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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第四章 新天地探索編
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4-20 花の都フェルゼン6

悠は槍を構えながらジリジリと時計回りにアイオーンとの位置を調整していた。


(レイラ、多少は魔法について理解出来たか?)


(起動過程は把握したわ。魔法が何故発動するのかは分からないけど、ある回路に魔力っていうエネルギーを通すと効果を発するみたい。回路の作成、詠唱、魔力の供給、発動の四行程から出来ている技術ね。ちょっと冗長だと思うけど)


レイラは力の流れから魔法の原理を解き明かしていた。長い歴史の中で少しずつ発展し、開発されてきた魔法の秘奥すら、物質の根源すら操るリュウの目から見ればガラス張りに等しい物だったのだ。むしろ粗さえ見受けられた。


(もう次からは今まで見た魔法なら発動前に種類まで分かるわ。そうじゃなくても回路の形成の時点で魔法の兆候は掴めるわよ)


(そうか、では打って出る事にしよう)


(どんな手で行くつもり?)


(そうだな・・・こんな手はどうだ?)


悠がレイラに自分の策を伝えると、レイラも面白そうに了承した。


(いいわね、あのアイオーンがビックリする顔が見れそうなのが特にいいわ)


(決まりだな。では行こう)


ジリジリと動き続けていた悠はある地点まで来た所でこれまでの円周運動を止め、一気にアイオーンへと走り出した。


悠の言葉を聞いて警戒していたアイオーンもすぐに反応して魔法を紡ぎ始めた。


(! ユウ、炎の矢よ!!)


「させんよ!」


レイラの魔法察知でアイオーンの炎の矢が完成する前に、悠は走りながら槍を肩に担ぐ様にして構え、アイオーンに向かって投擲した。


「アイオーンが奉・・・チッ!!」


魔法の出鼻に槍を投擲され、仕方無くアイオーンは詠唱を中断して風を纏った槍で悠の投槍を両断して撃ち落し、そのまま悠に向かって風の刃を飛ばしてきたが、その時には悠は目的の地点に辿り着いており、風の刃をある物を踏み台にして飛び越え、アイオーンに向けて急降下して来た。


「むっ!?」


悠が踏み台にしたのは最初に持っていた、凍りついた曲刀だ。この為に悠はアイオーンとの立ち位置を調整していたのだった。


(まだだ! まだ一度なら槍を振る時間はあるぞ、ユウ!)


アイオーンと悠との距離は残り5メートルといった所だが、アイオーンは既に槍を振り被っており、次の瞬間には悠に向かって縦一文字の風の刃が放たれていた。


「とったぞ!!」


普段は冷静なアイオーンもここぞとばかりに快哉を叫んだが、それが驚愕に変わったのは刹那の出来事だった。


「俺がな」


小さく呟いた悠が両手で挟み込む様にして風の刃を受け止めていたのだ。


「なっ!?」


驚くアイオーンを他所に、悠はその風の刃の勢いで後方宙返りをすると、そのまま空中でアイオーンに向かって風の刃を投げ返した。


「クッ!!」


アイオーンは咄嗟に風を纏った槍を目の前にかざしてそれを防いだが、無理な防御で纏っていた風が相殺され、槍に宿っていた風の魔力を失った。その間に悠は地面に無事着地し、最後の2メートルを走破した。


(振っていたのでは迎撃が間に合わん! 距離も近過ぎる! ならば石突きで・・・!)


悠が速く、そして接近し過ぎていた為に、アイオーンはなんとか驚愕から立ち直って槍を反転させ、石突きで悠を弾こうとしたが、悠はその反撃すら読みの中に収めていた。


アイオーンが悠の体に石突きが突き込んだと確信しかけた瞬間、石突きが何の抵抗も無く悠の体の中に沈んでいき、そして突き抜けた。


「こ、これは!?」


「終幕だ、アイオーン」


自分の言葉と被ってアイオーンは首筋に風を感じ・・・決着を悟った。


アイオーンの首筋に悠の手刀がピタリと寸止めされており、もし寸止めしなければ首を叩き折った事は間違い無い。それがアイオーンにも分かっていた。


「・・・私の負けだ。・・・まさか、最後に『朧返し』をするとは思わなかったぞ、ユウ」


「コロッサスが使っていて面白く思ったのでな。戦いは時に詭道を用いる事も必要だ。・・・それに、アイオーンが驚く顔が見たかった」


悠が最後に選択したのはコロッサスの得意技『朧返し』であった。アイオーンの目に石突きが悠に刺さった様に見えたのはアイオーンの錯覚であり、悠の残像であったのだ。


「フン・・・人前で表情を乱すなど、ここ何年も無かった事だ。満足か?」


「ああ、満足だ。頼りになる道案内が出来て、な」


「・・・約束だったな。よかろう、目的の場所まで私が案内してやる。・・・だからユウ、また私と戦え」


憮然として言葉を返したアイオーンだったが、再び目に戦意を燃やして悠に再戦を迫った。


「・・・そのうちな。俺も色々忙しいのだ」


「そう言って勝手にこの街を離れるなよ? もし勝手に居なくなったらギルド長権限で指名手配してやる」


「公私混同も程々にな」


冷静だが、実はかなり好戦的なアイオーンであった。








「お前さんはどうして毎回毎回戦うたびに問題を起こすんだろうな? ええ?」


「・・・俺は何もしていないが?」


「してるだろうが!! 見ろよこの死屍累々とした光景を!! いきなり馬鹿みてぇな殺気を飛ばすんじゃねぇ!!!」


「鍛え方が足りんだけだ。外の冒険者すら最後まで見ておったのに情け無い・・・ウチのギルドで最後まで見ていられたのはマリアンだけか?」


「・・・クソ、こいつも戦闘脳の持ち主かよ・・・」


外周で見ていたベロウ達の下へ戻って来た悠とアイオーン待っていたのはベロウのお説教だった。しかしベロウが嘆くのも無理は無い。結局、見学していた大勢の冒険者は悠とアイオーンが中断されかけた時に撒き散らした殺気で、マリアンを除く全員が気絶していたのだから。


「スゲェ・・・半分以上何をしてたのか分からなかったけど、スゲェ・・・」


「い、今見たのはきっと夢よね? ・・・そうに違いないわ・・・」


「ふぅ、肝が縮んだよ」


「うう・・・私、審判ですのに・・・」


ビリーとミリーは腰を抜かしながらもしっかりと意識を保っていたが、ビリーは見た事も無い様なハイレベルな戦闘に感動して何故か泣いているし、ミリーは魔法を使う者として今見た戦闘が信じられなかった。どうやったら魔法を素手で掴めるというのだろうか?


そんな面々を他所にローランは割りと平気そうだ。というのも、殺気を撒き散らした時、ベロウが咄嗟にローランの前に立って2人の殺気からローランを守っていたからで、そのせいで余計にベロウが消耗して見えるのだった。


マリアンは審判らしい事が最初の合図くらいしか出来なかった事に落ち込んでいた。途中でアイオーンに叱られた事もそれに拍車を掛けている。


「ま、拳で語り合って十分に理解し合えただろう? 詳しい話は明日にするとして、今日はこれまでにしないかい? 連れも待たせっぱなしだしねぇ」


「・・・仕方無い。明日はお早めにギルドにいらして下さい。色々話もあるでしょう。私としてはユウの事をじっくり聞きたい所ですが・・・」


「随分気に入ったみたいだね、アイオーン。どうだい、ユウは強かったろう?」


「・・・誠に遺憾ながら認めない訳には行きませんな。大方コロッサスもユウに負けたのでしょう?」


「私はその辺は詳しくは聞いていないんだけどね。どうなんだい、バロー?」


ローランは唯一その場にいたベロウにその事を尋ねた。


「あん時はユウがワザと負けた振りをしてたぜ。コロッサスは気付いてて悔しがってたけどよ」


「そうか、それならいい。私だけ負けたとあればコロッサスが憎たらしいニヤケ面で鬱陶しく話を聞いて来るだろうからな」


「・・・君、案外分かり易いタイプだったんだね・・・」


こうして、ローランの呆れた様な一言でこの場は締め括られたのだった。

決着です。今回は勝たないと案内してくれないのでしっかりと勝ちました。


途中で殺気と飛ばしたのは悠はワザとです。アイオーンはマリアンにイラついてですが、悠は冒険者をオトす為にでした。


そして冷静な戦闘狂、アイオーン。デスマシーンの様ですね。きっとマヒやねむりはもちろん どくやデスのまほうもきかないぜって奴です。

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