報を知るのが先だ」


「それについては自分が説明します」


苦笑するベロウと案の定竜砲について尋ねて来るアイオーンの後ろから一人の兵士が会話に混じった。


「頼もう。俺の名はユウ。君は?」


「自分はアザリア駐留隊の隊長を務めますクエイドと申します。アイオーンギルド長にも引けを取らぬ猛者と伺いました。その様な方にお会い出来て光栄です!」


「アイオーンはともかく、俺はただの一冒険者に過ぎん。普段通りで結構だ」


「だから言ったろ? ユウは見た目と雰囲気ほど堅苦しい奴じゃねぇって」


「し、しかし町の恩人でありますから・・・」


「だったら尚更恩人が望む様に接してやってくれよ」


「・・・分かりま、いや、分かった。ユウ、改めて町の防衛に力を貸してくれた事に礼を言う」


「偶然この場に居たから手を貸しただけだ。それよりも本題に入ってくれ」


悠が話の先を促すと、クエイドもそれに頷いた。


「事の始まりは3日前の早朝の事だ。いつも通り朝の鐘(午前6時)が鳴って、町の皆が起き出すという時にどこからか軍が行軍している時の様な音が聞こえて来たんだ。見張りの兵士の話では、森から砂煙が上がっているというから、俺はてっきりエルフが攻めて来たのかと思って急いで門に閂を掛けさせた。・・・だが、森から出て来たのはエルフなどでは無く、大量の魔物だったのだ。俺はあれ程の大量の魔物を見たのは初めてだった・・・種類も統一されておらず、とにかく森から出ようとするあの様は・・・まるで何かから逃れる為の様に俺には見えた」


「丁度俺達が旅に出る前日の話だな」


クエイドの説明にベロウが補足を入れる。


「アザリアの町にはそこまで大量の戦力は置いていないんだ。今の所、エルフとは相互不干渉だったからな。下手に大きな戦力を置くとエルフを刺激しかねないからだが、最低限の戦力が駐留していたおかげで、町の方に流れて来た魔物も何とか防ぐ事が出来ていた。多少だが冒険者も居たからな。しかし魔物の一部と言ってもその数は膨大だった。初日、2日目と経つ内に、かなりの者達が傷を負い、また殺された。そして今日もまた朝から晩まで魔物の相手をし続け、流石にこれ以上は耐えかねるという所でユウやベロウ、アイオーン殿がやって来たという事だ。まさに天の助けだよ」


クエイドは大きく息を付いて言った。本当にギリギリだったのだろう。


「最初の異変が3日前だと言ったが、その前後に何か異変を感じなかったか? 些細な事でもいい」


「・・・確認出来てはいないが、未明に何かの遠吠えの様な物を聞いたと見張りの者が言っていたな。それはこれまでこの付近で聞かれる獣や魔物の声では無かったらしい。方角はアザリア山脈の方からだったと言っているので、もしかしたら何か関係があるかもしれん」


そこまで話を聞いて、悠はアイオーンに向き直った。


「アイオーン、これまでの話やサロメの話から該当しそうな魔物は居るか?」


悠の言葉にアイオーンはしばし考え込み、そして口を開いた。


「・・・そうだな、いくつか思い当たる魔物は存在する。その中でもⅦ(セブンス)ランク以上で空を飛び、威嚇で吠える魔物と言えば・・・最初に浮かぶのはドラゴンだ」


「ど、ドラゴンだって!?」


「ま、まさかこんな場所にドラゴンが居るなんて聞いた事もありません!」


アイオーンの推測にベロウが悲鳴じみた声を上げ、クエイドが声を裏返らせて否定した。


「あくまで可能性だ。他にも幾つか候補はあるが、今の話を聞いた限りではその可能性もあるというに過ぎん」


「だが他ならぬギルド長であるアイオーンがそう推察したのなら、俺達はドラゴンを倒すつもりで調査に当たった方がよかろうな」


「町の外では外れの雑魚ばかり引かされたのだ。もしドラゴンなら久々に腕が鳴る。この槍でどこまで出来るのかを試すにはいい相手だ」


「もしドラゴンであればまずは交渉させて貰うぞ? 先に手を出すなよ、アイオーン」


「それは向こうの出方次第だ。殺されかけても交渉を続ける様な寛大な心を私は持ち合わせていないからな」


平然とドラゴンについての対処の意見を交わしあう悠とアイオーンを唖然と見て、しばし後に我に返ったクエイドは隣のベロウに話し掛けた。


「な、なあ・・・あちらの2人はドラゴンを意に介していないみたいだが?」


「俺をあんな変態共と一緒にするんじゃねぇよ! ・・・クソ、きっとドラゴンが居るんだろうな・・・」


自分の不幸に関しては自信のあるベロウは、せめて出て来ても小さいドラゴンであります様にと天を仰いで願いを込めた。――恐らく叶わないと知りながら。

(ベロウの)悪い予感は当たるって奴ですか。祈りが届くといいね。

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