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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第四章 新天地探索編
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4-31 原因究明1

一行の旅路は最初から波乱を含んだ物となった。街から離れてしばらくで、すぐに魔物モンスターに襲われ始めたのだ。しかし、それは悠達も並みの冒険者では無く、襲い掛かる魔物を各自草を刈り取る様に倒していった。


「予想以上に多いな。これは中々難儀しそうだぜ」


「少し進んでは襲われての繰り返しですからね。3人が居なかったらとっくに飲み込まれてますよ」


御者をやっているビリーとミリーはそう言いながら討伐部位を刈り取っている。戦闘では手を出す間も無いので、せめてこれくらいはと手伝っているのだ。


「貴様、思ったより剣を使えるな、バロー?」


「へっ、こちとらユウに指導を受けてるんだぜ? その辺のヤツと一緒にしないで欲しいね」


「ノースハイア流など、力任せの野蛮な剣法かと思っていたが・・・ユウの指導か」


「喧嘩売ってるだろお前!」


「気を抜くな、新手だ」


そう言っている間に林の奥から新手の魔物が湧き出した。


「キリがねぇな」


「この近辺は人家も無いから兵や冒険者も派遣されていないからな。やはり原因を取り除かなければどうにもならん。ユウ」


「なんだ?」


「この様な場所に拠点を設けるのは厳しいと思うが?」


アイオーンのもっともな意見に悠は魔物を倒しながら首を振った。


「ローランに用意して貰った土地はここしか無くてな。この依頼が終わったら大々的に狩るとしよう。しかし同じ轍を踏む訳にはいかんな・・・」


そう言いながらも体は思考とは別に半自動的に次々と魔物を打ち倒していく。


(話しながら魔物をドンドン倒してる・・・これだけの数がいたら普通はもっと対処に手間取るのに)


悠の手際にミリーが半ば見惚れていると、その悠から声が掛かった。


「ビリー、ミリー、頼みがある」


「何ですか、ユウのアニキ?」


「・・・え? は、はい!」


悠は魔物が多い状況を鑑みて、自分の考えを2人に話した。


「どうにも魔物が多い。結界が破られる事は無いと思うが、万一の為に2人は拠点に残ってくれんか? その間に頼みたい事もあるからな」


「そうですね・・・ユウのアニキの心配ももっともだと。いくら頑丈な拠点があっても中に居るのはまだ子供ですからね」


「私も構いません。でも、頼みたい事って?」


ビリーもミリーも子供達の事は心配だったので、付いていけない事を残念だと思いはしたが、その事を受け入れた。もし本当にⅦ(セブンス)ランク以上の魔物が居たならば、自分達が足手まといになる可能性も考慮してだ。


「ミリーには魔法の基礎を、ビリーには体力的な物を子供達に教えてやって欲しい。各自の特性は後で樹里亜にでも聞けば分かる事だ。頼まれてくれるか?」


「それはいいですけど・・・俺達はユウのアニキやベロウのアニキみたいに仕込む事は出来ませんよ?」


「それについては初歩で構わん。俺の教えた鍛錬を薄めてやって貰えばいい。俺が帰って来たら本格的に教えるつもりだからな。ミリーもそこまで専門的な話は必要無い。何なら座学で済ませても構わん」


「分かりました、お引き受けします。皆さんは心置きなく事態の解決に当たって下さい」


2人共首肯したのを見て悠も頷いた。


「ああ、子供達の事は頼んだぞ」


「「はい!!」」


「ユウ、そろそろ移動しよう。血の匂いを嗅ぎつけてまた新手が来るかもしれん」


「そうだな、目的地は近い。行くか」


そうして倒した魔物の討伐部位を回収し、悠達は目的地へと急いだのだった。








「ここだな・・・ユウ、そろそろ種明かしをして貰おうか?」


「ああ、少し離れていろ。レイラ、『虚数拠点イマジナリースペース』展開」


《了解、『虚数拠点』展開》


悠の呼びかけに応え、レイラが崖から少し離れた位置に『虚数拠点』を展開し始めると、そこに瞬時に屋敷が出現した。


「むっ!? これは・・・空間歪曲の一種か? いや、理論上、ここまでの規模で展開など出来んはずだ。詠唱らしき詠唱も無い・・・どうなっている?」


普段は冷静なアイオーンも見た事も聞いた事も無い『虚数拠点』に流石に驚きを隠せなかった。空間歪曲技術自体はアーヴェルカインに存在するが、それは『冒険鞄エクスパンションバック』の様にある特定の物体の内容量を拡張するに留まる物で、何も無い場所に大質量の物を出現させる技術では無い。魔法に造詣の深いアイオーンだからこそ多少推測出来たのであって、一般人からしたら神の御業にしか見えないであろう。逆にそちらの方が真実であるというのは皮肉としか言い様が無かったが。


「そろそろ頃合いだな。バロー、子供達を出してくれ」


「はいよっと」


アイオーンの質問に答えず、悠はベロウに子供達を馬車から出す様に頼んだ。ベロウがそれを受けて馬車の戸を開くと、中から続々と子供達が下りて来る。


「この子供達が?」


「ああ、俺がノースハイアから救い出した子供達だ。世界情勢に詳しいギルド長のアイオーンなら名前くらいは知っていよう。あの子らは『異邦人マレビト』だ」


「『異邦人』だと? 何故それがこんな場所に・・・」


「話は中でするとしよう。ここではいつ襲撃があるか分からんからな」


「分かった、詳しく聞かせて貰うぞ、ユウ」


まずは安全な場所にという事で、一行は屋敷の中へと場所を移したのだった。








「・・・話は理解した。信じがたい部分はあるにせよ、それは私の常識のせいだろう。そういう物として受け入れるしか無さそうだな」


「理解が早くて助かる」


悠はギルドで話した内容よりも更に踏み込んだ説明をアイオーンに対して行っていた。それはこの世界にやって来た顛末からレイラや子供達の事、そしてこれから悠が何をするかという事も含めてだ。ちなみに今この場には2人だけしか居ないのは、万一アイオーンが翻意した場合への備えだ。


しかしアイオーンが一番興味を惹かれたのは悠の成そうとする事などでは無く、何より『竜騎士』についてだった。


「ユウ、その『竜騎士』とやらの実物が見たい。見せられるか」


恵の入れたお茶を一息に飲み干し、アイオーンが悠に尋ねた。強さに無関心で居られないアイオーンらしい態度であると言えたが。


「構わん。万一魔物が予想より強力なら着装する必要もあるかと思っていたからな。――レイラ」


悠は持っていた湯呑みをテーブルに置くと、ペンダントを目線に掲げた。


「・・・変、身!」


《了解よ!》


その言葉と共に悠の体を赤い靄が包み、そして晴れるとそこには『竜騎士』となった悠の姿があった。


「これは・・・先ほどと同じ技術か? いや、似ているが違うな・・・それにあの掛け声にどんな意味が・・・」


アイオーンは悠の一挙手一投足からその意味を掴み取ろうとしていたのだが、実は何の意味も無いただのポーズであるとは悠にも指摘し辛く、結局は聞かなかった事にした。


「これが『竜騎士』だ。満足したか?」


「満足など! 出来れば一度手合わせ願いたいが?」


アイオーンが冷静に見えてその実、ギラつく視線で悠を見つめながら再戦を請うたが、流石に悠は請け負わなかった。


「悪いが今はそれどころでは無い。せめてこの件が終わるまで待て」


「・・・・・・いいだろう」


悠にその気が無いのを感じ取り、アイオーンも渋々矛を収めた。沈黙の長さが不満を物語っていたが。


「ではまたすぐに出るぞ。・・・それと、蒼凪」


「はい」


悠が呼び掛けるとドアが開いて蒼凪が現れた。何故現れる事が出来たかと言えばドアの後ろで話を聞いていたからなのだが、蒼凪は素知らぬ顔だ。悠が立ち聞きをしている自分達に気付いていないはずなどあり得ないと分かっていたし、それを咎めないという事は聞かれて不味い話では無いという事だと理解していたからだ。特に蒼凪には『心通話テレパシー』が通じるので、声に出して呼び掛けるまでも無く叱る事も出来るのだから。


その蒼凪は既に誰かに支えられてはいなかった。ローランから貰った『高位治癒薬ハイポーション』を飲ませた結果、ゆっくりではあるが自分で歩けるまでに回復出来たのだ。


「何かあれば俺に『心通話』で話し掛けろ。届かない可能性も高いが、それはこちらで探る。定期的に『心通話』を飛ばすから、限界距離を探ってくれ」


「分かりました・・・ご連絡、お待ちしてます、悠先生」


「それと全員を玄関に。俺達はすぐに出立する」


「はい」


「アイオーン、行くぞ」


「ああ。馳走になった」


結局、滞在時間一時間弱で悠達は再び旅路に戻る事になったのだった。

アイオーンは悠が何の為に戦っているのかにはあまり興味がありません。


それよりも悠自身に興味が・・・って書くとBLの香りがしてくるんですが。前話でベロウと取り合いしてますし。


理性的な常識人と異常な戦闘狂の二面性がアイオーンの特徴です。

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